BE・LOVEトップの3.4万部…女性向けコミック誌部数動向(2024年4~6月)
女性向けコミック誌のトップは「BE・LOVE」
日々進歩を見せる技術革新、中でもインターネットとスマートフォンをはじめとしたコミュニケーションツールの普及に伴い、紙媒体は立ち位置の変化を余儀なくされている。すき間時間を埋めるために使われていた雑誌は大きな影響を受けた媒体の一つで、市場・業界は大変動のさなかにある。その変化は少年・男性向けコミック誌ばかりでなく、少女・女性向けのものにもおよんでいる。今回はその雑誌のうち、女性向けコミック誌(少女向けのコンセプトで発刊されている雑誌群よりも対象年齢は上。おおよそ大学生以上が対象)について、日本雑誌協会が四半期ベースで発表している印刷証明付き部数(※)から、実情をさぐる。
まずは女性向けコミック誌の現状。最新データは2024年4~6月のもの。
「BE・LOVE」(主に30代から40代向けレディースコミック誌)がトップ、「office YOU」「Cocohana」「Kiss」が続く。各誌でそれぞれ類似順位他誌と一定の差異があり、並べると比較的整った傾斜ができている。ただし部数そのものは数万部の単位のため、ヒット作が生まれることで雑誌が大盛況となれば順位が大きく変動する可能性はある。
「FEEL YOUNG」は2020年7~9月期から部数を非公開化し、その状態は今期でも変わらなかった。
「FEEL YOUNG」は「おしゃれな恋愛コミック誌」がキャッチコピーの月刊女性向けコミック誌。読者ターゲットは「おしゃれゴコロを忘れない女性たちが中心読者層」とのこと。連載陣としては安野モヨコ先生の「後ハッピーマニア」などが知られているが、部数動向は正直なところ芳しくない状態が続いていた。発売そのものは継続中で該当期はもちろん記事執筆時点でも休刊の確認はできないことから、部数の非公開化は単純に編集部あるいは出版社の方針によるものらしい。
グラフには試しに近似曲線を引いてみたが、現状では5000部を割り込み4000部足らずとなっている可能性がある。
プラスは1誌…四半期変移から見た直近動向
次に前期と直近期との部数比較を行う。雑誌は季節で販売動向に影響を受けやすいため、精密さにはやや欠けるが、大まかに雑誌推移を知ることはできる。
女性向けコミック誌は前期比で部数プラス誌は「フラワーズ」のみ。プラスマイナスゼロが5誌、それ以外の3誌がマイナス。誤差領域(上下幅5.0%)を超えたマイナス幅は1誌「MELODY」。
今期は女性向けコミック誌の前期比で唯一プラスを示した「フラワーズ」だが、部数底上げの立役者的存在「ポーの一族」については、今回該当期では2024年8月号に「ポーの一族 青のパンドラ」が掲載されている。部数がプラスとなったのは、これが功を奏したようだ。
今期部数は2万1000部。部数動向全体としてはあまり思わしくない状況にある。かつては「ポーの一族」掲載などで跳ね上がる期以外はおおよそ3万3000部を維持していたのだが、2018年後半あたりからその原則が崩れてしまっており、新しい維持ラインとして2万4000部が設定された感はあった。しかし昨今では、その維持ラインすらキープできていない。ここ数期の動きの限りでは、新しい維持ラインとして2万部が設定されたように見えるが、今期ではそのラインを少しばかりだが上回る形に。「ポーの一族」の掲載が続けば、さらなる部数の底上げを果たせるだろうか。
季節変動を考慮しなくて済む前年同期比では
続いて「前年同期比」による動向。年ベースの変移となることから大雑把な状況把握となるが、季節による変動を考慮しなくて済むので、より確かな精査が可能となる。
女性向けコミック誌は前年同期比で「フラワーズ」がプラス、「Cookie」がプラスマイナスゼロ、それ以外の全誌が誤差領域を超えた下げ幅でのマイナス。一番大きな下げ幅は「プチコミック」でマイナス18.9%。10%台以上の下げ幅を示しているのは4誌。
前年同期比でマイナス14.0%と、「プチコミック」に続く大きなマイナス幅を示した「Kiss」。低迷感の否めない部数動向が続いている。
2018年7~9月期に大きな落ち込みを見せてから、部数減少のスピードが速まった感はある。2022年4~6月期の3万部割れあたりで、ようやく下げ方の勢いが落ち着いたようだ。2期前は前期比で明らかな増加をみせ、今後に期待がかかったが、前期に続き今期でも残念ながら元に戻るどころか、さらに落ち込みを見せてしまった。
「Kiss」は漫画単行本レーベル「講談社コミックスKiss」の基幹誌。それゆえに、何らかのテコ入れが必要不可欠だとは思われるのだが。
他ジャンルの記事でも言及しているが、多くの雑誌で電子化が行われており、電子版に読者の一部を奪われ、結果として紙媒体としての印刷部数が減っている可能性はある。特にここ数期では多くの雑誌が大きな部数の減少を示しており、電子版に読者がシフトしたとの推測以外の原因が見つからない。あるいは単に、需要に合わせた部数の削減なのか。
しかしながら他の雑誌同様、電子版の部数は非公開のため、その推測の検証ができないのは残念ではある。
■関連記事:
【電子書籍の市場規模6026億円、前年から516億円もの増加…「電子書籍ビジネス調査報告書2023」発売】
※印刷証明付き部数
該当四半期に発刊された雑誌の、1号あたりの平均印刷部数。「この部数だけ確かに刷りました」といった印刷証明付きのものであり、雑誌社側の公称部数や公表販売部数ではない。売れ残り、返本されたものも含む。
(注)本文中のグラフや図表は特記事項のない限り、記述されている資料からの引用、または資料を基に筆者が作成したものです。
(注)本文中の写真は特記事項のない限り、本文で記述されている資料を基に筆者が作成の上で撮影したもの、あるいは筆者が取材で撮影したものです。
(注)記事題名、本文、グラフ中などで使われている数字は、その場において最適と思われる表示となるよう、小数点以下任意の桁を四捨五入した上で表記している場合があります。そのため、表示上の数字の合計値が完全には一致しないことがあります。
(注)グラフの体裁を整える、数字の動きを見やすくするためにグラフの軸の端の値をゼロではないプラスの値にした場合、注意をうながすためにその値を丸などで囲む場合があります。
(注)グラフ中では体裁を整えるために項目などの表記(送り仮名など)を一部省略、変更している場合があります。また「~」を「-」と表現する場合があります。
(注)グラフ中の「ppt」とは%ポイントを意味します。
(注)「(大)震災」は特記や詳細表記のない限り、東日本大震災を意味します。
(注)今記事は【ガベージニュース】に掲載した記事に一部加筆・変更をしたものです。