リアル書店とインターネット経由の出版物の売上動向をさぐる(2019年公開版)
かつて出版物はリアルの書店で購入するのがおおよその人にとっては唯一の購入ルートだったが、今ではコンビニやインターネット経由で調達することも当たり前の話となっている。また印刷物ではないが同じ本の類として、電子書籍のような電子出版物も世間一般に浸透しつつある。今回は日販による「出版物販売額の実態」最新版(2019年版)などの公開値を基に、インターネット経由とリアル書店経由における、広義の意味での出版物の購買額動向を確認する。
まずはインターネット経由とリアル書店経由それぞれにおける出版物購買額の定義を行う。
■インターネット経由の出版物購買額:
・インターネット経由で取引された紙媒体出版物の購買額
・電子出版(電子媒体の出版物。電子書籍、電子コミック、電子雑誌。学術ジャーナルは含まず)の購買額
■リアル書店経由の出版物購買額:
・実店舗書店での紙媒体出版物の購買額
・コンビニでの紙媒体出版物の購買額
・その他取次経由での紙媒体出版物の購買額
電子出版の購買額だが「出版物販売額の実態」では2013年度以降の値が確認できるため、それを適用。それ以前はインプレス総合研究所の「電子書籍ビジネス調査報告書」の値を適用する。
これらの計算が可能な2007年度以降について、経由別の購買動向を確認したのが次のグラフ。要は出版社直販を除いた、紙媒体も電子媒体も合わせた出版物全体の動向を示したものとなる。
インターネット経由の購買額は漸増しているが、リアル書店経由の購買額はそれ以上の減少を示しており、全体としては減少傾向にある。この構図は音楽市場におけるデジタルとアナログの市場動向にも似ており、非常に興味深い。また当然ながらインターネット経由の購買額における構成比は漸増しており、直近の2018年度では3割を超えるまでに至っている。出版社直販を除けば、出版物購買額の3割強がインターネット経由のものとなる。「3割強も」なのか「まだ3割強でしかない」のか、どちらが適切かとの判断は人それぞれだろう。
ちなみに経由別の購買額の前年度比を算出すると次の通りとなる。
リアル書店経由の購買額は一貫して減少。しかも下げ率は漸増しているように見える。一方でインターネット経由の購買額は常にプラス圏にあり、リーマンショックによるものと思われるプラス幅の縮小時期を除けば、10%以上の上げ幅を維持している。
紙媒体の出版物が無くなることはないし、リアル書店が地域にとって欠かせない存在であることも言うまでも無いものの、現実として市場規模の縮小が生じているのは事実ではある。リアル書店経由とインターネット経由の比率が逆転するような時期になれば、出版物業界そのものも大きな変化が生じていることだろう。それはもう数年ぐらい先の話でしかないのかもしれない。
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(C)日販営業推進室出版流通学院「出版物販売額の実態2019」
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(注)グラフ中の「ppt」とは%ポイントを意味します。
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