故郷を離れない移民たち(4)
グローバル化時代の移民像
実は、こうした同化しない移民の増加は、ラティーノに限らない。ラティーノのようにスペイン語話者が多数存在しなくても、また母国がアメリカに近くなくても、移民前の母国語を保持し、故郷との関係を保つ移民が増えてきた。その背景にあるのは、グローバル化の進展である。このグローバル化を、ここでは、人と物と情報が国境を越える現象であると定義しておこう。
平たく言えば航空機の運賃が下がり、簡単に里帰りができるようになった。これまでなら、何年に一度しか故郷に戻れなかった移民たちが、頻繁に故郷と往来が可能になった。またインターネットの普及により、移民先においても母国語の世界にどっぷりと浸かったままの生活も可能になった。ボストン・マラソンにおいてテロを行ったチェチェンからの移民のツァルナエフ兄弟の背景は、まだ十分には明らかになっていない。しかし、死亡した兄のタメルランは、コーカサスに一時期戻っていたことが知られている。またアメリカ社会には溶け込んでいなかった。そしてイスラム過激派に傾倒していたことがネットの記録から確認できる。体はアメリカにありながら、心は故郷を離れていなかったわけだ。グローバル化時代の新しい移民像である。
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