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【全仏オープンテニス】車いすの部が8日開幕、世界一過酷な赤土を制するのは誰か!?

荒木美晴フリーランスライター
ローランギャロスで6度優勝している国枝。1年ぶりのクレーでどんなプレーを見せるか(写真:アフロ)

錦織圭の活躍で例年以上の盛り上がりを見せているテニスの全仏オープン。大会は終盤に差し掛かっているが、実は8日から10日の3日間にわたって、車いすの部が開催される。

車いすテニスのグランドスラムとは、一般と同じ全豪、全仏、ウィンブルドン、全米オープンの4大大会を指し、同じ会場を使って行われる。今年の全仏の車いすの部は、男子に注目したい。とくに話題となるのは、国枝慎吾(ユニクロ)のエントリーだろう。

過去に4連覇を含む6度の優勝を果たしている国枝は、実は今年はワイルドカードで出場する。グランドスラムの車いすの部は男女とも8選手によるトーナメントで行われる。その「8」の内訳は、世界ランキング7位までと、ワイルドカードの一枠だ。国枝は昨年4月に右ひじを手術し、リオパラリンピック以降は痛みが再発して休養していたため、世界ランキングは10位台まで落ちていたが、これまでの実績が買われて、再びローランギャロスに降り立つことになった。

「全仏オープンのワイルドカード」のニュースは、5月のジャパンオープン(福岡)出場中に国枝の耳に飛び込んできた。完全復調を夏ごろに定める彼の復帰プランにおいては、現段階の仕上がり具合を探る絶好の機会となるだろう。

全仏のクレーコートは球速が遅くなり、バウンド後はボールが高く弾む。車いすを利用するため打点が低くなる彼らにとっては、よりボールの処理が難しくなる。さらに車いすの場合は、動いた分だけ車輪の跡がコートに残り、その轍にタイヤを取られることもあるなど、技術的にも精神的にもタフさが求められる。

クレーコートでは全体的にスピードを活かしたチェアワークの良さが失われる面もあるが、コートを広く使うことが求められるため、横だけでなく前を使った戦術も必要だ。「そのあたりは、わりと得意なほう」と国枝。ひじに負担のかからないフォームに改造している真っ最中なだけに、クレーでどこまで自身の納得いくプレーができるのかは気に留めておく必要がありそうだが、国枝は「みんなスピン量が多くなるので、そのなかで打ち切れるかどうか。それも含めて楽しみです」と話す。

ライバルに目を移すと、昨年優勝の23歳、グスタボ・フェルナンデス(アルゼンチン)に連覇の期待がかかる。クレーコートが多い南米出身らしくこのコートを得意とするフェルナンデスが全仏を制したのは昨年が初めてだったが、それまでも力強いストロークでシード選手を苦しめるなど輝きを放ってきた。今年は強打にさらに磨きをかけており、スケールアップした姿を披露できるか注目だ。46歳で世界3位のステファン・ウデ(フランス)も優勝候補のひとり。最高時速160キロともいわれるサーブと、彼の片ひざ立ちをするように座るオリジナルの車いすから繰り出す高い打点のショットは、このクレーコートでより威力を増す。また、世界1位のゴードン・リード(イギリス)、2位のヨアキム・ジェラード(ベルギー)はまだ全仏オープンのタイトルは獲っておらず、「今年こそは」と並々ならぬ気合いを入れてくるはずだ。

男子は世界トップの実力が拮抗していることからも、混戦が予想される。「魔物がいる」ともいわれるローランギャロスを制するのは、経験豊富なベテラン勢か、それとも勢いに乗る若手選手か。そのなかで復帰の国枝は再び存在感を示せるか――。今年の赤土でどんなドラマが繰り広げられるのか、目が離せない。

フリーランスライター

1998年長野パラリンピックでアイススレッジホッケーを観戦。その迫力とパワーに圧倒され、スポーツとしての障がい者スポーツのトリコに。この世界の魅力を伝えるべく、OLからライターへ転身し、障がい者スポーツの現場に通う日々を送る。国内外における障がい者スポーツの認知度向上と発展を願い、2008年に障がい者スポーツ専門サイト「MA SPORTS」を設立。『Sportsnavi』『web Sportiva』などスポーツ系メディアにも寄稿している。パラリンピックは2000年のシドニー、ソルトレークシティ、アテネ、トリノ、北京、バンクーバー、ロンドン、ソチ、リオ大会を取材。MA SPORTS代表。

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