IMFはスリランカに対し、29億ドルの金融支援を行うことで暫定合意。対外債務のうち日本が10%占める
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国際通貨基金(IMF)は1日、経済危機に直面しているスリランカと29億ドル(約4000億円)の金融支援で実務者による暫定合意に達したと発表した。IMFは融資実行の前提として国内の経済改革のほか、対外債務の整理再編を求めている。日本や中国、インドなどとの債務削減交渉が今後の焦点となる(1日付日本経済新聞)。
スリランカは新型コロナウイルスで経済の柱である観光業が低迷した。近年は外貨準備高が急減。ロシアのウクライナ侵攻に伴う国際商品市況の高騰なども追い打ちとなり、ガソリンなど輸入品の不足とインフレが国民生活を直撃。5月にはアラブ首長国連邦の業者を介してシベリア産原油約9万トンを購入したのを最後に、輸入に必要なドルが尽きていたとされる。ロシアによるウクライナ侵攻開始前、ロシアとウクライナはいずれも、スリランカを訪れる観光客の数で上位の国だった。2019年末に76億ドルあった外貨準備高は急減し、7月末時点で18億ドルとなっていた模様。
スリランカでは輸入に充てる外貨が尽きたことから、数か月にわたり停電や物価高騰、食料やガソリンの深刻な不足が続いている。通勤・通学で消費されるバスや鉄道の燃料を節約するため、全土で休校措置を取ったり、公務員に在宅勤務を求めたりしていた。
7月5日にウィクラマシンハ首相は議会で演説し、国の「破産」を宣言した。ウィクラマシンハ首相は議会で、金融支援獲得に向けた国際通貨基金(IMF)との交渉について説明。地元紙デーリー・ミラー(電子版)によると、「過去には発展途上国として(IMFと)協議してきたが、今は破産国家として協議しているため、交渉はより困難で複雑になる」と述べていた。
IMFの代表団が8月にスリランカ入りし、同国政府などと協議してきた。財政再建や汚職防止などの改革を条件に、拡大信用供与(EFF)と呼ぶ支援枠を使って4年間かけて融資する。IMFは今後、理事会での承認をめざす(1日付日本経済新聞)。スリランカはIMFに最大30億ドルの融資を求めていた。
すでにスリランカはIMFの要望に対応して、経済改革に着手している。歳入増加に向けて、1日から12%だった付加価値税(VAT)を15%に引き上げた。スリランカではラジャパクサ前大統領時代にVATを一時8%に下げて、財政赤字を悪化させていた。
スリランカ政府によると2021年4月末時点での対外債務は351億ドル。47%が市場からの借り入れで、アジア開発銀行(ADB)が13%、日本と中国がそれぞれ10%を占める。
スリランカのウィクラマシンハ大統領は、同国の債権国による会議の呼びかけを日本に求める意向を示したとロイター通信が報じた。そして9月に日本を訪れて岸田文雄首相と会談する方針も明らかにしている。スリランカの問題は他人事ではない。