【泉南市】創業15年 街の「古物商」が語る“骨董品”の意外な世界。一般家庭にある『売れる不用品』
倉庫のような場所に吊り下げられたビニールシートをはらりとめくると、眼光鋭い男性が目の前の椅子に座っていました。
「なんでうちなん? 取材のメリットは? 名前は? 目的は?」
どうやらわたしの査定がはじまったようです。
ひるまず、襟を正し、まっすぐ目を見て思いの丈をぶつけると、「まぁ、座りよ」とやわらかい表情に。ピリリとした空気が一変した瞬間です。
今回は、泉南市で15年 リサイクル業を営む「八船(はっせん)」代表 奥野 和也さんにお話をうかがいました。
「家」まるごと一手に担える「八船」
大阪府下を中心に近畿一円 出張無料・査定無料で家・店舗の片づけ、不用品の買い取り・処分業務を行っている「八船」。15名の買い取りのプロ集団が、日々慌ただしく業務を遂行しています。
“不用品の買い取り込み” の家・店舗の片づけは、差し引きすると安く済む場合が多く、「家まるごと」一手に担える業者は少ないとのこと。
遺品整理にうかがったお宅で、故人が大切にしていたモノでも家族にとっては必要のないモノもあり、それを「処分」ではなく「リユース」してあげることは、故人の想いを繋ぐことにもなる、と奥野さん。
また、毎月8日・18日・28日に開催している「古物オークション」(*)は、そんな一般家庭から買い取った「うぶ出し」の品が揃うと評判も高く、日本のみならず中国の古物商も目を光らせます。
*「古物オークション」は、古物営業法に規定される「古物」を業として売買または交換する業者・個人のみが参加できるオークションで、一般の方は参加できません。
「市場主」であることの強み
「八船」の強みは「市場主」であること、と話す奥野さん。
フランチャイズ展開するリサイクル店が市場に品物を出品するためには、手数料の支払いが必要で、それを踏まえた査定額となるところを「八船」は、手数料の支払いがない分高く買い取れるといいます。他店で20万と提示された「金のバックル」を35万、5万と提示された「古いカメラ」を8万で買い取った実績もあり、「みんな きれいで名の知れたリサイクル店に持って行きたがるけど、うちに持ってきてくれたらそこより少しでも高く買い取る努力はするよ。モノにもよるけど」と、“地元で15年やってきた” 気概をのぞかせます。
70代はもう古い? 40代が「昔ほしかったモノ」がトレンド入り
需要と供給の関係性が目まぐるしく変化する骨董品の世界。トレンドをいち早く察知する能力も求められます。奥野さん曰はく、「真空管式ラジオ」より「ラジカセ」。40代が「昔ほしかったモノ」が、今求められているそう。ほかにも、たとえば「ファミコン」「ウォークマン」「昭和レトロな扇風機」など、アニメでいうと手塚治虫作品、ドラゴンボール、ワンピースも人気なのだとか。
単純に古い方が 価値があるのかと思ったら、骨董品の世界にもトレンドがあるというのは意外でした。
「1000年前のモノとか、そこまでさかのぼれば当然価値はあがるけどね」と奥野さん。
7年前にタイに支店を構え、海外に販路を拡大した「八船」。タイは、親日国でお金持ちも多く、日本のモノがよく売れるそう。ほかにも、帽子やサングラス、携帯電話の充電・通信ケーブルなど、日本の一般家庭に「不用品」として眠っているモノも海外では需要があり、売れる可能性も。もちろん、ブランド品、貴金属、煎茶道具は価値が高く、家に眠っているという方は、一度 査定(無料)をしてもらうと良いかもしれません。
「一家離散」の辛い過去。人に助けられ這い上がった人生
簡単に人を信じない。奥野さんの瞳の奥に見え隠れする「もの悲しさ」は、一体何なのだろう、とずっと気になっていました。その理由は、生い立ちにあったようです。
「祖父は大工。親父は呉服屋。熊取のボンボンやったんですわ。ところが10歳で母親を亡くし、事業は破綻、一家離散、高校も行けず3日間ごはんを食べることができないときもあった。自分のまわりから去っていく人たちもいる中で、友人に支えられましたね。祖父や親父の背中を見ていたから、職人やトレーダーなどをして自力で稼いで、29歳の頃 この仕事に出会ったんですわ」。
師匠なし。ついてきた2人には、年間7万円の給与しか払ってやれなかった、と悔しさをにじませます。業者にだまされ、お客さんにもだまされ、貯金も底をつき2、3年は乞食のような生活を送っていたとも。右往左往しながら、いろんな人に支えられてここまで来た。次は、自分が若い子らを支えたい、這い上がる強さを身につけさせたい、と熱く語ります。
「砂川商店街」を盛り上げて「鶴橋」のような活気ある街にしたい、とワクワクするような構想もお持ちの奥野さん。
しっかり向き合い対話をすると、全力で答えてくれる誠実なお人柄に触れ、名も知らぬ「リサイクル業者」の電話が後を絶たない昨今、地域に根差した業者さんに任せるのもアリだなと感じました。
不用品の「無料」引き取りも
「不用品買取りセンター」は、近隣では信達牧野 (Yahoo!マップ参照)にありますが、貴金属、ブランド品、お茶道具以外は“グラム買い”となります(1kg/10円~100円)。
買い取りor無料で引き取れる商品の多さにも驚かされます。今、不用品を処分するのもお金がかかる時代。「八船」では、たとえ壊れていても無料で引き取ってくれる不用品が、チラシをざっと数えただけでも100点以上あります。(一部お引き取りできないものもあります。詳しくは「八船」公式HP 買取り商品一覧をご確認ください)
*不用品の処分、個別で査定を希望する場合は、本社(泉南市新家3042/Googleマップ参照)へ直接持ち込みをお願いします。
最後に「八船」のインスタグラムで、こんな投稿をみつけました。
2021年の忘年会の写真です。
そこには、奥野さんのこんな書き込みが。
「シルバー人材のうじさんも外国就労のリーくんもご飯を食べることができました。スタッフ15名感謝しております」
業者様、お客様、サプライヤー様に向けての「感謝の言葉」でした。
開業当時、ついてきた2人に年間7万円の給与しか払ってやれなかった、と悔しさをにじませた奥野さんの顔が目に浮かびます。
どこまでもあったかい奥野さん率いる 買い取りのプロ集団「八船」。
モノを売るときの選択肢のひとつとして、覚えておいてほしい業者さんです。