「眠れる巨人」へ巨額の追加投資とロンドン進出。これはグレッグ・ノーマンの「逆襲」「奇襲」か!?
これはグレッグ・ノーマンによる「逆襲」、あるいは「奇襲」と呼ぶべきなのかもしれない。
ノーマンCEO率いるリブ・ゴルフ・インベストメンツは、すでに200ミリオンドル(2億ドル=約230億円)をアジアツアーに投入しているが、さらに100ミリオンドル(1億ドル=約115億円)を追加投資することを発表した。
さらにリブ・ゴルフ・インベストメンツは、アジアツアーの今季日程の中に10試合にわたるインターナショナル・シリーズを創設したことを発表。そのうちの1試合の舞台となるゴルフ場は、欧州ツアー本部にほど近い英国ロンドンのセンチュリオン・クラブだというから驚きである。
今週は、米欧ゴルフ界や世界で物議を醸してきた「PIFサウジ・インターナショナル」が、いよいよ開幕されようとしている。リブ・ゴルフ・インベストメンツによる投資に加え、政府系投資ファンドのパブリック・インベストメント・ファンド(PIF)がタイトル・スポンサーに付いたことで、同大会は史上最高の賞金総額500万ドルと高額のアピアランスフィーを掲げ、世界のトッププレーヤーたちを集結させている。
世界ランキングのトップ20のうち6名が今週は米ツアー大会を欠場してサウジ・インターナショナルに出場。ダスティン・ジョンソンもブライソン・デシャンボーもブルックス・ケプカも、こぞって彼の地で戦おうとしている。
そもそもサウジ・インターナショナルは欧州ツアーとアジアツアーの共催大会だった。だが、欧州ツアーが米ツアーと戦略的提携を結んだことで、欧州ツアーから切り離された経緯がある。
そして、そもそもノーマンは、かつてPGAツアーとは別のワールドツアーなる新ツアー構想を提唱し、あと少しで実現するというところで、当時のPGAツアー会長によって阻止された経緯がある。
そのことを恨みに思っているのかどうかは定かではないが、自分たちを切り離した欧州ツアーのヘッドクォーター(本部)の目と鼻の先で、自分たちが立ち上げた新シリーズの新大会を開催しようというのだから、これはノーマン&アジアツアーによる欧州ツアーと世界のゴルフ界への「逆襲」、いや「奇襲」と言っても過言ではない。
新規で創設されるインターナショナル・シリーズの第1戦は3月にタイで開催予定。そして6月の第2戦が英国ロンドンでの開催。第3戦以降は韓国、ベトナム、インドネシア、中東、中国、シンガポール、香港へと進んでいく見込みだそうだが、コロナ禍による影響もあり、日時や開催コースの詳細の発表は後日になるという。
「これは始まりにすぎない」とは、ノーマンがCEOに就任したときから、何度も口にしている決まり文句だが、今回のノーマンの語調からは、これまで以上の強い自信が伝わってくる。
「エキサイティングなニュー・ジャーニーの始まりだ。インターナショナル・シリーズに地理的国境はない。このシリーズはアジアツアーの一部ではあるが、アジア地域だけのものではない。そのことを世界中の誰もが理解することが大切だ。健やかで気高い戦いの場(=ツアーや大会)は、グローバルに展開されて然るべきだ」
そう語気を強めたノーマンは、アジアツアーのことを「眠れる巨人」と表し、「ゴルフというゲームがこれから行き着くべき未来を信じている」と自信を漲らせている。
アジアツアーが「眠れる巨人」だとすれば、今、世界一のツアーとして輝いているPGAツアーは「アクティブな巨人」とでも呼ぶべきなのだろうか。
水面下に眠る巨人による輝く巨人への「逆襲」「奇襲」。ゴルフ界未曾有の戦いが、いよいよ世界規模、地球規模で始まりつつある。