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ビュッフェの手袋、エレベーターの抗菌シート・・・そろそろ過剰な感染対策をやめていこうッ!

忽那賢志感染症専門医

新型コロナの流行が始まって2年が経とうとしています。

当初、よく分かっていなかったこの感染症も、この2年で多くのことが分かってきました。

新型コロナの感染経路が十分に分かってきた今、不必要な感染対策についても見直す時期に来ているのではないでしょうか。

新型コロナの感染経路は3つ

新型コロナの感染経路(Nature Reviews Microbiology volume 19, pages528–545 (2021))
新型コロナの感染経路(Nature Reviews Microbiology volume 19, pages528–545 (2021))

新型コロナの感染経路は3つです。

・接触感染:ウイルスで汚染した物、感染した人の手などに触れることで自分の手などにウイルスが付着し、その汚染した手で目や鼻など粘膜に触れる

・飛沫感染:会話などで発生する飛沫を浴びる

・エアロゾル感染:特に換気の悪い屋内では飛沫の飛ぶ距離(1-2M)を超えて感染が起こり得る

基本的にはこの3つの感染経路を意識した感染対策が重要です。

接触感染に対してはこまめな手洗い、飛沫感染やエアロゾル感染に対してはマスク着用と3密を避けることで感染を防ぐことができます。

ビュッフェでの手袋は不要!

筆者撮影
筆者撮影

ホテルの朝食でビュッフェに行くと「食事を取るときはビニール手袋をつけてください」と言われることが多いと思います。

トングとかにいろんな人が触るからだと思いますが、結局ビニール手袋をつけたとしても、ビニール手袋であちこち触ればビニール手袋そのものが汚染してしまい、汚染したビニール手袋でトングを触ればトングも汚染し、何がなんだか分からなくなります。

なんとなく「ビニール手袋は汚染しないんだ」という謎の信頼感があるのかもしれませんが、ビニール手袋にもウイルスや細菌は付着しますし、ウイルスが付着したビニール手袋であちこち触ればウイルスは広がっていきます。

ということで、大事なのは食事を取る前にアルコールなどで手を洗うこと、そして取り終わった後にも手を洗うことです。

どうしてもビニール手袋を使いたいという場合は、毎回食事を取りに行く際に使い回さずに毎回捨てるようにしましょう。

同様に、スーパーのレジの店員さんもずっと同じ手袋をつけて接客をされているのを見かけることがありますが、あれも「手袋はウイルスに汚染されない神話」によるものではないかと思います。

前述の通り手袋も普通に汚染されますので、手袋で触った商品もお釣りを渡したお客さんの手も汚染されていきます。

これを避けるためには、こまめに手を洗うか、手袋を使う場合は毎回換える必要があります。

現実的には、スーパーに入るときと出るときにお客さんが手を洗う、そしてレジの店員さんも定期的に手を洗う、というのが良いのではないかと思います。

筆者撮影
筆者撮影

あとエレベーターのボタンなどのいわゆる高頻度接触面に謎の抗菌シートを貼っているのを見かけることもありますが・・・どこのメーカーのシートなのか、どういった原理で抗ウイルス効果を発揮しているのか、どうやってそれを検証しているのか、など疑問が無限に湧いてきてしまい、安心してペタペタと触る気にはなりません。

こうした高頻度接触面を触ったときは、これらの謎のシートが貼ってあったとしても、その後に手を洗うようにしましょう。

ようするにこまめな手洗いが最強ということです。

ハンドドライヤーは普通に使ってもいい

筆者撮影
筆者撮影

未だにトイレのハンドドライヤーが使用禁止になっているところを見かけます。

特に飛沫やエアロゾルに関しては流行初期から過剰とも思える感染対策が散見されました。

私も新型コロナの流行初期にいろんな人に「ハンドドライヤーはウイルスが舞って危険だからYahooに書いてくれ!」と言われて全部無視していましたが(基本薄情な人間なのです)、私のスルーも虚しく日本全国でハンドドライヤーは使用禁止になっています。

このハンドドライヤーももうそろそろいい加減普通に使っていいのではないでしょうか。

ハンドドライヤーは手を洗った後に使用するものですので基本的にきれいな手を乾燥させるために使用するものであり、そこに新型コロナウイルスがいて、エアロゾルが舞って感染するなんてことは極めて稀であり、そんなことを気にするよりはマスク着用と手洗いという基本的な感染対策を徹底することが重要です。

日本経団連のホームページにも、

オフィスや製造事業場といった、基本的に有症者がいない管理された場所のトイレでのハンドドライヤーの利用での感染リスクは限定されること、また、ハンドドライヤーの利用で発生する水滴、マイクロ飛沫による感染リスクが極めて小さいことが、複数の実験と数値流体シミュレーションを組合せて確認できたことから、ハンドドライヤーの利用停止を削除する。

と記載があり、経団連もこう言っていることですし、そろそろハンドドライヤーも普通に使いませんか?

筆者撮影
筆者撮影

最後に「トイレのフタ問題」についても言及したいと思います。

「新型コロナの感染対策としてトイレの水はフタを閉めて流してください」という張り紙を見かけることがありますが、これも流行初期にトイレの水を流すことでウイルスが舞い上がるのではないかというモデル上の仮説があったり、便から発生したエアロゾルがトイレの配管を通して感染に関与したのではないかという都市伝説的な症例報告があり、「トイレは危険だ!」ということになったのではないかと思いますが、もしトイレを介した感染が起こるとしても極めて稀な感染経路であり、フタをするしないで感染リスクが「ほぼゼロ」から「ほぼほぼゼロ」になるくらいのものでしょう。

まあ別にトイレのフタを閉めて流しても誰かが損をするわけではないので、別にいいんですけどね・・・。

感染対策はシンプルに

全く未知の感染症であった新型コロナも、この2年間で様々なことが分かってきました。

当初はとにかく感染リスクを下げるために何でもやる、ということで行っていた対策の中には、現在では「ここまではやらなくてもいいんじゃないの?」と思えるものも出てきました。

マスク着用、こまめな手洗い、3密を避ける、といった基本的な感染対策を継続していくためには不要な対策はできるだけなくしシンプルにしていくことが大事です。

今一度、ご自身の周りの感染対策を見直してみてはいかがでしょうか。

手洗い啓発ポスター(羽海野チカ先生作)
手洗い啓発ポスター(羽海野チカ先生作)

感染症専門医

感染症専門医。国立国際医療研究センターを経て、2021年7月より大阪大学医学部 感染制御学 教授。大阪大学医学部附属病院 感染制御部 部長。感染症全般を専門とするが、特に新興感染症や新型コロナウイルス感染症に関連した臨床・研究に携わっている。YouTubeチャンネル「くつ王サイダー」配信中。 ※記事は個人としての発信であり、組織の意見を代表するものではありません。本ブログに関する問い合わせ先:kutsuna@hp-infect.med.osaka-u.ac.jp

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