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日本代表候補52名は約1か月で約40名に。サバイバルレースはどう読む?【ラグビー旬な一問一答】

向風見也ラグビーライター
ボール保持者は姫野。その他、左からミラー、コーネルセン、フィフィタ、流(写真:ロイター/アフロ)

 日本ラグビーフットボール協会は9月2日、今秋の男子15人制日本代表候補52名を発表した。

 主将経験者のリーチ マイケルら7月までの活動に参加した面々が選ばれたほか、松島幸太朗をはじめとした故障のため活動を辞退していた長年の主力格が代表復帰に名乗りをあげた。

 同日、都内でジェイミー・ジョセフヘッドコーチが藤井雄一郎ナショナルチームディレクター臨席のもと会見した。

会見中のジョセフ(写真中央、筆者撮影)
会見中のジョセフ(写真中央、筆者撮影)

 ジョセフは切り出す。

「これからの日本、欧州での試合を楽しみにしています。春は新しい選手が活躍してくれた。自分としても、選手をたくさん使ってテストマッチへ準備できた。ワールドカップへも同じことがあります。パンデミックもあって、選手層がなかなかなかったが、(主力の)次の選手が出てくることが重要だと思っています。

 チーム内で経験者と若手のバランスが重要だと思っています。未来に向け、若い選手を起用しなければいけない。以前のようなスーパーラグビー参加がなくなったため、そこはチャレンジだと思っています(2020年までの5シーズンは、国際リーグのスーパーラグビーに日本チームのサンウルブズが参加。代表強化に寄与していた)。

 今回、見てわかる通り、52人もメンバーを入れています。キープレーヤーが怪我などでいないことは残念。ただ新しい選手たちをしっかりと使っていける。コントロールできるところをコントロールしていきたいです。今回の合宿では新たなやり方をします。大人数で合宿をします。コーチの人数も揃えなければいけないし、選手も競い合わなければいけない。これは日本ラグビーにとっていいことです。

 最後に、7月までの学びを。4試合をおこないました。そのうち2試合は勝てました。これが何を反映しているか。ティア2ネーションには自分たちがしっかりやれば勝てる、ティア1にもチャンスを作れた。自分たちは、そういう現状にある。2回目のフランスの試合も勝てるところまではいけたが、後半に失速した(10-15)。そこをキーポイントにして10月以降の試合へ改善していく必要があると考えています。では、ここから質問をお願いします」

 チームは9月4日から大分、18日から宮崎で合宿。9月下旬までにスコッドを40名程度へ絞り込み、10月1、8、14日にはJAPAN XVがオーストラリアA戦と銘打ち国内でぶつかり、10月29日以降はニュージーランド代表などと国内外でテストマッチ(代表戦=世界ランキングに関与)をおこなう。

 予定は以下の通り。

■別府合宿

9月4日(日)〜9月9日(金)※4日は集合日

9月12日(月)〜9月18日(日)※18日は移動日

■宮崎合宿

9月18日(日)〜9月24日(土)※18日は移動日

9月25日(日)〜10月15日(土)

10月22日(土)〜10月27日(木)

※一般非公開(予定)

■JAPAN XV(ジャパン・フィフティーン)対オーストラリアA代表

2022年10月1日(土) 19:00キックオフ 秩父宮ラグビー場(東京)

2022年10月8日(土) 14:00キックオフ ベスト電器スタジアム(福岡)

2022年10月14日(金) 18:30キックオフ ヨドコウ桜スタジアム(大阪)

■日本代表テストマッチ

2022年10月29日(土) 対ニュージーランド代表 国立競技場(東京)

2022年11月12日(土) 対イングランド代表 トゥイッケナムスタジアム(イングランド・ロンドン)

2022年11月20日(日) 対フランス代表 スタジアム・ド・トゥールーズ(トゥールーズ)

 当該の活動に参加する選手は以下の通りだ。

( )は所属先、数字は「身長・体重・生年月日・キャップ数」の順

◎=2019年ワールドカップ日本大会出場選手(下記□の該当者含む)

〇=6月25日のウルグアイ代表戦、7月2、9日の対フランス代表2連戦のいずれかで出場登録メンバーに入った選手(発表後の離脱者含む)

□=2019年までのジェイミー・ジョセフ体制下の代表関連活動、および2017~19年のサンウルブズ(国際リーグのスーパーラグビーに日本から参戦。ちなみに2016年は現体制発足前)に参加経験(練習生を含む)がある選手。

