スーパー・デパートの衣料品の移り変わりをさぐる
かつてはデパートの商品の中でも主役の座にあったものの、今では食料品にその座を奪われている「衣料品」。そのセールスの実情を経済産業省の商業動態統計調査の公開データから探る。
百貨店とスーパーの主要品目別売り上げを商業動態統計調査から確認すると、1990年代前半をピークに、衣料品の売り上げは減退。直近2016年では金額にしてピーク時の半額、店舗売上全体に占めるシェアは20%ポイント以上減っている。
精査をする衣料品における詳細商品区分は次の通り。
●紳士服・洋品…紳士服、下着類、ワイシャツ、ネクタイ、靴下など
●婦人・子供服・洋品…婦人服、子供服、下着類、ブラウス、靴下など
●その他の衣料品…呉服、反物、寝装具類、和装小物、タオルなど
●身の回り品…靴、履物、和・洋傘類、かばん、トランク、ハンドバッグ、裁縫用品、装身具(宝石、貴金属製を除く)など
この仕切り分けを確認した上で、衣料品項目における、各種細部項目の構成比の動向を確認していく。元々「婦人・子供服・洋品」の比率が高かったものの、近年においては1980年比で5%ポイント強の増加が見られる。それと共に「身の回り品」もじわじわと、そして確実に上昇を見せている。
男性向けの衣料品の割合が継続して減っているのは、紳士服チェーン店などの進出が大きな要因と考えられる。この数年では「比率の上では」やや戻しを見せて、2004年がもっとも縮小した年(16.5%)となっているが、全体額が減っている以上、男性向けの売り上げが伸びているわけではない。むしろ他の項目の減少度合いがより大きく、相対的なシェアが伸びているに過ぎない。この5、6年に限ればシェアでもみ合い、額面では実質的に漸減といったところ。
他方注視すべき動きとして挙げられるのが、「身の回り品」。シェアだけでなく金額面でも増加傾向にある(後述するが直近年では大きく減らしているが)。該当する商品は他店舗では取得が難しく、あるいは専門店が身近にあるとは限らない。そしてネット通販では実物を精査できないが、直に手に取ってその内容を確認したいものが多く、必然的にデパートが選択されているものと考えられる。さらには景況感の回復も一因だろう。
リーマンショック(2008年秋)以降の急激な減少、特に「婦人・子供・洋品」の金額面での縮小ぶりが著しく、目が留まる値動き。紳士服などはデパート以外では代替が利かない事例もあるが、婦人服や子供服は容易に廉価店への切り替えができる。可処分所得の減退から、(割引率に期待できない)百貨店において婦人向け・子供向けの購入者が足を遠のかせてしまった流れがうかがい知れる。
そしてまた、先の「デパート全体としての売上構成の変化」と同様、1990年代前半が一つのターニングポイントだったことが、このグラフからつかみ取れる。衣料品部門における売上総計はもちろんだが、「紳士服・洋服」の項目で特にその流れが強く出ている。上記にあるように紳士服チェーン店の展開など競合の登場・躍進はもちろん、そしていわゆる「バブル崩壊」が大きな構造変化の引き金となったことは容易に想像できる。無論金額面では「リーマンショック」が、さらなる構造変化における第二の引き金となった感は否めない。
衣料品における売買動向流れとしては、男性関係用品全般、そしてその他衣料品周りが先行して大きな客の減少があり、現在は女性や子供関係、「身の回り品」が続いているとまとめることができよう。もっとも上記解説の通り、「身の回り品」はトレンドを転じて金額面でも増加に転じており、一連の流れに変化が生じている点には注目しておきたい。ただしその「身の回り品」ですら、直近の2016年では前年比で大きな落ちを見せ、やや不安を覚えさせるところがある。
構成動向から分かる通り、比較的減少比率の低かった装飾品関連でも、昨今ではデパートなどは購入先として後回しにされる傾向がある。そしてリーマンショック、さらには震災を経て、人々の消費性向は大きな変化を遂げている。百貨店やスーパーの衣料品部門が断続的な、そして厳しい環境変化を認識した上で、どのような手を打って状況に対応していかねばならないか。考える時間は少なく、正しい答えは簡単に見出せそうにない。それでもなお、早急な模索が求められよう。
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