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「(名球会の)グリーンジャケットが欲しい!そうなれば…」(デニス・サファテ単独インタビューその2)

菊地慶剛スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師
6年ぶりにソフトバンクに復帰した川崎選手とも意気投合したデニス・サファテ投手

5月3日時点で両リーグトップタイの10セーブを挙げるサファテ投手。通算記録も185セーブまで伸ばして、このまま順調にセーブを積み重ねていけば、早ければ来年にも名球会入りの条件である250セーブ達成の可能性は十分にある。

──このままいけば名球会入りの可能性があるが

「もちろん知っているよ。(名球会入りした選手に与えられる)グリーンジャケットが欲しいと思っている。それも自分にとって個人的な目標の一つだ。このまま体調を維持し、今のような投球ができれば、まずは目前に迫っている200セーブを達成できるだろうし、あと1、2年現在の状態を続けることができれば、250セーブに届くと思う。

ただ250セーブに届かなかったとしても、220、230セーブでも十分によくやったと振り返ることができる成績だと思う。もちろん自分の投球ができている限りは、このチームでクローザーをやり続けたい。

このチームで選手、監督、コーチ、スタッフ、フロントとも最高の関係を築けている。皆が自分に敬意を抱いてくれているように、自分も皆を畏敬している。これだけやり甲斐のあるチームなので、今は少しでも長くこのチームでプレーしたいと思っている。だから2年前にメジャー契約でアメリカに戻れる選択肢がありながらも、このチームに残ることを選んだんだ。

来年までの契約が終了しても、またホークスと再契約したいと思っている。そしてその契約が自分の野球人生で最後の契約になるだろう」

──もし名球会に入れば外国人選手として史上2人目になる

「もう1人はアレックス・ラミレスだよね?自分にとっては本当にスペシャルなことだ。名球会に入ったら(メンバーの人たちと)一緒にゴルフをしたいよ。ただ自分が引退してアメリカに戻ることになったとしても、間違いなく自分の心は日本に向いているだろう。

(名球会に入れば)頻繁(ひんぱん)に日本に戻ってこられる。自分の3人の娘たちも彼女らが育った場所を見たいだろうし、自分も友人たちにも会えることもできる。40代、50代になってもそんなことができれば最高だね」

──名球会に入らなくともすでに日本球界史に名を残す存在になっている

「もちろんとても光栄なことだと思っている。自分も小さい頃にミッキー・マントルなどに憧れながら育ってきた。それと同じようにホークス・ファンの人たちが30年後に、自分がここでどんなプレーをし、コミュニティに対してどんなことをして、どんな人間だったのかを憶えてもらえる存在になれたら嬉しい。

今の自分はそういう人物になれるよう、チームや家族ことを考えながら日々過ごしている。将来的に自分のイメージが尊敬されるようなものになってくれればと思う」

──アメリカとは異文化の日本で長年プレーするのは簡単ではない。どのように対処してきたのか?

「どんなことであろうとも、即座に受け入れるしかない。外国人選手がうまくいかない場合、大抵は選手たちが日本でのプレースタイルやコンセプトを変えようと考えていることだと思う。それは不可能なことだし、間違ったことだ。ここは日本であり、アメリカでもメジャーでもない。それを受け入れなければならない。もし受け入れなければ、確実に苦労することになるだけだ。

そうなれば色々なことで問題を抱え込んでしまうし、ストレスも溜まるし、いいプレーができなくなってしまう。そしてどんどん悪い方向に進み、『あれが好きではない』、『これも嫌だ』とネガティブになり、日本での経験をまったく無駄にしてしまう。

我々は外国人として、安全でクリーンで素晴らしい人、文化がある日本という国で野球ができる経験を得ている。もちろん給料をもらっているからというのが一番の理由だが、ここでのすべての体験を心の底から楽しみ、味わうべきなんだ。そこで成功しようが、ひどい成績で1年で解雇されようが、それが外国で野球をするということだ。

とにかく自分にとってはこの経験こそが何事にも換えがたいものであり、そして自分は今も日本にいるんだ。また娘たちにとっても長年日本で暮らせることは素晴らしい経験になっている。

そういったことを受け入れられなかった選手たちは、結局後で後悔することになるだろう。これまで『日本が嫌いだ』とか『あれが嫌だ』とか不平を言っている選手たちの成績をチェックしてごらん。彼らは成績が残せなかったから、嫌いになったんだ。成績を残せ成功していたら、すべてがいい方向に向いていくもの。だがもし成績が残せず上手くいかない時でも、周りのせいにしてはいけない。

もちろん(外国人選手にとって)疑問に感じることはある。だがこちらがどう感じようが、それがこちらのやり方なんだ。なぜ(遠征先で)ユニフォーム姿のままホテルに戻らなければならないのか?だが受け入れるしかないんだ。日本ではずっと素晴らしい通訳がついてくれているが、どんな場面であっても『なぜなんだ?』と聞き返したことはない。すべてを受け入れてきた」

──外国人選手にとって精神的タフネスとパーソナリティが重要になってくる

「そうだね。ただ個人的にはパーソナリティが最も大切な要素だと思う。自分はメキシコのウィンターリーグで3年間参加したことが、アメリカ以外でプレーした唯一の経験だった。もちろん日本に来るのは、まったく違うものだ。言葉の障壁はあるし、自分は選手たちを知らないし、選手たちも自分のことを知らないからね。

でも今では他のチームの選手たちが自分のところに挨拶にしに来てくれる。それが野球選手としてお互いを尊敬してくれているからだ。だから自分はここで楽しむことができているし、まさに他の選手が自分に対して抱いてくれているイメージこそが自分が望んでいるものだ。

とにかく自分は(日本で)最高の人間関係を築きたいんだ。今ではユイト・モリは親友の1人だし、オフも含め1年を通して連絡を取り合っているくらいだ。たぶん10年も経てば、この日本での経験が間違いなく素晴らしいものだったと振り返ることだろう」

日本をこよなく愛するサファテ投手。本人も希望通り、引退後も日本との関係が続くことを祈るばかりだ。

スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師

1993年から米国を拠点にライター活動を開始。95年の野茂投手のドジャース入りで本格的なスポーツ取材を始め、20年以上に渡り米国の4大プロスポーツをはじめ様々な競技のスポーツ取材を経験する。また取材を通じて多くの一流アスリートと交流しながらスポーツが持つ魅力、可能性を認識し、社会におけるスポーツが果たすべき役割を研究テーマにする。2017年から日本に拠点を移し取材活動を続ける傍ら、非常勤講師として近畿大学で教壇に立ち大学アスリートを対象にスポーツについて論じる。在米中は取材や個人旅行で全50州に足を運び、各地事情にも精通している。

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