★=2022年春の代表ツアー(ナショナルディベロップメントスコッド=NDS、候補入りも合宿不参加となった場合も含む)に絡まなかった選手

<左プロップ>

稲垣啓太(埼玉パナソニックワイルドナイツ)…186・116・1990/6/2・42 ◎〇

海士広大(クボタスピアーズ船橋・東京ベイ)…172・102・1994/10/7・1

クレイグ・ミラー(埼玉パナソニックワイルドナイツ)…186・116・1990/10/29・6 □

三浦昌悟(トヨタヴェルブリッツ)…180・113・1995/6/8・9 〇□

<右プロップ>

淺岡俊亮(トヨタヴェルブリッツ)…186・121・1996/6/24・1

ヴァル アサエリ愛(埼玉パナソニックワイルドナイツ)…187・115・1989/5/7・23 ◎〇

木津悠輔(トヨタヴェルブリッツ)…178・112・1995/12/2・5 ◎〇

具智元(コベルコ神戸スティーラーズ)…184・122・1994/7/20・18 ◎★

<フッカー>

坂手淳史(埼玉パナソニックワイルドナイツ)…180・104・1993/6/21・30 ◎〇

橋本大吾(東芝ブレイブルーパス東京)…174・105・1994/1/28・3 〇

日野剛志(静岡ブルーレヴズ)…172・100・1990/1/20・5 □

堀越康介(東京サントリーサンゴリアス)…175・100・1995/6/2・5 □

<ロック>

秋山大地(トヨタヴェルブリッツ)…192・110・1996/11/14・1 

飯野晃司(東京サントリーサンゴリアス)…190・110・1994/10/12・1

ヴィンピー・ファンデルヴァルト(浦安D-Rocks)…188・112・1989/1/6・20 ◎〇

大戸裕矢(静岡ブルーレヴズ)…187・104・1990/3/9・5 □

小瀧尚弘(コベルコ神戸スティーラーズ)…194・114・1992/6/13・11 

サナイラ・ワクァ(花園近鉄ライナーズ)…202・120・1995/7/17・2 〇

ジャック・コーネルセン(埼玉パナソニックワイルドナイツ)…195・110・1994/10/13・9 〇

ワーナー・ディアンズ(東芝ブレイブルーパス東京)…201・117・2002/4/11・4 〇

<フランカー>

下川甲嗣(東京サントリーサンゴリアス)…188・105・1999/1/17・0

布巻峻介(埼玉パナソニックワイルドナイツ)…178・98・1992/7/13・7 □

ピーター・ラブスカフニ(クボタスピアーズ船橋・東京ベイ)…189・106・1989/1/11・13 ◎

古川聖人(トヨタヴェルブリッツ)…179・95・1996/12/6・3 〇

ベン・ガンター(埼玉パナソニックワイルドナイツ)…195・120・1997/10/24・5 〇□

リーチ マイケル(東芝ブレイブルーパス東京)…189・113・1988/10/7・75 ◎〇

<ナンバーエイト>

姫野和樹(トヨタヴェルブリッツ)…187・108・1994/7/27・22 ◎★

ファウルア・マキシ(クボタスピアーズ船橋・東京ベイ)…187・112・1997/1/20・4 〇

<スクラムハーフ>

茂野海人(トヨタヴェルブリッツ)…170・77・1990/11/21・16 ◎〇

小山大輝(埼玉パナソニックワイルドナイツ)…171・74・1994/10/31・0

齋藤直人(東京サントリーサンゴリアス)…165・73・1997/8/26・8 〇

高橋敏也(リコーブラックラムズ東京)…182・85・1993/10/22・0

流大(東京サントリーサンゴリアス)…166・75・1992/9/4・27 ◎

<スタンドオフ>

田村優(横浜キヤノンイーグルス)…181・92・1989/1/9・70 ◎〇

中尾隼太(東芝ブレイブルーパス東京)…176・86・1995/1/20・0

山沢拓也(埼玉パナソニックワイルドナイツ)…176・84・1994/9/21・4 〇□

李承信(コベルコ神戸スティーラーズ)…176・85・2001/1/13・3 〇

<センター>

梶村祐介(横浜キヤノンイーグルス)…181・95・1995/9/13・2 〇□

シェーン・ゲイツ(浦安D-Rocks)…183・95・1992/9/27・4 〇□

中野将伍(東京サントリーサンゴリアス)…186・98・1997/6/11・5 〇

中村亮土(東京サントリーサンゴリアス)…182・92・1991/6/3・30 ◎★

