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G7外相会合開催地のリューベックってどんな街?

シュピッツナーゲル典子在独ジャーナリスト
ホルステルン門を過ぎると旧市街 画像Die LUEBECKER MUSEEN  

4月14、15日にG7外相会合が開催された北ドイツの街リューベック(Luebeck)はどんな街かご存知ですか?バルト海沿岸部にある港湾都市で交易の中心地として繁栄し、1987年旧市街は世界遺産に指定されました。

別名「ハンザの女王」とまで言われる水の都リューベックの旧市街はレンガつくりの建物が立ち並び、文化的そして歴史的な観光スポットが密集しています。13世紀から14世紀にはハンザ同盟都市の要として栄えた中世の面影が今も残る歴史ある街の魅力をご紹介します。

ハンザ同盟とは中世後期に北ドイツを中心にバルト海沿岸地域の貿易を独占し、ヨーロッパ北部の経済圏を支配した都市同盟です。(ヴィキぺディア)

リューベックをはじめ、ハンブルクやブレーメンなどがかってのハンザ同盟の中心都市でした。ちなみに、14日のフランクフルターアルゲマイネ紙によれば、リューベックはドイツで必ず訪れたい街だといいます。

街のシンボル・ホルステルン門

旧市街の入り口にある「ホルステルン門(Holstentor)」は、中世後期に建てられた重厚な市城門です。街のシンボルであるこの門は、旧50マルク紙幣の裏面のデザインに使われていました。ユーロ導入後は、2006年2ユーロコインのデザインに用いられたり、2007年には特別記念100ユーロ金コインでもホルステルン門と7つの塔が見られます。

ホルステルン門・傾いているのがわかります?画像LTM-Manfred Nupnau
ホルステルン門・傾いているのがわかります?画像LTM-Manfred Nupnau

目を凝らして門全体眺めると、傾いていることに気がつくでしょう。これは、レンガの重みで地面にのめりこんでしまったためとか。壁の一部はなんと厚さ3.5メートルもあり、弱かった地盤が重みに耐え切れなかったようです。そして、門の上部には内に結束、外に平和を」という意味のラテン語「CONCORDIA DEMI FORIS PAX」が刻まれています。

2つの尖塔が目印のこの門内部にある歴史博物館では、貿易と航海の中心地であったリューベックについて知る資料や模型が展示されています。また、体験型の博物館になっているので、大人も子供も楽しめます。

ハンザ都市繁栄の証・塩の倉庫

ホルステルン門の近くにある歴史的な塩の倉庫も必見の場です。この倉庫にはかってリューベックから南へ80キロほどのリューネベルクで生産された塩を保管していました。

塩は、重要な商品として高値で取引されました。それは、バルト海で獲れたニシンを塩漬けにし、長期保存するために塩がなくてはならないものだったからです。この塩漬けニシンの輸出により、リューベックは利益を上げ、富を築き上げました。

塩の倉庫はホルステルン門のすぐ横 画像LTM-Torsten Krueger
塩の倉庫はホルステルン門のすぐ横 画像LTM-Torsten Krueger

現在、リューネブルクからリューベック間の塩が辿った通商路は、「古い塩の道」と呼ばれる観光街道の一つです。

マリエン教会

1250年から100年もかけて建てられたマリエン教会(Marienkirche)は、レンガゴシック様式の教会では世界最大の教会です。バルト海沿岸の都市では、この教会を手本として多くの教会が建てられたといわれています。教会内部にある8500本ほどのパイプを持つ世界最大級のパイプオルガンは壮観です。この教会のオルガニストだったブクスフーデの演奏に魅せられて、青年時代のバッハが通ったといわれます。

市庁舎

市庁舎は(Rathaus)、マリエン教会の横にあるマルクト広場にあります。ハンザ同盟の盟主であったリューベックでは、この市庁舎でハンザ会議が開かれ、重要な決定がなされました。当時の面影を残すドイツ最古のゴシック様式の見事なレンガ造りで、内部はツワーガイドで見学できます。リューベック独特の黒いレンガ、緑の尖塔、ファサードに見られる風を通すための円形の穴などもお見逃しなく。

3人のノーベル賞受賞者を輩出

リューベックゆかりのノーベル賞受賞者は3人に上ります。

まず1929年にノーベル文学賞受賞したリューベックの富裕商家に生まれたトーマス・マン。代表作「ブッテンブロック家の人々」の舞台となった「ブッテンブロックハウス」は、現在トーマスと兄のハインリヒの「マン兄弟記念館」として二人の資料が公開されています。

マン兄弟の記念館  画像Die LUEBECKER MUSEEN  
マン兄弟の記念館  画像Die LUEBECKER MUSEEN  

同じくリューベック生まれの元連邦首相ヴィリー・ブラントは、1971年ノーベル平和賞を受賞しました。彼を偲ぶ記念館ならびに博物館では、この政治家の人生を知る展示品やドイツの歴史を学ぶことができます。

最後に、生まれは現ポーランドのダンツィヒですが、長年リューベックに在住した小説家ギュンター・グラスです。死去されたというニュースが入った13日の夜、急遽番組変更となり、1999年ノーベル文学賞を受賞した作品「ブリキの太鼓」がARDで放映されました。記念館「ギュンター・グラス・ハウス」では、彼の文学作品だけでなく、絵画や彫刻作品も展示されています。

ギュンター・グラス・ハウス内部 画像Thorsten Wulff
ギュンター・グラス・ハウス内部 画像Thorsten Wulff

スイーツ・マルチパン

リューベックの名物といえば、マルチパン(Marzipan)です。砂糖とアーモンドを挽いて練り合わせたドイツを代表するこのマルチパンは、モーツァルトクーゲルのようなチョコ類をはじめ、ドイツのクリスマス伝統菓子「シュトレン」の生地にミックスしたり、動物や野菜などに造形し、ケーキのデコレーションに用いたりと、幅広く利用されています。お土産品としても好評です。

マルチパンは甘い魅力 画像niederegger GmbH & Co.KG  
マルチパンは甘い魅力 画像niederegger GmbH & Co.KG  

マルチパンがこの街を代表する商品となった背景は、1407年頃に起こったリューベックの飢饉に関係があるとか。食糧難の急場を凌ぐ為に、市政府は倉庫にあった大量のアーモンドを使って食べ物を作って欲しいとパン屋に呼びかけて出来上がったのがマルチパンだったそうです。

その後、1800年頃から主にケーキ屋がマルチパンを作るようになり、リューベック産のマルチパンは最高品質と認識されるようになりました。

市庁舎近くのニーダーエッガーは、マルチパンの店として全国的に有名です。このお店では、グループ対象のマルチパンつくり体験コースを提供しています。旧市街を散策した後で食するマルチパン入リケーキとコーヒーの味は忘れられない思い出になること間違いなしです。

どのケーキにしようか? 画像niederegger GmbH & Co.KG  
どのケーキにしようか? 画像niederegger GmbH & Co.KG  

協力・ドイツ観光局

在独ジャーナリスト

ビジネス、社会・医療・教育・書籍業界・文化や旅をテーマに欧州の情報を発信中。TV 番組制作や独市場調査のリサーチ・コーディネート、展覧会や都市計画視察の企画及び通訳を手がける。ドイツ文化事典共著(丸善出版)国際ジャーナリスト連盟会員

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