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結婚相手はともかく子どもがほしい。婚活の前に妊活すべき?~結婚相談所の現実(5)~

大宮冬洋フリーライター
婚活と異なり、不妊治療は一緒にがんばるパートナーがいます。イラスト:つぼいひろき

 婚活アプリが全盛の時代だ。一方で、昔ながらの「お見合いおばさん(おじさん)」が経営する結婚相談所もしぶとく生き残っている。会員一人ひとりの性格や事情を把握して、お見合いを組み、相談に乗り、結婚というゴールを一緒に目指していく。地道な仕事だ。彼らは具体的に何をしてくれるのか。料金は妥当なのか。そのやり方で本当に結婚できるのか。いろんな疑問がわいてくる。

 筆者は全国の結婚相談所を訪ね歩く連載を続けている。顔を合わせて話してみると、意外な現実を知ることが多い。こちらが率直な質問をすると、期待以上に赤裸々な回答が戻ってきたりする。本連載ではその一部を読者と共有したいと思う。

 第5回は、30代40代の婚活中の女性の多くが真剣に考えているテーマを取り上げたい。すなわち、妊活である。ぜひとも子どもがほしい場合は、1日も早く結婚したいものだ。「それほど好きになれない相手と結婚するぐらいならば独身のままでいい。でも、子どもだけはほしい」という本音を漏らす人もいる。

 この微妙な質問にはこれ以上いないほど適任な回答者がいる。都内で結婚相談所「こうのとり結婚&妊活塾」を運営する中野りい子さん。約10年間の婚活の末に30代後半で結婚を果たし、「すごい額」のお金と時間と労力を費やして不妊治療に励み、44歳で初産を果たした女性である。

子作りは一人じゃできないけれど、育児は一人でも可能です

――いわゆる「未婚の母」になっても構わないので子どもがほしいという方がいたら中野さんはどう答えますか。

 アラフォーの独身女性からはときどき聞く話です。妊娠しにくくなっている年齢ですが、産めるならぜひ産めばいいと私なら答えます。子作りは一人じゃできないけれど、育児は一人でも可能です。

 女性の芸能人が結婚する一般人男性はろくでもない人が多かったりしますよね。子どもを作った後に離婚するケースが少なくありません。でも、その女性は子どもを作ったことを後悔していないはず。自分の子どもというのはそれぐらいかわいいからです。

 行政の制度をちゃんと活用すれば、4~5万円の児童扶養手当などひとり親はいろいろ支援してもらえます。自分の親が元気な場合は手伝ってもらえるでしょう。

 それでも不安だし世間体も気になるという人には「未婚の母」はやめておいたほうがいいと思います。お金や世間体程度のことで怖がっていたら、一人で子育てなんてできるわけありません。

――結婚相手が見つかるまで卵子を凍結保存しておくことが話題になりましたね。

 抗がん剤治療を受ける予定がある人だったりしたら私もお勧めします。でも、それ以外の健康な人だったら、「そんなことをしていないで1日でも早く相手を見つけよう」と言いますね。

 卵子を凍結するには時間もお金もかかります。しかも保存してもらうのにも年間で何十万円もの費用が必要です。そして、卵子凍結の一番のデメリットは、「いつでも子どもができる」と安心して結婚相手を本気で見つけなくなってしまうこと。ある病院では、凍結してある卵子で子どもができた例が今までに一度もないそうです。

不妊治療には200万円は必要。最初から体外受精をするのがお勧めです

――では、どうしても結婚して子どもがほしい人にはどうアドバイスしますか。

 婚活と同時に、不妊治療用のお金を用意しておくことです。結婚相手が見つかったら、自分がお金を出すことを条件に不妊治療に協力してもらう約束を取り付けましょう。多くの男性は優しいので奥さんの望みはかなえてあげようとしてくれます。ただし、自分の望みなのだから、お金は自分が出すべきでしょう。

 不妊治療を数回、躊躇なく受ける費用の目安として200万円くらいは必要だと思います。500万円ぐらいかける人はザラにいますから。それでも子どもができないことも少なくありません。1000万円かけても無駄になってしまうかもしれない。ギャンブルに近い世界です。私の場合は、6回も病院を変えてやっと妊娠・出産することができました。

 体外受精は確かに高額ですが、タイミングや人工授精よりは確率も上がります。タイミングや人工授精とは違い、文字通り卵子を体外に出すので卵子の状態もわかるのです。不妊治療のステップとしては、タイミング法から人工授精、体外受精へと上がっていくのが一般的です。でも、特にアラフォーの場合は、早めに体外受精をやり、それでも難しかったら転院を考えるのが合理的だと私は思います。妊娠できない理由を年齢のせいにされてしまうことが多いからです。

――結婚相談所や婚活アプリなどを使った婚活をする場合はどんなことに留意したらいいですか。

 そもそも論ですが、子どもがほしいという男性は35歳未満の女性を結婚相手として探す傾向があります。彼らは検索条件に年齢を入れてしまうので、アラフォーの女性は選ばれにくいのです。

 アラフォー以降の女性が婚活をするときは、子どもがほしいという気持ちは胸の内に秘めておき、自己PR欄などに「子どもが好きです」などと書かないことを私はお勧めします。書いてしまうと、「子どもはいてもいなくてもどちらでもいい」という男性を逃してしまうからです。

 最初はやはり「一緒にいて居心地のいい人」などの相性重視で相手を探すこと。そして、信頼関係を深めた後に子どものことを切り出しましょう。私の場合は、夫からプロポーズを受けた2日後に自分のお金で不妊治療を受けたいことを切り出しました。

 以上が中野さんへのインタビュー内容だ。一人で子育てをする価値があるほど自分の子どもはかわいいと彼女は言い切る。ただし、結婚生活の中での子育てを目指すのであれば、相手との相性の良さと価値観の一致は必須だ。以前にインタビューした際、中野さんはこんな感想を述べていた。

「すごい額のお金を使って途中で病気にもなった不妊治療よりも、約10年の婚活のほうがはるかに辛かったです。不妊治療は一緒にがんばってくれる主人がいますが、婚活は一人でやらなくてはいけません」

 まずは愛するパートナーを大事にしたい。それができないのであれば、一人で子どもを産み育てる覚悟と努力が必要。中野さんの意見はどこまでもわかりやすい。

フリーライター

僕は1976年生まれ。40代です。燦然と輝く「中年の星」にはなれなくても、年齢を重ねてずる賢くなっただけの「中年の屑」と化すことは避けたいな。自分も周囲も一緒にキラリと光り、人に喜んでもらえる生き方を模索するべきですよね。世間という広大な夜空を彩る「中年の星屑たち」になるためのニュースコラムを発信します。著書は『人は死ぬまで結婚できる』(講談社+α新書)など。連載「晩婚さんいらっしゃい!」により東洋経済オンラインアワード2019「ロングランヒット賞」を受賞。コラムやイベント情報が読める無料メルマガ配信ご希望の方は僕のホームページをご覧ください。(「ポスト中年の主張」から2017年3月に改題)

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