世界でもっとも暑いのはデスバレーではない 地表面温度80.8度の2つの砂漠
ビーチサンダルを脱ぎ捨て砂浜を走りだした途端、あっちっち。そんな経験がある方も多いことでしょう。太陽のエネルギーを吸収した砂は、かなりの高温になります。しかしこれが砂漠の砂なら、それ以上の熱さです。
実は先日、とんでもない地表面の高温記録が発表されました。
怒涛の80度超え
今月10日(月)アメリカ気象学会誌に掲載された論文によると、2か所の砂漠で地表面が80.8度(摂氏)に達していたことが分かりました。この記録は、カリフォルニア大学アーバイン校の教授らが2002年から2019年の気象衛星のデータを解析して判明しました。これまでの地表面温度の世界記録であった70.7度(2005年)を抜き、一位の記録です。
世界一暑くなった2つの砂漠
80.8度となった場所は2か所あります。
まず一つが、中東イランに位置する「ルート砂漠」です。テヘランから南東に800キロの場所に位置し、ユネスコ世界遺産に登録されています。暑すぎて生物の姿はないといわれています。
もう一つがアメリカ・カリフォルニア州からメキシコ北部にまたがる「ソノラ砂漠」です。北アメリカでもっとも暑い砂漠の一つとされてきましたが、ここではコヨーテなどが生息しているようです。メキシコからアメリカに渡ろうとする不法移民が、この砂漠にある国境を越える際、酷暑で命を落とす例も少なくないそうです。
デスバレーは「気温」の世界記録保持者
ところで、現在「世界でもっとも暑い」場所とされているのが、カリフォルニア州デスバレーです。1913年に観測された56.7度は、世界の観測史上最高気温とされています。
しかしこれは気温の記録です。気温というのは地面から1.5メートルほどの高さの日陰で測られた空気の温度ですから、言うまでもなく、地表面温度よりも低くなります。
世界気象機関が公式な記録をとる観測所は、世界に約12,000か所あります。多いようにも聞こえますが、これを世界の陸地の全面積で割ると、1つの観測所は13,000平方キロごとに存在することになります。これではまるで福島県の面積ごとにしか気温の記録が存在しないことになるので、世界すべての場所を網羅できていないのです。
つまり、本来ならもっと暑い場所があってもおかしくないのですが、観測所で記録された気温だけを見るとそれが分かりません。
そういう意味でも今回の気象衛星の研究は面白いのです。こうした衛星の高度な技術を用いれば、世界ほぼすべての地域の状態が分かって、一番暑い場所というのが見えてくるというわけです。
世界一冷たい場所は?
では反対に、世界でもっとも冷たい場所はどこでしょうか。この研究はそれも紹介しています。
答えはご想像通り、南極ですが、その記録たるや-110.9度ということで、度肝を抜かれます。現在の世界最低気温、つまり空気の温度の記録は、南極ボストーク基地の-89.2度ですから、地表面温度の記録はそれを20度以上下回ることになります。
世界一気温差が大きい場所は?
さらにこの論文には、もう一つ目をぱちぱちさせてしまうほどの記録が紹介されています。
地表面の一日の変化が世界一大きな場所は、中国・西部のツァイダム盆地で、その記録は81.8度だそうです。一日で地表面が-23.7度から58.1度まで上がったというのです。
朝は裏起毛ブーツ、昼はサンダルと、さぞや住民は靴選びに大忙しだったことでしょう。
*参考資料*
"Satellite Finds Highest Land Skin Temperatures on Earth" by DAVID J. MILDREXLER etc. (PDF)