【新型コロナ】発熱外来を受診した後の流れは 逼迫を避けるには 医師の目線
各地で発熱外来が逼迫しています。予約が開始された途端、枠が埋まってしまうクリニックもあり、長蛇の列を目にすることも増えました。そこで、発熱外来を受診した後の流れを踏まえ、逼迫を避けるには、発熱外来の利用はどうあるべきかについて、書きたいと思います。
発熱外来が逼迫する原因
発熱外来が逼迫している原因は、発熱者が多いためですが、「医療」よりも「診断」を求めている人が多いことも理由です。現場では、「新型コロナなら10日間休まないといけないが、そうでなければ回復後すぐに働ける」という意見もよく耳にします。
そのため、厚労省は、事業所や学校に対して、新型コロナウイルスの検査証明を求めないよう要請しています。
また、濃厚接触者の自宅待機解除のために、発熱外来へ検査に来ることは避けなければいけません。現状、2日目と3日目に抗原定性検査の陰性を確認すれば濃厚接触者の待機期間は短縮されますが、これは自己検査にて行う前提であり、医療が必要な子どもや高齢者などの医療的弱者以外による発熱外来の安易な利用は避けるべきと考えます。
発熱外来を受診する陽性者の中から、本当に重症化する「ハイリスク患者」を拾い上げなければいけないため、社会全体で濃厚接触者や軽症者の受診が起こらないよう歯止めをかける必要があります。
発熱外来を受診したらどうなるか?
発熱外来を受診する場合、感染拡大期の現在では、多くの医療機関で長い待ち時間が発生します。ネット予約が可能な医療機関では、人気歌手のコンサートチケットの様相を呈しており、開始数分でその日の予約が終了してしまうところもあります。先着順にしている病院では、開院前から並ぶ人も出てきています。
たとえ距離をあけていても、症状がある人が行列に並ぶわけです。受診する場合、「もらわなくてもよかった新型コロナをもらってしまう」リスクを認識しておく必要があります。新型コロナが流行しているのは確かですが、その咽頭痛はライノウイルスなどのただの風邪ウイルスかもしれません。新型コロナで咳をしている人に行列の前後を挟まれてしまえば、感染リスクは高いでしょう。
そのため、「発熱外来を受診しなければならない医学的状態かどうか」、この1点のみで判断してください。日本感染症学会などの4学会連名声明による受診の目安を図1に示します(1)。
さて、発熱外来を受診した場合、個人防護具を着用した医療従事者によって、診察と検査が行われます。
新型コロナの検査は、抗原検査キットで即日判明することもあれば、PCR検査で翌日以降の報告になることもあります。受診後いったん自宅に帰ってもらい、電話で連絡をする医療機関も多いと思いますが、1件1件電話するのは医療機関にとってかなりの手間です。さらに検査が陽性になった場合、医師は発生届を保健所に提出する必要があり、重症化リスクが高い患者さんに関しては、抗ウイルス薬の経口薬を処方することになります(図2)。
経口抗ウイルス薬は、医療機関や薬局にいくつか在庫があり、陽性者の自宅に薬剤師が届けることもあります。ただ、地域の薬剤師の負担が大きいのが現状です。
発熱外来の逼迫を避ける対策は?
①抗原検査キットの配布・自己検査・自己登録
厚労省は現在抗原検査キットを配布することを決めており、自治体によってはこれを発熱外来や薬局だけでなく、ネットで入手できるよう働きかけています。
検査後、ネットで登録できるなど、医療機関が発生届の提出を簡略化できる仕組みが必要ですが、このような仕組みを適用できるのはおそらく若年者だけに限定されるかもしれません。
若い軽症者が受診を控える風土を作り、症状を訴えることが難しい子どもや重症化リスクが高い高齢者の受診がスムーズにいくよう配慮することが重要です。
②濃厚接触者の検査は原則自己検査で
濃厚接触者は、医学的には医療機関を受診する必要がありません。現状、抗原検査キットで陰性を確認すれば待機期間を短縮することができますが、これは原則自己検査で行うべきです。
このためには抗原検査キットの配布がすすまないといけません。
③証明書類の電子化
逼迫している医療機関に書類を申請することを抑制するため、電子版の証明書を普及させる必要があります。
今年の4月末から、「My HER-SYS」において、電子版の療養証明書が表示できるようになりました。陽性者はこれを使って証明書を表示できます。ただ、医師に診断を受けていない事例では対象外となることから、この要件をもう少し緩和できるとよいかもしれません。
④全数報告の緩和
現在、新型コロナは、「新型インフルエンザ等感染症」の枠組みで運用されています。第7波では「5類相当に」という声が挙がっています。
「新型インフルエンザ等感染症」の枠組みに基づき、全数報告自体はまだ継続していますが、専門家有志らが提言するように、これを定点報告にするなどの対応はあってよいかと思います。ただ、地域でどのくらい流行しているのかが見えなくなるというデメリットを孕みます。
「5類相当」ではなく、一気に「5類感染症」にメジャーチェンジした場合(2)、公費を投下することや強い要請を行うことが難しくなります。また、BA.5の次のウイルスがアルファ株やデルタ株のように厄介な場合、法的なハードルになり、手続きに時間がかかってしまいます。
そのため、「新型インフルエンザ等感染症」の枠組みで「5類相当」にダウングレードする柔軟性を持たせるやり方が良いと思います。
まとめ
事業所や学校などが安易な発熱外来利用や新型コロナに関する検査証明を求めないことも重要ですが、発熱外来は本来の機能、すなわち発熱などの症状があって新型コロナの発症を疑う人に限定されるべきです。
普段病院に受診しないような軽症の症状であれば受診を控え、限られた医療資源を地域住民で守る心がけが必要です。
(参考)
(1) 限りある医療資源を有効活用するための医療機関受診及び救急利に関する4学会声明 〜新型コロナウイルスにかかったかも︖と思った時にどうすればよいのか〜(URL:https://www.pc-covid19.jp/files/topics/topics-36-1.pdf)
(2) 高まる新型コロナ「5類相当」への引き下げ論 実態はすでに引き下げになりつつある(URL:https://news.yahoo.co.jp/byline/kuraharayu/20220413-00290667)
【この記事は、Yahoo!ニュース個人編集部とオーサーが内容に関して共同で企画し、オーサーが執筆したものです】