新型コロナの症状、経過、重症化のリスクと受診の目安(2021年4月)
2021年4月現在、全国で新型コロナの新規感染者が再増加の傾向にあります。
どのような症状があれば新型コロナを疑い病院を受診すれば良いのでしょうか。
新型コロナの典型的な症状、経過、重症化のリスク、後遺症などについて現時点での知見をまとめました。
新型コロナウイルス感染症の典型的な症状
新型コロナの潜伏期間(感染する機会から何らかの症状を発症するまでの期間)には1〜14日と幅がありますが、多くの人がおよそ4〜5日で発症します。
新型コロナウイルス感染症の初期症状は熱、寒気、咳、息切れ、呼吸苦、筋肉痛、関節痛、嘔吐、下痢などです。
これらの症状は風邪やインフルエンザととてもよく似ています。
新型コロナと風邪、インフルエンザ、アレルギー性鼻炎・結膜炎の症状とを比べると、以下の図のようになります。
風邪では高熱がみられることは少なく、また鼻水やくしゃみ、ノドの痛みなどの「上気道症状」の頻度が高いことが特徴です。
インフルエンザは新型コロナと症状がとてもよく似ていますが、息切れや嗅覚障害・味覚障害がみられることは稀です。
特に嗅覚障害・味覚障害は新型コロナに特徴的な症状であり、新型コロナの可能性を疑うきっかけになります。
しかし、それぞれの症状の頻度は必ずしも高くありません。
アメリカで新型コロナと診断された37万人の症状に関するまとめによると、診断時に熱、咳があった人はそれぞれ43%、50%であったとのことです。
熱、咳、息切れのどれか1つでもあった人は70%、ということで30%の人は熱も咳も息切れもないことになります。
症状だけで新型コロナを疑うのはとても難しいということが分かります。
新型コロナウイルス感染症の典型的な経過
新型コロナに特徴は、症状の続く期間の長さや、悪化していく経過にあります。
前述のように新型コロナウイルス感染症は風邪やインフルエンザによく似ていますが、症状が続く期間がそれらと比べて長いという特徴があります。
特に重症化する事例では、発症から1週間前後で肺炎の症状(咳・痰・呼吸困難など)が強くなってくることが分かっています。
さらに発症から10日目以降には、人工呼吸器が必要な状態になる方もいます。
このように発症から7日目から10日目にかけて悪化していくというのが新型コロナの大きな特徴です。
流行早期の中国での4万人の感染者のデータによると、発症してから1週間程度は風邪のような軽微な症状が続き、約8割の方はそのまま治癒しますが、約2割弱と考えられる重症化する人はそこから徐々に肺炎の症状が悪化して入院に至ります。
2割のうち全体の約5%の症例で集中治療が必要になり、約2%の事例で致命的になりうるとされています。
それ以外の新型コロナの症状
新型コロナウイルスは、肺以外にも様々な臓器に影響を及ぼします。
これまでに知られているものとして、
神経系:頭痛、めまい、脳症、ギランバレー症候群、味覚障害・嗅覚障害、脳梗塞
腎臓:急性腎障害、蛋白尿、血尿
肝臓:肝機能障害、ビリルビン上昇
消化管:下痢、吐き気・嘔吐、腹痛、食欲不振
血栓塞栓症:深部静脈血栓症、肺塞栓、カテーテル関連血栓症
心臓:たこつぼ心筋症、心筋障害・心筋炎、不整脈、心原性ショック、急性肺性心
内分泌:高血糖、糖尿病性ケトアシドーシス
皮膚:点状出血、網状皮斑、紅斑、蕁麻疹、水疱、霜焼け様病変
などがあります。
また、小児では川崎病(発熱、皮疹、眼球結膜充血、いちご舌など)のような症状がみられる小児多系統炎症性症候群と呼ばれる病態が報告されています。
これは、下痢、発熱、発疹などがみられ、心臓の動きが悪くなることがあるのが特徴です。
日本国内でも小児多系統炎症性症候群と考えられる事例も認められています。
無症状の感染者はどれくらいいるのか
新型コロナには一定の割合で感染しても無症状の人がいます。
どれくらいの人が感染しても無症状のままなのかまだ十分には分かっていませんが、これまでの報告からはおよそ3〜4割の人が感染しても無症状であったと報告されています。
特に若い人では感染しても無症状のことが多いのではないかと考えられています。
例えばアメリカの原子力空母セオドア・ルーズベルトで起こったクラスターでは、乗組員4,779人のうち、1271人が新型コロナに感染しました。
この1271人のPCR検査陽性者のうち、45%は無症状、32%が検査時には無症状でのちに症状を発症、そして23%が検査時に症状がありました。
新型コロナが重症化しやすい人は?
