18卒就活いよいよ開始~楽勝感と不安感のあいだで
「公的」な広報解禁、選考解禁というスケジュール
2018年卒業予定者(以下、2018卒)の就活は、明日3月1日に「一応」始まります。
「一応」というのは、公的なスケジュールとそうではないスケジュールが混在しているからです。
「公的」とは経団連が定めたスケジュールで、これは3月1日が広報解禁、6月1日が選考解禁です。
広報解禁は、会社説明会などの開始時期。
選考解禁は、面接など選考の開始時期をそれぞれ意味します。
明日、3月1日は広報解禁日であり、そのため、全国の主要都市で大規模な合同説明会が開催されます(3月2日以降もイベント会場や規模の大学内で開催)。
「公的」なスケジュールは誰も守らない
さて、この経団連のスケジュールですが、実は法的な拘束力が全くありません。
日本は法治国家ですから、大体のことは法律で定められています。法律で決まっている、ということは罰則規定もあるわけです。
ところが、この就活スケジュールは、経団連という経済団体が決めたにすぎません。
そのため、経団連に加盟していない企業がスケジュールを守らなくても特に処罰されるわけではないのです。
実際、楽天の三木谷浩史会長が代表幹事をしている新経済連盟は、採用時期(就活時期)について、各社判断とする、とのコメントをすでに2013年時点で表明、現在に至っています。
経団連加盟の企業であっても、陰でこっそり選考を進める、という話はいくらでもあります。
インターンが実質的な説明会・選考に
経団連のスケジュールを守らない、となると、どうなっているのでしょうか。
実は、3月1日の広報解禁より前に、説明会ないし選考を進めるのです。その手段の一つが、インターンシップ(通称・インターン)です。
本来のインターンは、一定期間、学生が企業に出向き、仕事を体験する、就業体験を意味します。
日本でも、これまた「一応」、インターンは経団連によって09年に「5日間以上の期間を持って実施され、学生を企業の職場に受け入れるものであること」「採用選考活動と関係ない旨をホームページなどで宣言」することなどと決められています。
しかし、経団連は法的拘束力をもっているわけではありません(2回目)。
実際には、経団連加盟企業も含めて負担の軽い1日インターンを実施する企業が大半を占めています。
1日インターンということは会社説明会・セミナーと大差ありません。
そして、1月から2月にかけては、選考の導入部として利用する企業も出ています。
つまり、インターン実施後に、参加学生にのみ声をかけて選考に誘導するのです。
実質的には、経団連のスケジュールよりも早い5月以前に内定(もしくは内定に近い状態)を出す企業は例年以上に増える見込みです。
人材サービス会社・アイデムの「人と仕事研究所」の「2018年卒新卒採用に関する企業調査」(2017年2月1日調査)によると、せわしない動きが明らかです。
説明会開始: 53.7%の企業が3月以前に開始
応募受付: 52.1%の企業が3月以前に開始(前年比20.1ポイント増)
面接選考:66.5%の企業が6月前に開始(前年比10.3ポイント増)。
内定出し始め:57.6%の企業が6月より前に開始(前年比17.7ポイント増)。
経団連の決めたスケジュールを「一応」とするあたり、ご理解いただけたでしょうか。
売り手市場で学生は楽勝感が先行
ここまでスケジュールが前倒しで進んでいるのは、学生有利の売り手市場だからです。
先ほどのアイデム調査でも、採用予定者数は2017卒に比べて、
「増えた」 36.7%(前年13.7ポイント増) 「減った」15.3% 「変わらない」47.9%
となっています。
ここまで売り手市場が進むと、学生には楽勝、との思いが強まっています。
学生が楽勝との思いを持つのは、先輩学生も影響しています。先輩学生から「今年の就活はそこまで苦労しなかった」との話を聞けば、気の一つも緩むのも無理ありません。
それから、さして優秀でない、と見ていた学生が内定を次々と取れており、「だったら自分も大丈夫だろう」と考えるわけです。
不安感だらけの学生も実は多数
一方、楽勝感どころか、不安感を抱える学生も少なからずいます。
どの大学にも満遍なくいるのですが、
関西の難関私大の女子学生は、
「就活が不安で仕方ない。実は一般職か、派遣社員でもいい、と考えて準備を進めていました」
話を聞くと、派遣社員どころか、総合職でバリバリ活躍できそうな方です。そう伝えると、
「先輩や周囲の友人が楽勝、と言っているのはよく聞きます。でも、自分がそうならなかったら、と思うと不安で不安で」
他にこんな意見も。
「勉強もしてきたし、アルバイトもしてきた。ただ、そういう話が普通すぎて伝わらないのでは、と思うと、不安」(首都圏・国立大・男子)
「ネットでは、留学とか体育会系とか、すごい経歴の話しか出てこない。普通のアルバイトしかしていない身としてはそれで通用するのか、色々と考えてしまう」(九州・国立大・女子)
普通が強い
学生の不安感を分析していくと、
「普通の自分が受け入れられるかわからない」
というところに集約されます。
何をもって普通、とするかは意見の分かれるところです。
企業が言う「普通」が実はハイレベル、ということもありますし。
ただ、大半の企業では「普通」とは大半が普通です。
留学経験とか体育会系ですごい成績を収めた、とか、そんな学生は日本全国でもごく少数しかいません。そういうすごい学生のみを対象とする企業もごく少数です。
大半は、普通の学生が普通に入社していきます。
では、就活の成否を分けるカギは何か。
それは「普通」の説明と、可能性です。
同じ普通のコンビニバイト(ありきたり批判の典型例)でも、どうでしょうか。
・「普通です」で終わる
・「レジ打ち、品出し、商品発注が主な業務です」など業務内容の説明などで終わっている
・無理やり「店長代理をやっていた」などと盛る
・「商品の発注と陳列は任せた、と言われたので工夫してみた」など、学生本人の行動や意識したことなどを書く
同じ、普通のアルバイトでも随分違うはず。
学生本人が「普通」と思っていることでも、学生の行動履歴・意識付けから企業側は、可能性を判断していきます。
結果的には、普通の学生が普通に内定を取れていくのです。
ですから、学生には、自身の経歴が普通、ということをネガティブに思わず就活に臨めば、就活がうまく進むのではないでしょうか。(石渡嶺司)