ディラン・ライリー(埼玉パナソニックワイルドナイツ)…187・102・1997/5/2・7 〇

ラファエレ ティモシー(コベルコ神戸スティーラーズ)…186・96・1991/8/19・28 ◎

<ウイング>

髙橋汰地(トヨタヴェルブリッツ)…180・91・1996/6/24・1 〇

ジョネ・ナイカブラ(東芝ブレイブルーパス東京)…177・95・1994/4/12・0

ゲラード・ファンデンヒーファー(クボタスピアーズ船橋・東京ベイ)…192・102・1989/4/13・3 〇□

シオサイア・フィフィタ(花園近鉄ライナーズ)…187・105・1998/12/20・9 〇

根塚洸雅(クボタスピアーズ船橋・東京ベイ)…173・82・1998/9/15・1

松島幸太朗(東京サントリーサンゴリアス)…178・87・1993/2/26・44 ◎★

<フルバック>

野口竜司(埼玉パナソニックワイルドナイツ)…177・83・1995/7/15・14 〇

メイン平(リコーブラックラムズ東京)…178・89・2000/9/5・1

山中亮平(コベルコ神戸スティーラーズ)…188・98・1988/6/22・24 ◎〇

 質疑が始まる。

——まずオーストラリアA戦のメンバーは、このスコッドから選んでいくのか。ツアー中、スコッドの人数はどう変わるか。

「自分たちの目的としては52人を選考しているが、オーストラリアA戦の10日くらい前までに人数を少し減らす考えがあります。もちろんその時の怪我の状況(により変更)はあります。夏に100パーセントじゃなかった選手もいたなか、それらをモニタリングしながら進めていきます。これ以外の選手を連れてくることは、いまのところ考えていません」

——オーストラリアAシリーズの約10日前までに、人数を何名に絞るのか。

「人数は怪我の状況次第です。その時、経験者も100パーセントの状態ではないと見ています。それらはキャンプで分かってくると思いますが。(絞り込まれる人数は)40名程度になると考えています。ただ、今年の北九州でのウルグアイ代表戦後がそうでしたが、病気で10名ほどの選手がプレーできなくなるというケースもある。他の(漏れた)選手もメンタル的な準備をして、常に(試合に)出られる状態でいてもらうことが重要です」

 今回のリストにあって、初の候補入りを果たした選手、現体制の代表関連活動(前述のサンウルブズ含む)への参加経験がない選手はいない。

 そもそもジョセフ体制は、チームの継続性と一貫性を重んじる。前回の活動以降、国内リーグもおこなわれなかったため、サプライズ選出がないことには論をまたない。

 今夏の活動でその時に考えられるベストメンバーで臨んだのは、6月25日のウルグアイ代表戦、7月の対フランス代表2連戦の計3試合だ。

 そのため現時点では、一部を除く各ポジションの争いにおいては〇にあたる選手のうち多くのゲームでメンバー入りした選手、◎や★に該当する熟練者が軸となりそうだ。

 また会見にあった通り、★の選手には月のキャンプ中に「100パーセント」の状態となることが求められよう。

 もっとも、2019年のワールドカップ日本大会で史上初の8強入りを果たした現体制は、2023年のワールドカップフランス大会を見据えて選手層の拡大を図っている。

 ここでの選手層とは、チームが目指すプレースタイルを高次で再現できる選手の数と言い換えられよう。7月までの活動で予備軍にあたるナショナルディベロップメントスコッド(NDS)というグループを同時に動かしたのも、その一環だ。

 いまは若手の積極登用も求められるなか、チーム力を高めて結果を出そうとしているわけだ。

 その領域について問われると、ジョセフは「(試合での)パフォーマンスを犠牲にしたくない」と繰り返した。

——非代表戦となる対オーストラリアA3連戦での選手起用について。経験者と若手選手の配分についてはどう考えますか。

「この試合で勝つのが目的です。そして、同時に選手を成長させたい。(試合での)パフォーマンスを犠牲にしたくないので、この3週間(合宿)で選手たちの働きを評価する。スーパーラグビーのタフな試合がなくなった分、今回のキャンプを(今度の試合への)準備期間として使いたいと考えます。その後、オールブラックス(ニュージーランド代表)、イングランド代表、フランス代表といった世界のベストチームと戦わないといけないのです。だから、(オーストラリアA戦での)パフォーマンスを犠牲にしたくない。

