「ET-KING」KLUTCHが活動自粛から復帰。今思うこと
大麻取締法違反の疑いで書類送検され、3月に不起訴処分となったヒップホップグループ「ET-KING」のKLUTCHさん(43)。これまで活動を自粛してきましたが、7月7日に行われる「ET-KING」のYouTube無料配信ライブからグループに戻り仕事復帰することになりました。自らを見つめ直して感じたこと。そして、メンバーとの関係。今の思いを丁寧に語りました。
世の中とのズレ
自粛期間はいわゆる“普通の生活”を心がけていました。
朝起きて、洗濯して、掃除して、ご飯作って、テレビを見て、また夜になったらご飯を作って。シンプルというか、そういう日々を積み重ねました。
何というのか、今まで非現実的な世界で生きてきた。それを改めて思ったんです。その中で、自分では気をつけているつもりでも、感覚が麻痺しているところもあったのかなと。今回のことで思いました。
若い頃にメジャーレーベルで音楽やらしてもらうようになり、周りの方からも「アウトプットする人間なんだからインプットしないとダメ」と言われてきました。いろいろな人に会ったり、いろいろな場所に出かけたり、とにかくアグレッシブに動いていないといけない感覚がありました。
その中で、何か自分でも気づかないうちに世の中とのズレみたいなものができていった。そんなところが今回の根っこにあるものなのかなと考えています。
普通の家からは出てこない
まず、起こったことに関しては実際に起こったことなので、しっかりと受け止めています。
不起訴になった時のコメントでも出させてもらったんですけど、自分の家にそういうものを持っている人間が出入りしていた。
いくら自分は後ろ暗いことがないように暮らしていたとしても、結果的にその人の持ち物が僕の家から出てきた。それは事実です。なので、すごく驚きはしましたけど、それ自体は本当にあったことなので受け止めるしかありません。
そして、極めてシンプルに考えて、普通の家からそんなものが出てくることはないです。いくら人の持ち物だろうが、どこか自分の生き方と世間にやっぱりズレができていた。自分の生き方を見つめ直せということなんだろうなと思いました。
僕も仕事で若い人が集まるクラブに関わっている中で、いろいろ思うところもありました。「一般の人からしたらあまり良いイメージを持っていないかもしれないけど、自分さえしっかりとしていたら大丈夫」。そんな思いを持ってやってきたんですけど、どこかで何かがズレて、何かが慣れてしまっていたのか。
実際に多くの人に迷惑がかかってしまったことですし、簡単に言うべきことではないですけど、今一度生き方を見つめ直すきっかけになったし、きっかけにするしかないと考えてもいます。
メンバーへの思い
自粛中、メンバーとも話をしました。ただ、アレコレ言われるとか、聞かれるというよりも「ちゃんとメシ食ってるか?」とかそういうことを尋ねられるだけでした。
なんでしょうね、こっちがメンバーの仕事を、生活を、人生を止めてしまっているのに、こちらにかけてくるのはそんな言葉ばかり。
メンバーには家族もいる。「あいつのところの子ども、今年から小学校やったよな」とか思う度に、グッとさらに心が落ち込む。もっとしんどくなる。もっとボロクソに言われた方が気が楽な部分もあったのかもしれませんけど、最後の最後はその周りの優しさでどん底から脱出できたというのもまた事実でした。
本当に、本当に簡単に言うことじゃないですけど、今回のことがあって確認できたことがたくさんありました。
メンバーのこと。スタッフのこと。家族のこと。そして、ファンの皆さんのこと。この思いをただ単に文章にして伝えるとか、そういうことよりも、歌にして伝える方がさらに伝わる。
それが改めて歌の力だとも思いますし、自分がその仕事をしている以上、そうやってまた進むしかないと思っています。
(撮影・中西正男)
■KLUTCH(クラッチ)
1978年9月15日生まれ。大阪府出身。大阪の福祉専門学校で出会った、いときんさん、TENNさんと99年に「ET-KING」を結成。その後、センコウ、BUCCI、DJ BOOBY、コシバKENが加入する。2005年からは大阪・大国町でメンバー全員が共同生活をしながら音楽活動を行い「ギフト」「愛しい人へ」などのヒット曲を生み出す。14年、「ET-KING」結成15周年記念全国ツアーの最終公演をもって、活動を一時休止。その間にTENNさんの急逝という悲報が届くが、15年7月から活動を再開する。17年にいときんさんの肺腺がんが発覚し、18年1月31日に38歳で逝去。昨年、BUCCIが脱退し4人での活動をスタートさせた。今年2月に大麻取締法違反(所持)の疑いで書類送検され不起訴処分に。今月7日午後8時から行われる「ET-KING」のYouTube無料配信ライブから仕事復帰する。