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藤井王座への挑戦権をつかむのはだれか――第72期王座戦本戦が佳境

古作登大阪商業大学アミューズメント産業研究所主任研究員
藤井聡太王座は昨年王座を奪取し、今期初の防衛戦を迎える(筆者撮影)

 藤井聡太王座(21)=七冠への挑戦者を決める第72期王座戦(日本経済新聞社主催)は本戦ベスト4が出そろい、準決勝は7月4日に羽生善治九段(53)-広瀬章人九段(37)戦、7月5日に鈴木大介九段(49)-永瀬拓矢九段(31)戦が東京都渋谷区「将棋会館」で行われる。

 データを基に挑戦権の行方を予想してみた。

永瀬九段わずかに優位か

 それぞれの対戦成績と最近10局の勝敗(未放映のテレビ対局を除く)は以下のとおり。

<羽生九段の対戦成績と最近10局>

対広瀬九段 22勝16敗

対鈴木九段 6勝3敗

対永瀬九段 8勝15敗

最近10局 7勝3敗

<広瀬九段の対戦成績と最近10局>

対羽生九段 16勝22敗

対鈴木九段 9勝3敗

対永瀬九段 4勝8敗

最近10局 8勝2敗

<鈴木九段の対戦成績と最近10局>

対羽生九段 3勝6敗

対広瀬九段 3勝9敗

対永瀬九段 0勝4敗

最近10局 4勝6敗

<永瀬九段の対戦成績と最近10局>

対羽生九段 15勝8敗

対広瀬九段 8勝4敗

対鈴木九段 4勝0敗

最近10局 6勝4敗

 過去の対戦成績では永瀬九段が全員に勝ち越しており、羽生九段は永瀬九段以外の2人に勝ち越している。

 直近10局の成績では広瀬九段が8勝2敗(6連勝中)と好調で、それに続くのが7勝3敗の羽生九段だ。

 データから判断すると絶対の本命はいないが、挑戦権争いは永瀬九段がわずかに優位で羽生九段、広瀬九段が僅差で続くと見る。

鈴木九段の振り飛車に注目

 今回のベスト4進出者の中では2006年の第77期棋聖戦五番勝負以来18年ぶりのタイトル挑戦を目指す鈴木九段が生粋の振り飛車党で、あとの3人は振り飛車も指せるが近年居飛車党として知られる。鈴木九段はデータ的には苦しいが、ここまで勝ち上がってきた勢いで波乱を巻き起こす可能性もあるだろう。

 戦型に関しては準決勝の羽生九段-広瀬九段戦は羽生九段先手なら角換わりか相掛かり、広瀬九段先手なら相掛かりか矢倉を志向すると思われるが、後手の羽生九段が横歩取りに誘導する可能性がかなりの確率でありそうだ。

 もう1局の鈴木九段-永瀬九段戦は先後にかかわらず鈴木九段の四間飛車か三間飛車、永瀬九段の持久戦志向が予想され、中終盤の長いねじり合いに進むと思われる。

 4人とも経験豊富なトップ棋士だけに熱戦を期待したい。

大阪商業大学アミューズメント産業研究所主任研究員

1963年生まれ。東京都出身。早稲田大学教育学部教育学科教育心理学専修卒業。1982年大学生の時に日本将棋連盟新進棋士奨励会に1級で入会、同期に羽生善治、森内俊之ら。三段まで進み、退会後毎日コミュニケーションズ(現・マイナビ)に入社、1996年~2002年「週刊将棋」編集長。のち囲碁書籍編集長、ネット事業課長を経て退職。NHK・BS2「囲碁・将棋ウィークリー」司会(1996年~1998年)。2008年から大阪商業大学アミューズメント産業研究所で囲碁・将棋を中心とした頭脳スポーツ、遊戯史研究に従事。大阪商業大学公共学部助教(2018年~)。趣味は将棋、囲碁、テニス、ゴルフ、スキューバダイビング。

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