女性も若者もほとんどいない地方議会。成長戦略のためには女性と若者を活用しろ!
都議会などはまだマシ。11.4%しかいない女性議員
全国には、議員や首長など、37,302人の地方政治家がいる(2011.4現在)。この内、42.5%にあたる15,841人が、2011年に行われた前回の統一地方選挙で選ばれた。来年4月にはまた、この4年に1度の地方政治家を一斉に選ぶ統一地方選挙が行われる。
女性軽視との世論などで注目を集めた東京都議会だが、19.7%にあたる127人中25人が女性議員と、実は全国の都道府県議会平均の8.7%に比べれば、2倍以上マシだという事が分かる。逆に言えば、他の地方議会などでは、都議会以上に悲惨な状況だという事になる。
全国には様々なレベルで、女性の地方議員が3,925人いる。こう聞くと結構いるなという気もするかもしれないが、全体の数の34,382人からすれば、わずか11.4%にしか過ぎない。
これを見て、多くの人が「議員多過ぎ」とも思うだろうが、この事については、またの機会に触れる事にしたい。
図表1: 女性議員割合の推移
女性国会議員の割合は、先進国中最低
世界各国の議会でつくる「列国議会同盟(IPU)」という組織がある。そのIPUが189ヵ国での下院議会における女性議員の割合を調べた結果、日本は480人中39人の8.1%で127位と先進国最低だった。
一方で、安倍政権は2020年までに指導的立場にいる女性を30%にと掲げている。政治の場こそ、他の規範になるようにとも思うが、実態は世界から大きく遅れをとっていると言える。
冒頭に書いたように、こうした状況は、決して国政に限った事ではない。
地方議会の女性議員の割合を見ていくと、市議会議員では12.1%、町議会議員にいたっては7.8%しかいない。東京23区の特別区議会議員でこそ24.9%となっているが、それでも全体の1/4だ。
短期スパンで見るとあまり変動がないが、これでも女性の比率はだいぶマシになってきた方だ。
4年に1度の統一地方選挙における女性議員の比率の推移を見ると、この20年で急激に増えている事が分かる。
最も増えている特別区議からその推移を見ていこう。
1951年には、特別区議会においても4.1%の39人しか女性議員はいなかった。それが、20年後の1971年には1.5倍の6.4%、さらに20年後の1991年には約3倍の11.7%、さらに20年後の2011年には4倍以上の26.8%まで増えている。
こうした状況は、決して特別区だけの事ではなく、政令指定都市儀も1951年の3.5%が、2011年には、5倍近い16.5%に、一般市の市議については、1951年の1.3%が、2011年には10倍以上の14.6%に、町村議にいたっては、1951年の0.5%が、2011年には20倍近い9.3%まで女性議員が増えているのだ。
政令指定都市議が2007年の18.2%から2011年で16.5%に実感減っているなど、2007年の知事と市長などでも一時的に若干減る事もあるが、その他は、一貫して増加傾向にあることが分かる。
この事から考えても、どれだけ女性政治家を増やす事ができるかも、2015年の次の統一地方選挙における重要な要素といえる。
図表2: 統一地方選挙における女性当選者率の推移
女性議員よりもさらに少ない若手議員
女性議員の比率とともに、もう一つ考えたいのが、若手議員の比率だ。
若者の政治参加の必要性については言われて久しいが、政治現場への若者の参画はまだまだ参入が難しいのが現状だ。統一地方選挙における当選者に占める割合を見ると、最新の2011年の結果で、最も多い特別区議でさえ30代以下の議員は19.1%と、女性議員よりもさらに少ない。
次いで多いのは、政令指定都市の16.2%、県議の10.4%となっており、市議にいたっては8.7%しかいない。
ただ、こうした若手地方議員たちも少しずつは増えている。
筆者自身も2004年の統一地方選挙の際、26歳で最年少当選したが、この2004年の統一地方選挙の際には、全当選者に占める30代以下の割合は、わずか3.9%しかいなかった。それが、2007年には6.3%、2011年には8.1%と、回を重ねるごとに増え、2倍以上になっている。
2011年の統一地方選挙では30代の知事も誕生し、30代以下の市長も2007年の1.1%から5.7%へと一気に5倍以上になった。
図表3: 統一地方選挙における20代30代当選者率の推移
20代議員など、議員100人に1人しかいない
しかし、こうした数字も、20代で考えると、さらに一気に少なくなる。
統一地方選挙の全当選者に占める20代の割合は、2004年に0.6%、2007年に0.9%と増加傾向にはあるが、直近の2011年でもたったの1.0%にしか過ぎない。
自治体や定数が減少している事による影響も大きいが、実数でみると179人、162人、159人と20代の政治家はむしろ減っているのだ。
影響が大きいのは、町会議員の減少だが、最も若手議員の割合の多い特別区議でも2004年に23人だったものが、2007年には25人になったものが、2011年には22人へと減少しているのだ。特別区議については、割合においてでさえ、2.8%から3.0%、2.7%と減少している。
図表4: 統一地方選挙における20代当選者率の推移
政治家の圧倒的多数は、男性高齢者が占める
2011年の統一地方選挙では、30代以下の若手地方政治家は1279人当選した。20代政治家については159人が当選した。
しかし、統一地方選挙における区分ごとの全当選者の世代別割合を見てみると、その多くを60代以上が占めている事が分かる。
知事50.0%、政令指定都市長40.0%、市長52.3%、町村長67.8%と自治体のトップである首長の年齢は、60代以上がその多くを占めている。とくに顕著なのは、特別区長76.9%だ。
対照的に30代以下の首長は、知事が8.3%、市長5.7%、政令指定都市長と、特別区長、町村長にいたっては1人もいない。
若手議員の割合についても、ここまで顕著ではないものの概ね同様の傾向だ。
30代以下の県議は10.4%、政令指定都市議16.2%、市議8.7%、特別区議19.1%、町村儀にいたっては2.4%しかいない。
60代以上の議員については、町村議は62.6%、市議は42.6%と半数前後をも60代以上が占める。県議になると37.1%と比較的少なく、政令指定都市議は29.8%、特別区議は22.5%と、都市部では比較的高齢議員が少ない事も分かる。
こうした部分にも地域性が出ている事が分かる。
図表5: 統一地方選挙における当選者の世代別割合
統一地方選に向け、自治体ごとの女性議員、若手議員の調査を
筆者は昨年、地方選挙における選挙権・被選挙権年齢を自治体が独自に設定できる「若者の政治参加を通じた地域活性化に係る特区」を提案し、国家戦略特区ワーキンググループによるヒアリングでも高い評価を得た。残念ながら実現までにはまだいたっていないが、政治や行政など公共分野における若者の活用もまた、これからの社会にとっては重要な要素になると考える。
安倍政権の女性の活用とともに、若者の参画についても成長戦略として真剣に考えていく必要がある。
今回は、統一地方選挙におけるデータを元に書いてきたが、こうした女性政治家や若手政治家の割合について、統一地方選挙までに、各地方議会の実態を調査できないかと思っている。データを元に公表しながら、2015年の統一地方選挙においては、こうした女性議員や若手議員を増やして行く運動も仕掛けて行けないかと考えている。
高橋亮平
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中央大学特任准教授
特定非営利活動法人「万年野党」事務局長
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特定非営利活動法人Rights代表理事
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