体験率6割強の歩きスマホ、一体ナニをしてる?
特に他人が行きかう公共の場でスマートフォンを操作しながら歩く行為を「歩きスマホ」と呼び、昨今では社会問題化しつつある。読書や携帯ゲーム機のプレーをしながらの歩行同様、周囲への配慮が行きわたらず、他人と衝突したり、あらぬ場所に足を踏み入れたり、他人の呼びかけが耳に入らずにトラブルに巻き込まれるなどの問題が多発しているからだ。スマートフォンはその魅力度の高さから、操作時の注力具合は読書などをはるかに超え、当然周囲への配慮も一層欠け、リスクも大きくなる。
この「歩きスマホ」はどれほどの人が行っているのか、また「歩きスマホ」では何をしているのか、2014年5月にライフメディアのリサーチバンクが発表した調査結果「歩きスマホに関する調査」を手掛かりに、確認していくことにする。
該当調査の調査対象母集団では、スマートフォンの保有者(≒利用者)は54%。そのスマートフォン所有者の人に、屋内外を問わず「歩きスマホ」をしているか否かを聞いたところ、62%の人が「することがある」と回答した。「した経験がある」「したことがある」では無いので、常習的に「歩きスマホ」をしている人の回答と見なしてよい。また所有率と合わせて概算すると、3人に1人が「歩きスマホをしている」という結果となる。
それでは歩きスマホをしている人は、その最中にいかなる機能を使っているのか。「歩きスマホ」をしなければならないほどに重要性の高い、即時対応が求められるものだろうか。複数回答で聞いた結果が次のグラフだが、過半数回答項目は「メール」「地図」「通話」と、実用的な利用によるところが多い機能で占められた。
「地図」や「通話」は移動過程で利用することを前提とした、あるいは必要性の高い機能。ちょっと立ち止まればそれで済むのだが、つい歩きスマホをしてしまうのも理解は出来る(して良いか否かとはまた別の話)。スマートフォンが普及する前の時代、従来型携帯電話で通話をしながら街中を歩く人はごく普通に見受けられ、それがスマートフォンに変わっただけの話。「地図」以外に「乗換・時刻表」なども、この部類に属すると考えられる。
一方「メール」や「コミュニケーションアプリ(LINEなど)」「SNS(ソーシャルメディア)」は、これらによるやり取りにおいて、少しでも早く返事をしたい、回答を確認したいとの想いから、つい立ち止まらずに、移動途中で利用してしまうことになる。「常につながっていたい」「少しでも断絶するのはイヤだ」という、過度なまでのコミュニケーションを求める姿勢が、歩きスマホに走らせる。
男女別に再整理をすると次の通りとなる。性別の利用スタイルがそのまま表れる形が出ている。
実務利用が多い「地図」「ネット検索・閲覧」はビジネスでの使用頻度が高い男性の方が大きな値を示しているが、それ以外では概して女性の方が多い。特に高頻度なやりとりが行われやすいソーシャル系の機能で(とりわけ「コミュニケーションアプリ」で)女性が高い値が出ている。女性がスマートフォンを用いたコミュニケーションを強く求めいている結果が数字となって表れている。
またゲーム利用では男性の方が高い値が出ている。これは高校生に限った話ではあるが、情報通信政策研究所が2014年5月に発表した調査結果(「携帯電話でナニしてる? 高校生のケータイライフをグラフ化してみる」)でも同様の結果が出ており、「男性はゲーム」「女性はソーシャルメディア」という利用実態の違いが透けて見える。
必要性、熱中度の高さから、「歩きスマホ」をしたい、せざるを得ない事由は多数存在する。しかしそれらはすべて数秒、数十秒程度立ち止まることで、生じ得るリスクを無くすことはできる。「歩きスマホ」で得られる情報、満足感は、トラブルリスクを背負う程の重要なものだろうか。そのリスクが体現化してしまうことで生じる実害を考えれば、とてもではないが天秤にはかることすらできないはずなのだが。
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