バツ2の僕。自分の時間を大切にしたいので結婚は二度としたくありません(「スナック大宮」問答集34)
「スナック大宮」と称する読者交流飲み会を東京、愛知、京都のいずれかで毎月開催している。2011年の初秋から始めて、すでに110回を超えた。お客さん(読者)の主要層は30代40代の独身男女。毎回20人前後を迎えて一緒に楽しく飲んでいる。本連載「中年の星屑たち」を読んでくれている人も多く、賛否の意見を直接聞けておしゃべりできるのが嬉しい。
初対面の緊張がほぐれて酔いが回ると、仕事や人間関係について突っ込んだ話になることが多い。現代の日本社会を生きている社会人の肌からにじみ出たような生々しい質問もある。口下手な筆者は飲みの席で即答することはできない。この場でゆっくり考えて回答したい。
*****
「バツ2の僕。多趣味なので自分の時間がなくなるのは困ります。結婚は二度としたくありません」(40代前半の独身男性)
配偶者次第で、「自分の時間がなくなる」こともあれば、楽しい時間が増えることもある
結婚をすると自由に使える時間やお金が減ってしまう、と考えている男性は多い。既婚の同僚が延々と愚痴を言うのを聞くこともあるだろうし、冒頭の男性は過去2回の結婚生活で不自由を実感したのだろう。
一方で、結婚することでより健康に、より自由になる場合もある。趣味にしても、2人だからこそ可能なものも少なくない。筆者は様々な人との気楽な会食が趣味だが、独身一人暮らし時代は近所の人たちを招いての「家飲み」は考えられなかった。誘ったとしても警戒されて実現しなかっただろう。夫婦単位ならば引っ越しの挨拶時点で話が弾むこともある。筆者以上に飲食が好きな妻と結婚した現在では、同じマンションに住んでいる家庭との家飲みや物々交換を楽しんでいる。子どもがいればなおさら交流しやすいはずだ。
一緒に暮らして出かける過程で、配偶者の趣味に興味を持ち、自分もハマってしまう夫婦もいる。例えば好きな旅行先。現地に詳しい配偶者に案内してもらっているうちに、自分もその土地のファンになることは大いにありうるだろう。自分ひとりの関心や行動の範囲には限界がある。配偶者の知識や人脈に敬意を払いつつ上手に活用すれば、人生が倍になったような豊かさを感じるはずだ。
パートナー次第で、「自分の時間がなくなる」こともあれば、楽しい時間が大いに増えることもありうる。では、どのような結婚相手を選べば後者の道を歩めるのだろうか。頭の中で勝手な理想を膨らませても、不適切な相手を選んでしまう危険が増えるだけだと思う。
生まれ育った家庭を含めた今までの人生体験だけが頼りになる。自分はどんなときに朗らかでいられるのか。補完し合えるような他者はどんな性質や能力を持っているのか。冷静に確認してみよう。お互いの人生を豊かにできる相手の姿が見えてくるはずだ。
食いしん坊で甲斐性がない筆者の場合は、飲み食い好きの稼げる女性とでなければ共同生活は成り立たない、と最初の結婚と離婚で身にしみて理解した。苦しい体験で得た貴重な学びだと思っている。
すでに二度の結婚経験がある冒頭の男性は、筆者以上に「自分」がわかっているはずだ。ただし、「自分は結婚には向いていない」と決めつけるのは早計だと思う。結婚に向いていないのは、DVや依存症などの悪癖があったり共感力が明らかに欠けていたりする人だけだ。多趣味で優しげなあなたを面白がってくれて、一緒にいるとあなたも意外な発見ができるような相手は世の中に少なくない。