野菜価格の乱高下~気候変動と指定野菜の制度 #専門家のまとめ
近年、野菜価格が乱高下しておりニュースで取り上げられることが多くなっています。最近でも、タマネギやニンジンの価格が値上がりする一方で、春先に価格が暴騰していたキャベツの価格が大幅に値下がりしていることが話題になっていました。その背景には何があるのか、野菜生産の制度はどうなっているのか、近年の傾向や政策的なつながりについてまとめます。
ココがポイント
▼タマネギ、ニンジン、ジャガイモの価格高騰が食卓に影響を与えています。飲食店を含めて食の広い現場にしわ寄せが及んでいます。
▼レタス等の野菜価格の低下やトウモロコシが豊作の地域もあります。いずれも野菜の安定生産が揺らいでいると捉えることもできます。
▼価格が安定してきた野菜であるタマネギ価格も高騰して食卓に影響を与えています。
▼暴騰していたキャベツ価格も大幅に値下がりし、市場に大量に入荷している状況にあります。
エキスパートの補足・見解
野菜価格高騰の背景にあるのは、気候変動による野菜生産の不安定化です。日本では1960年代、都市化が急速に進んだ中で野菜の供給が不足しました。物価の高騰の原因が野菜である、と言われたほど野菜全体の価格が高騰した時期もあったのです。その中で国が取り組んだのが指定野菜制度の導入でした。この制度の目的は、消費量が多い14種類の野菜について値段とともに、生産地域を指定し日本中で産地リレーして供給を安定させることにありました(※)。
最近の野菜価格の乱高下を見ていると、この指定産地制度が気候変動に対応しきれず、過剰と不足を繰り返す傾向が出てきていると感じます。いずれにせよ農業生産を維持していくためには、気候変動時代において生産者が持続できるような価格と仕組みを検討していく必要があると言えるでしょう。
※現在の指定野菜は、キャベツ、キュウリ、里芋、大根、玉ねぎ、トマト、ナス、ニンジン、ネギ、白菜、馬鈴薯、ピーマン、ホウレン草、レタスの14品目。2026年度からブロッコリーが追加される予定。指定野菜は、1966年に野菜生産出荷安定法によって設定された。