リーダーボードが大きく動いた全米プロのムービングデー、勝利を狙うベテランと新鋭たち
全米プロ3日目はムービングデーの呼び名の通り、リーダーボードが大きく動いた。
残念ながら、メジャー16勝目を狙っていたタイガー・ウッズの勝利の可能性は限りなく小さくなったと言わざるを得ない。2日目終了後までは、米メディアの「まだ勝てるか?」という質問に「もちろん」と自信さえ見せていたウッズだが、3日目はグリーン上で苦しみ続け、8番でボギーを先行させると後半は11番から3連続ボギー。終盤、なんとか2バーディーを奪ったが、首位から11打差を最終日に覆すことは現実的には起こりえないだろう。
メジャー15勝のうちの14勝を挙げたエースパターを新しいパターに持ち替え、ほんの少し長いそのパターが初日はいい仕事をしてくれた。だが、徐々に振るわなくなっていった。
「初日はパットがよく入り、『明日はもっとドライビングをシャープにしなければ』と思った。2日目は、その通り、ドライバーは良くなったが、アイアンがダメだった。そして今日はドライバーがダメになり、パットもまるで入らず、フラストレーションが溜まった」
ドライバー、アイアン、パット、それぞれが噛み合わず、自分のゲームが構築できなかったことは、試合出場の不足が何よりの原因だと考えられる。もちろんウッズ自身、そんなことは百も承知に違いない。
「これから迎えるビッグ大会が楽しみだ。そのためにも明日はしっかりプレーしたい」
すでに目標を切り替えたウッズ。今大会後に続くプレーオフ・シリーズや全米オープン、マスターズに向けて、しっかり調整していくウッズに期待だ。
【DJ、見事なパットで首位浮上】
ウッズがパットに苦しんだ一方で、ダスティン・ジョンソンは見事なパットを披露し続け、3日目に単独首位に躍り出た。
TPCハーディング・パークは、そもそも深く重いラフが難関とされているのだが、そのラフは日に日に茂って一層難しくなり、3日目はラフでスコアを落とす選手が続出。3日目を首位でスタートした中国のハオトン・リー、大会3連覇を狙うブルックス・ケプカも、何度もラフに翻弄された。
そんな中、ジョンソンは飛んで曲がらないドライビングと正確性の高いアイアンショットでフェアウエイとグリーンを捉え、その上で、誰よりも見事にパットを沈め続けた。
それでもラフにつかまった場面は見られたが、この日は持ち前のパワーで辛くも脱出に成功。そうした要素がすべて絡み合い、スコアを5つ伸ばして、通算9アンダーの単独首位に浮上した。
「今日は本当にパットがよく入ってくれた。明日はもう少しだけドライバーの精度を上げて臨みたい」
【新鋭、新人も、ベテランも】
ジョンソンに次いでリーダーボードの上位に浮上したのは、開幕前の優勝候補に名前が挙がっていなかった若者たちで、そこがなんとも興味深い。
ジョンソンから1打差の通算8アンダーで2位に並んだのは、キャメロン・チャンプとスコッティ・シェフラー。
チャンプは米ツアー2年目の25歳という新鋭ながら、すでに通算2勝を挙げている。飛距離が武器でありながらパットも上手く、ジョンソンとプレースタイルが酷似しているチャンプの2人が揃って首位と2位に付けている点に注目したい。
シェフラーは全米プロ初出場の24歳。昨年、下部ツアーのコーン・フェリー・ツアーで2勝を挙げてプレーヤー・オブ・ザ・イヤーに輝き、今季から米ツアー入りしている。新人ながら、その落ち着きぶりには驚かされる。ゴルフ一家の出身。テキサス大学時代に数々のタイトルを獲得し、プロ転向後は下部ツアーで勝利を重ねた経験が生きているのだろう。
メジャー優勝をもたらすものは、日ごろの努力と鍛錬の積み重ね、そして自分らしいゴルフができるかどうかだ。その意味では、ベテラン選手にも新鋭にも新人にもチャンスはある。
全米プロを制するのはジョンソン、チャンプ、シェフラーか。あるいは、さらに1打差で控えているケプカ、コリン・モリカワ、ポール・ケーシーか。首位から5打差の通算4アンダー、18位タイの松山英樹らにも逆転勝利の可能性はある。
明日の最終日が見逃せない。