年齢階層別に乗用車普及率の実情をさぐる(2021年公開版)
「若者の乗用車離れ」が叫ばれる昨今、世帯ベースではどの程度の乗用車が保有されて、それはどのような推移を遂げてきたのだろうか。内閣府の消費動向調査(※)の結果から世帯主の年齢階層別に実情を確認する。
まずは総世帯(全部の世帯)における、世帯主年齢階層別の乗用車普及率を確認する。
若年層(29歳以下)の普及率が低いのは世間一般に語られているイメージ通り。2005年と2011年には高齢層(60歳以上)を上回る状況が発生したが、それもつかの間の話。むしろ2011年をピークとし、それ以降は下げ基調を見せ、全般的には全年齢階層の中で一番低い普及率となる立ち位置に居続けている。
現状では、乗用車の保有は若年層では半数足らず。それに対して中年層(30~59歳)では4世帯のうち3世帯強となる。未婚が多い若年層では、乗用車の必然性も低いと考えれば道理は通る。
これを新車で買ったのか、中古車で買ったのかで確認すると次の通り。
目にとまるのは若年層の新車購入率の低さ。2007年に一度逆転し、その後は2018年でようやく2回目の逆転現象が生じているが、それ以外は「中古車購入>新車購入」の状態が継続している。新車へのこだわりのあるなしではなくむしろ、初期購入費用の高さによるものと考えてよい。
若年層の動向を見ると2013年に中古車で大きな減少が生じたが、その後一時的な巻き返しがあり、その後で再び下落に転じており、中期的には減少の流れにあるように見える。新車は元々値が低く大きな動きはない。「若者の乗用車離れ」なるものは中古車において生じているのが確認できる。
中年層は新車・中古車ともに積極的に購入・利用している。一方高齢層は新車へのこだわりが強く、若年層とは逆に「新車購入>中古車購入」の傾向が継続中。大型車両を購入する必要もあまりなく、小型車で十分な場合も多いことから、わざわざ中古車で買うメリットもない以上、新車に手が出せるのだろう。金銭的な余裕も大きな要因。
また、全体のグラフからも把握できるが、若年層では「新車購入」と「中古車購入」を足したものがほぼ「乗用車普及率」に近い値なのに対し、中年層では「乗用車普及率」<(「新車」+「中古車」)の図式が見られる。
これは「中古車も新車も数台所有していても、全体の普及率としては『あり』『無し』でしかカウントしない」ことに起因する。つまり「若年層が世帯主の世帯は乗用車を1台しか持っていない場合が多い(単身世帯も多い)」「中年層は複数台持っている世帯が多い」状況を意味する。
二世代家族、あるいはまだ親離れしていなくとも乗用車を持つ子供がいる事例は容易に想定でき、当然の結果といえる。さらに買物や子供の送迎、パートの出勤に利用するため、妻が夫とは別に自分自身の乗用車を所有する事例も十分想定されよう。
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※内閣府の消費動向調査
今後の暮らし向きの見通しなどについての消費者の意識や各種サービスなどへの支出予定、主要耐久消費財などの保有状況を把握することで、景気動向判断の基礎資料を得ることを目的としている調査。調査世帯は、二人以上の世帯、単身世帯毎に三段抽出(市町村・調査単位区・世帯)により選ばれた8400世帯。調査時期は毎月1回で、調査時点は毎月15日。毎月10日前後に調査対象世帯に調査票が届くよう郵送し、毎月20日頃までに届いた調査票を集計する。
毎月調査を実施しているが年1回、3月分において、他の月よりは細部にわたる内容を調査している。その中の項目の一つ「主要耐久消費財の普及・保有状況」を今件精査では用いている。これは「回答者の世帯において対象品目を回答時点(直近分の場合は2021年3月末時点)で持っているか否か」「持っている場合は保有数量はどれほどか」を尋ねた結果。具体的な利用状況は尋ねていない。
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(注)グラフ中の「ppt」とは%ポイントを意味します。
(注)「(大)震災」は特記や詳細表記の無い限り、東日本大震災を意味します。
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