新型コロナウイルス感染症で重症化しやすいのは高齢者と持病のある方です。
30代くらいまでは亡くなる人はほとんどいませんが、40代以降から徐々に致死率が高くなり、80歳以上では12%という非常に高い致死率となっています。
日本国内のデータからも年齢が上がれば上がるほど致死率が高くなることが改めて数字として示されています。
高齢者では風邪やインフルエンザのような症状が続けば早めに病院を受診する方がメリットがあるでしょう。
また、持病の有る無しによっても重症度が変わってくることも分かってきています。
以下のような状態の人は、年齢に関係なく新型コロナに感染した際に重症化のリスクが高くなります。
がん:重症化リスク3.6倍
慢性腎臓病:入院リスク増加
COPD(慢性閉塞性肺疾患):重症化リスク5.7倍
固形臓器移植による免疫不全状態:死亡率上昇
肥満(BMI30以上):入院リスクが2.1倍、死亡リスクが1.5倍
心不全、冠動脈疾患、心筋症などの重篤な心疾患:重症化リスク3.4倍
2型糖尿病:重症化リスク2.3倍
CDC. Coronavirus Disease 2019 (COVID-19). People with Certain Medical Conditionsより
また現在のところデータは限られていますが、以下の基礎疾患や習慣のある人は新型コロナに感染した際に重症化のリスクが高まる可能性があります。
喘息(中等症・重症):人工呼吸器装着期間の延長
脳血管疾患:重症化リスク1.8倍、死亡リスク2.4倍
高血圧症:重症化リスク2倍、死亡リスク2.2倍
血液移植・骨髄移植、原発性免疫不全、HIV、コルチコステロイドの使用、その他の免疫抑制薬の使用による免疫不全状態:潰瘍性大腸炎患者のうちステロイド使用者で死亡リスク6.9倍
喫煙:重症化リスク1.9倍
CDC. Coronavirus Disease 2019 (COVID-19). People with Certain Medical Conditionsより
これらの基礎疾患や習慣は、複数あるほど入院リスクや死亡リスクが高くなることが知られています。
また、女性よりも男性の方が重症化リスクが高いことも分かっています。
これらの重症化リスクに該当する持病をお持ちの方も、早めに受診することが望ましいでしょう。
後遺症がみられることも
新型コロナから回復した後も何らかの"後遺症"の症状が続く方がいることが分かっています。
海外からの報告では、特に倦怠感や呼吸苦、関節痛、胸痛などの症状が続いている方が多いようです。
その他、咳、嗅覚障害、目や口の乾燥、鼻炎、結膜充血、味覚障害、頭痛、痰、食欲不振、ノドの痛み、めまい、筋肉痛、下痢など様々な症状がみられるようです。
また、フランスからは、脱毛、記憶障害、睡眠障害、集中力低下といった急性期にはみられなかった症状も後遺症として報告されています。
日本人を主な対象とした国立国際医療研究センターによる調査でも、咳、痰、だるさ、呼吸苦、嗅覚障害、味覚障害といった症状が、発症60日後も10-20%、発症120日後も2-11%でみられました。
また脱毛も全体の24%でみられ、発症から1ヶ月後から出現し、4ヶ月後くらいまでみられることが分かりました。
今のところこれらの後遺症に対する治療法はなく、新型コロナに罹らないことが最大の予防法です。
病院を受診する前に
自身が新型コロナかなと思ったら、まずはかかりつけ医か地域の医療機関に相談しましょう。
東京都では、かかりつけ医など相談する医療機関に迷う場合や、土日・夜間などかかりつけ医が休診のときには東京都発熱相談センターに相談することも可能です。
医療機関に受診が必要と判断されたら、マスクを着けて、なるべく公共の交通機関を使わずに病院を受診するようにしましょう。
各都道府県の帰国者・接触者相談センターは以下のページの「検査を受けるのは?」の「各都道府県が設置している電話相談窓口(外部サイト)」をご確認ください。
周囲の流行状況を把握しておきましょう
新型コロナは時期や地域によって流行状況が大きく異なります。
つまり、発熱や咳のような症状が出現したとしても新型コロナである可能性は、住んでいる地域によって変わってきます。
例えば東京では第3波の流行のピークでは1日当たり2500人を上回り、検査陽性率も10%を大きく上回っていました。
現在は1日当たりの新規感染者数は400例前後で推移しており、PCR検査の陽性率も4.2%と高い状況が続いています。
各地域における流行状況は、
・新規発生患者数
・新規発生患者数のうち接触歴不明の患者の割合
・PCR検査陽性率
を参考にしましょう。
時期や地域によって、自身が新型コロナに罹る可能性も変わってきますので、お住まいの地域の流行状況をしっかりと把握しておくことが大事です。
新型コロナを疑う症状が出現した場合は、個々人が自身の感染リスクと重症化する可能性を考慮した上で、病院を受診するかどうか判断し、迷う場合にはかかりつけ医や発熱相談センターに電話で相談しましょう。
また、病院を受診しない場合も、手洗いや咳エチケットなどの予防対策は必要ですし、周囲の人(特に高齢者や持病のある人)にはうつさないような配慮が必要です。
新型コロナを広げないためには、手洗い、屋内でのマスク着用、3密回避など新型コロナに注意した生活を続けることが重要です。