(選手は)自分で、そのポジションを取りにいかないといけない。それを、私はしっかりと見ていきたい」

 この3試合においても、表面的な「試験的起用」が重なることはなかろう。若手が出番を掴むには、意欲と働きぶりで熟練者を上回らなければならなそうだ。

 ここから指揮官は、問わず語りで今後の枢軸となりうるメンバーについて語る。

「7月まで、坂手が素晴らしい主将として活躍してくれました。

タックルの強い坂手主将
タックルの強い坂手主将写真:西村尚己/アフロスポーツ

 リーダーシップグループにはここ3~5年、入っていて、前回、ステップアップした。今後も彼を主将としたいです。他選手のいい見本となり、チームをまとめ上げます。賢く、他の選手が何を思っているのかという感覚もわかっています。

 李は22歳ながら、フランス代表戦の週に急遽、メンバーに入って素晴らしい仕事をしていました。

新世代の司令塔と言われる李
新世代の司令塔と言われる李写真:西村尚己/アフロスポーツ

 齋藤も流の後ろにいてゲームタイムをもらえない時間もありましたが、(今回、多くの出番を得て)成長した。

ハイテンポな展開を可能とする運動量、パススピードが際立つ齋藤。サポートプレーも光る。
ハイテンポな展開を可能とする運動量、パススピードが際立つ齋藤。サポートプレーも光る。写真:松尾/アフロスポーツ

 ディアンズも頭角を現した。19歳で日本に来たベン・ガンターも若い。

写真左からディアンズ、ガンター
写真左からディアンズ、ガンター写真:つのだよしお/アフロ

 こうしたポテンシャルのある彼らをワールドカップまで使っていくことで、成長すると思っています」

 質疑では、怪我人についての話題もあった。

——コンディションの都合で選出できなかった選手について。

「リーチ、田村、姫野、亮土とキープレーヤーも揃っているが、リタイアした選手もいます。トンプソン ルークです(2019年を最後に代表引退)。

(トンプソンがプレーしていた)ロックにはいまだに怪我人がいる。が。ワクァ、ヴィンピーも怪我をしていて、3~4週間で復帰すると思っています。

 その他、ジェームズ・ムーアが脳震盪で離れ、サウマキ アマナキ、辻雄康も故障しています。そのあたりも、踏まえて考えていただきたいです。そんななか、今回のセレクションに入っている小瀧選手は昨秋の欧州ツアーにも参加した選手です。

 これ以上、怪我で失いたくない。松田力也はACLの怪我のため来年まで戻らないと思っています。セミシ・マシレワも去年までフルバックとしていいプレーをしてくれたが、入れられません。他方、若い選手にチャンスが与えられると思っていますし、いる選手でできることをしっかりとやっていくことが重要です」

——堀江翔太選手については。

「コンディション的には問題ない。今回のセレクションには入っていません」

 37歳の堀江は個別調整の只中。今夏、約2年ぶりの復帰を果たした段階で、今秋のツアーへは参加しない可能性もにじませていた。かねて藤井ナショナルチームディレクターが「スーパー特別扱い」と話すほど、信頼が厚い。

——姫野、具、中村、松島各選手について。

「経験者が戻ってきて嬉しい。彼らは多くのテストマッチを経験している。具は首を痛めているなど、それぞれ大きな怪我をしていました。毎日、モニタリングをして、彼らが戻ることを目指したいです。いまは合宿の『1(別府のことか)』には戻したいと思っている。試合は10月までないので、日々、現状を確認していきたいです」

具はカムバックすればスクラムの軸
具はカムバックすればスクラムの軸写真:ムツ・カワモリ/アフロ

防御力とスキル、リーダーシップに長ける中村
防御力とスキル、リーダーシップに長ける中村写真:長田洋平/アフロスポーツ

松島はフランスリーグでもプレー
松島はフランスリーグでもプレー写真:ロイター/アフロ

 以上が事実関係とそれに基づく分析となる。フランス大会に向けて重要なテストシリーズに向け、現場のありのままを注視されたい。

ラグビーライター

1982年、富山県生まれ。成城大学文芸学部芸術学科卒。2006年に独立し、おもにラグビーのリポートやコラムを「ラグビーマガジン」「ラグビーリパブリック」「FRIDAY DIGITAL」などに寄稿。ラグビー技術本の構成やトークイベントの企画・司会もおこなう。著書に『ジャパンのために 日本ラグビー9人の肖像』(論創社)『サンウルブズの挑戦 スーパーラグビー――闘う狼たちの記録』(双葉社)。共著に『ラグビー・エクスプレス イングランド経由日本行き』(双葉社)など。

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