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ミケルソンら米国勢も、金谷拓実ら日本勢も出場。TV中継も。サウジ・インターナショナルとゴルフ界の行方

舩越園子ゴルフジャーナリスト/武蔵丘短期大学・客員教授
(写真:ロイター/アフロ)

グレッグ・ノーマンの動きが加速している。いや、ノーマンを中心とした一団の動きが加速していると表現すべきなのだろう。

ノーマンCEOが率いるリブ・ゴルフ・インベストメンツの親会社と言われているサウジアラビアの政府系投資ファンド、パブリック・インベストメント・ファンド(PIF)をタイトル・スポンサーに付け、アジアツアーを象徴するフラッグシップ大会となったサウジ・インターナショナル(2月3日~6日)は、大会名を「PIFサウジ・インターナショナル・パワード・バイ・ソフトバンク・インベストメント・アドバイザーズ」に変え、賞金総額を昨年の350万ドルから500万ドル(約6億円)へアップし、世界中からスター選手たちを引き寄せつつある。

【世界中から続々。日本からも、、、】

かねてからサウジ・インターナショナルへの参加は、欧米ゴルフ界のある方面からは、人道的あるいは政治的、経済的、さまざまな意味合いで疑問視されたり、批判されたりしている。だが、出場を希望する米欧両ツアーの選手たちの中には「プロゴルファーは政治家じゃない」などと反論している選手もいる。

ローリー・マキロイは同大会への参加をきっぱり否定。「最初からビッグマネーがもらえることがギャランティされているのはおかしい」と指摘し、ゴルフとゴルファーのモチベーションや戦意が低下し、失墜することを彼は危惧している様子だ。

しかし、米欧両ツアーからは出場希望者が続出し、ツアーメンバーが同大会に出場することに難色を示していたPGAツアーが、ついに条件付きで参加を認めると、出場希望者はさらに増えて40名に届きそうな勢いだ。

なぜ、そんなに増えるのか?最大の理由は、アジアツアーとしては破格の高額賞金。そして、米欧のスター選手たちには、40万ドル~100万ドルという高額のアピアランスフィーが支払われると言われている。

出場予定選手のリストには、フィル・ミケルソンを筆頭に、ダスティン・ジョンソン、ブライソン・デシャンボー、ザンダー・シャウフェレなどメジャー覇者を含む米国のスター選手たちが名を連ね、グレーム・マクダウエルやトミー・フリーとウッドといった英国や欧州のスター選手たちもいる。

米欧両ツアーだけではない。ついに日本の金谷拓実、木下陵介、星野陸也、谷原秀人、岩田寛らもエントリーしたことがわかった。

【陰のキーマン?】

世界中からトッププレーヤーたちを引き付け、大会規模を拡大しつつあるサウジ・インターナショナルだが、その急成長を可能にしているものは、どうやらマネーだけではなさそうである。

もちろん、潤沢な資金があるからこその話ではあるのだが、たとえ潤沢な資金があっても、それを活用できる人間がいなければ、何も始まらないことは言うまでもない。

キーマンは誰かと言えば、ノーマンがキーマンであることは明白。しかし、ノーマン一人ではもちろんなく、むしろ、真のキーマン、いやいや、陰のキーマンは、ノーマンが次々に雇い入れたリブ・ゴルフ・インベストメンツの役員たちだ。

役員たちの前職は、オーガスタ・ナショナル、PGAツアーといった米ゴルフ界を担う団体、あるいは米ゴルフ界と密接な関係のあるESPNのようなメディアだったりで、華々しい顔ぶれだが、その中でも陰で大きな力を発揮しつつあるのは、FOXスポーツの元重鎮、デビッド・ヒルだと欧米メディアは見ている。NFLのTV中継の手法を劇的に変化させ、劇的に人気を高めた人物だ。

その影響力が水面下で働いているのだろうか。サウジ・インターナショナルは英国ではフリースポーツによって生中継されることが決まった。

そして日本では、フジテレビがCS放送とインターネット配信チャンネルで「同大会4日間を独占生中継することが決定した」という表記を目にしたときには、正直、驚かされた。

【激動の時代】

しかし、驚きはしたものの、選手にせよ、TVをはじめとするメディアにせよ、世界のどのツアーのどの大会を自分自身のビジネスの対象とするか、しないか、その判断を下すのは、言うまでもなく自分自身だ。

今後は、サウジ・インターナショナルのみならず、サウジ・マネー流入が決まっているアジアツアーの他の大会や、PGAツアーに対抗する格好でこれから創設されると見られている新ツアー(SGL=スーパー・ゴルフ・リーグ)などへの参加に関しても、なにかと物議を醸すことになるだろう。

そのたびにビッグマネーと陰のキーマンたちが世界のあちらこちらでうごめき、プロゴルフに関わる大勢の人々や企業・団体に、それぞれの判断が求められる。

ゴルフ界が激動の時代に突入しつつある今だからこそ、慎重に、しっかり判断しなければならないと、強く感じている。

ゴルフジャーナリスト/武蔵丘短期大学・客員教授

東京都出身。早稲田大学政経学部卒業。百貨店、広告代理店勤務を経て1989年に独立。1993年渡米後、25年間、在米ゴルフジャーナリストとして米ツアー選手と直に接しながら米国ゴルフの魅力を発信。選手のヒューマンな一面を独特の表現で綴る“舩越節”には根強いファンが多い。2019年からは日本が拠点。ゴルフジャーナリストとして多数の連載を持ち、執筆を続ける一方で、テレビ、ラジオ、講演、武蔵丘短期大学客員教授など活動範囲を広げている。ラジオ番組「舩越園子のゴルフコラム」四国放送、栃木放送、新潟放送、長崎放送などでネット中。GTPA(日本ゴルフトーナメント振興協会)理事。著書訳書多数。

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