貸出金利の引き上げ交渉が進んでいない理由
銀行が預金獲得に向けて定期預金の金利を上げている。日本経済新聞社の集計で、少なくとも全国の地方銀行の4割を超える43行が引き上げたことが分かった(21日付日本経済新聞)。
三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)傘下の三菱UFJ銀行は11月1日に、5-10年の定期預金金利を大幅に引き上げると発表。6日から適用する。10年定期の金利は現行の0.002%から0.2%と2012年以来の高水準になる。
これに多くの銀行が追随した格好となった。長期金利が上昇し、いずれは金利を引き上げざるをえないとみていた矢先に三菱UFJ銀行が先導し、一斉に動いた格好となった。
預金金利の上昇は銀行側としては負担増となるが、預金流出を防ぐには少なくとも金利の横並びは必要となる。
金利が付かない状況では、銀行側の負担も大きくなり、預金が多少なら減少しても、それほど問題はなかった。ただしその分、ATMなどの手数料収入に頼らざるを得なかった。
しかし、金利が付くようになるとその状況が一変する。銀行にとり大きな収益源となる利ざやが発生するためである。つまり、貸出金利と預金金利の差額分が収益となる。
ただし今回の日経新聞の記事によると、地銀では預金金利の引き上げがむしろ収益の圧迫となっているようである。
2023年4~9月期に地銀(グループ連結ベース)が支払った預金利息は前年同期に比べて2.5倍に増えている一方、銀行の収入となる貸出金利息は14%増にとどまった(21日付日本経済新聞)。
貸出金利の引き上げ交渉は進んでいないとの声が出ているようであり、その一因に低金利環境が続き、営業現場では金利上昇を経験していない行員が多いとの指摘があった。
6%、7%、8%とかの金利を経験しているのはすでに引退したか、現場を離れた世代であり、現場にいるほとんどの世代は、たしかに金利上昇は経験していない。
メガバンクの貸出金利息は大きく増加していたが、これは米国などの海外部門の貸出金利息の増加が寄与していた。