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北朝鮮の15歳少女「見せしめ強制体験」の生々しい場面

高英起デイリーNKジャパン編集長/ジャーナリスト
北朝鮮の兵士(デイリーNK)

 ロシアのウラジオストクに駐在する北朝鮮外交官の家族2人が行方不明になっており、脱北した可能性が取り沙汰されてから2週間が経つ。ウクライナ侵攻を支持する北朝鮮とロシアは結びつきを強めており、2人が現地当局に摘発されれば、第三国に逃れることは絶望的だ。

 近年、北朝鮮を脱出して韓国などに亡命する脱北者の数は減り続けている。金正恩政権が国境の管理を厳しくしているほか、中露と米国の対立が、北朝鮮の立場を相対的に強化していることも影響している。

 金正恩政権の初期までは、違った理由で亡命が減少した側面もあった。北朝鮮国内で市場での商売が許容されたことで、「外国に逃れるよりここで頑張ろう」と考える人も相当数いたと思われる。

 しかし最近になり、状況は一変した。

(参考記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面

 金正恩政権は、国境を封鎖して貿易を停止するという極端なゼロコロナ政策に加え、市場の自由度を狭めている。韓流コンテンツ取り締まりなど思想統制のために最高刑を死刑とする新法を制定し、人々の生活はいっそう息苦しくなっている。

 そうした状況は、北朝鮮の人々に「一か八か」の決断を促す。先月、スイスのジュネーブで開かれた「人権と民主主義のためのジュネーブ首脳会議」でスピーチした脱北者出身の作家であるハン・ソンミさんは、自身に脱北を決心させた2009年のある出来事について語っている。

 当時15歳だったハンさんは、ある女性が公開処刑される現場を強制的に「参観」させられたという。

「(北朝鮮当局は)彼女の夫と4歳の娘を含む、地元の人すべてを集めた。彼女を杭に縛り付け、3発の銃弾を撃ち込んで処刑するのを見守るよう強要しました。 私はあの時の銃声と、彼女が前に崩れ落ちる姿を決して忘れられません」

 北朝鮮の公開処刑では、3人の射手が3発ずつ撃つのが一般的だという。自動小銃で撃つのだから、1発ずつでも確実に絶命するはずだ。3発を撃ち終えるまでの時間は数秒から十数秒だろうが、恐怖の中で見守る人々にとってはよほど長く感じられるに違いない。

 最近の金正恩政権のやっていることは、ひと言で言って、国民の「生きる道」を奪うことにほかならない。北朝鮮国民は、決して座して死を待つような人々ではない。国内の閉塞感が強まるほどに、「異変」が起きる可能性は高まっているものと思われる。

デイリーNKジャパン編集長/ジャーナリスト

北朝鮮情報専門サイト「デイリーNKジャパン」編集長。関西大学経済学部卒業。98年から99年まで中国吉林省延辺大学に留学し、北朝鮮難民「脱北者」の現状や、北朝鮮内部情報を発信するが、北朝鮮当局の逆鱗に触れ、二度の指名手配を受ける。雑誌、週刊誌への執筆、テレビやラジオのコメンテーターも務める。主な著作に『コチェビよ、脱北の河を渡れ―中朝国境滞在記―』(新潮社)『金正恩核を持つお坊ちゃまくん、その素顔』(宝島社)『北朝鮮ポップスの世界』(共著)(花伝社)など。YouTube「高英起チャンネル」でも独自情報を発信中。

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