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インド、国境監視用のAI搭載ロボットを開発:2020年にトライアル開始予定

佐藤仁学術研究員・著述家
無人車輛車Guardium(写真:ロイター/アフロ)

 インドの科学者たちが人工知能(AI)搭載のロボット兵士による国境線のパトロールと監視を行うために、ロボット開発を行っていると報じられている。インドのベンガロールにある軍事企業のBharat Electronics Limited (BEL:バーラットエレクトロニクス)が2019年12月までに国境監視ロボットのプロトタイプを開発する予定。現在、80人のAI関連の科学者とエンジニアが2018年12月から開発に従事しており、2020年2月にはトライアルを開始する予定。

 インド企業BELが開発しようとしている国境監視ロボットは、センサーとAIのプログラムが搭載されており、不審物や不審者を検知したらコントロールセンターに連絡できる。また国境線だけでなく、重要施設での不審者や不審物の探知も可能で、スリランカでのテロのような事態を防ぐこと目指している。1台につき700万~800万ルピー(約1200万円)と決して高くなく、軍部としては大量購入も予定している。

「ロボットが人間の命を守る時代に」

 BELのGowthama氏は「AIが危険な仕事や重要な仕事を代替していくことになるだろう。我々のロボットは国境のパトロールもできる。将来の戦争は従来のように人間同士の戦いではなくなる。AIを搭載したロボット自身が意思決定を行うようになり、これからはロボットが国境監視をしている兵士達の命を救うことになる。AIを搭載したロボットによる国境監視によって、人間の貴重な命を守ることできるようになる」と語っている。

国境監視には適しているロボット兵士:ロボットが人間を攻撃してくる時代に

 インドはパキスタン、バングラディッシュなどと国境線は常に緊張状態である。パレスチナと国境を接しており緊張状態にあるイスラエルでは既に無人車輛車Guardiumによる国境監視が行われている。Guardiumも国境の監視、視察だけでなく、敵を検知したら、センターから有人部隊が到着するまで、搭載している殺傷兵器による攻撃もセンターからの人の操作によって行うこともできる。

 ロボットの軍事への導入は既に多くの場面で進んでいる。特にロボットは3Dと呼ばれる「Dirty(汚い)」「Dangerous(危険)」「Dull(退屈)」な業務に適していることから、人間よりも効率的に働くことが多い。

 国境監視の任務は平時には退屈な業務だから、人間よりもロボット兵士の方が適している。実際に敵や不審者が国境を越えて進撃してきた時にも、人間の兵士が犠牲になることもない。但し、これからはAIを搭載したロボット自身の判断によって、人間が攻撃されて死ぬことになる時代がやってくる。

学術研究員・著述家

グローバルガバナンスにおけるデジタルやメディアの果たす役割に関して研究。科学技術の発展とメディアの多様化によって世界は大きく進化してきました。それらが国際秩序をどう変化させたのか、また人間の行動と文化現象はどのように変容してきたのかを解明していきたいです。国際政治学(科学技術と戦争/平和・国家と人間の安全保障)歴史情報学(ホロコーストの記憶と表象のデジタル化)。修士(国際政治学)修士(社会デザイン学)。近著「情報通信アウトルック:ICTの浸透が変える未来」(NTT出版・共著)「情報通信アウトルック:ビッグデータが社会を変える」(同)「徹底研究!GAFA」(洋泉社・共著)など多数。

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