アメリカ合衆国の20歳前後の57.7%は実家暮らし(2024年公開版)
アメリカ合衆国では20歳前後は5割台が実家暮らし
金銭的な問題や親の頼みなどの理由で、学校を卒業して就職しても一人暮らしを果たさずに実家暮らしを続ける人は多い。若年層の実家住まいの度合いは、社会の実情を知る一つの切り口となる。今回はアメリカ合衆国国勢調査局(Census Bureau)の公開値を基に、同国における若年層の実家住まい率、さらには未結婚のカップル数動向を確認する。
まずは実家暮らし率の推移。要は親=世帯主の子供として実家に居住し、その世帯の構成員として生活している人の割合。18歳から24歳、おおよそ成人した直後において、もっとも古い収録データとなる1960年時点では、男性がすでに過半数の52.4%、女性は1/3強の34.9%が実家暮らしだった。
今データだけでは各世帯の内情まで推し量ることは難しいが、経済的に独立できない人が多分に含まれているであろうことは容易に想像できる。また今件値は「世帯主の子供」と説明されていることから、いわゆる二世代住宅的な居住スタイルは対象外となるため、未婚であることが前提となる。特に女性では上下を繰り返しながらも実家住まい率が上昇していることは、この年齢階層の未婚率が上昇していることを表している。
直近2023年における18~24歳における実家住まい率は男性で57.7%、女性でも54.1%。男性の方が実家住まい率は上で、1984年につけた61.0%が最大値。
また上昇の動向だが、大きな不景気(リセッション)時期に大きく値を上げる傾向があるようにも見えるが、事例がまだ少数のため、裏付けは難しい(景気が悪化すると失業率の上昇や経済的困窮から一人暮らしが難しくなる、と考えれば道理は通る)。男性で最大値をつけた1984年を見ると、1980年から1982年にかけて断続的にリセッションが発生しており、これが影響をもたらしたと考えると納得はできる。また2007年から2009年における金融危機も直近の上昇と連動しているようにも見える。
2020年の値は前年比で大きな増加を示しており、特に女性は最大値を更新した。新型コロナウイルス流行による景況感の悪化や、健康リスクを鑑みて実家暮らしをする人が増えたのかもしれない。
より年上の25~34歳では実家住まい率は大きく減る。
直近の2023年では男性18.8%、女性11.4%。男性は2割近く、女性も1割強が、この年齢階層で実家暮らしをしている計算になる。21世紀初頭から継続している上昇ぶりは、単に景気動向だけでなく、結婚観の変化をはじめとした社会生活の様式、文化の変化も影響しているのだろう。さらに大きく値が増えた2020年においては、18~24歳同様に新型コロナウイルス流行による生活環境の変化が影響を与えた可能性は否定できない。
未結婚だが同棲しているカップルは増加中
大人の居住様式としてもう一つスポットライトをあてておきたいのが、未結婚の同棲カップルの存在。特に子供がいるカップル(夫婦)の結婚観の変化を垣間見ることができる。
2007年に大きく増加しているのは、金融危機ぼっ発による不況感によるものでは無く、調査統計方法に変更が生じているため。厳密には2006年までと2007年以降に連続性は無いが、それを念頭に入れておけば傾向を推し量るレベルでは問題はない。
直近2023年では948万組のカップルが未結婚ながらも同居しており、そのうち301万組はすでに子供がいる計算になる。1996年における286万組・124万組と比べると3倍強・2倍強の差となる。もちろんこの短期間に総人口がそこまで増えているわけではないので、社会様式の変化が生じていることは容易に想像ができる。
また日本同様アメリカ合衆国でも平均初婚年齢は上昇し、結婚に対する価値観の変化が生じている。
「若年層における実家住まい率の上昇」「未結婚ながらも同居している、さらには子供がいてもなお結婚しないカップルが増加している」事実もまた、アメリカ合衆国における結婚観が変容を見せている一端をうかがい知ることができる。
社会観、文化様式が大きく異なるためそのまま同一視するのは無理があるが、アメリカ合衆国の動向は日本の実情と今後を推し量る上で、大いに参考になる次第ではある。
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