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対照的だった稲見萌寧と畑岡奈紗 「メダル」への想いに秘められた真意を探る

舩越園子ゴルフジャーナリスト/武蔵丘短期大学・客員教授
(写真:ロイター/アフロ)

 五輪女子ゴルフの2日目、通算1アンダー、16位タイからスタートした稲見萌寧が、スコアを6つ伸ばす快進撃を見せ、6位タイへ順位を上げた。

【笑顔の稲見】

 今日の稲見は白いパンツ姿。「直射日光が足に当たらないように」という暑さ対策も手伝って、爽やかな表情でティオフすると、2番でバーディーを先行させ、5番でバーディー、6番ではグリーン奥からチップイン・イーグルを奪い、8番、12番でもバーディーを奪って単独6位まで上昇した。

 バンカーにつかまった14番で唯一のボギーを喫したが、最終ホールの18番では第2打で見事にピン2.5メートルを捉え、バーディーで締め括って、通算7アンダー、6位タイで2日目を終えた。

 持ち前のキレのいいアイアンショットは「前半、それなりにという感じ」と大満足ではない様子だったが、「イーグル取れたりしたので全体的に良かったかな。悪いショットは少なくて、昨日よりパットが入ってくれた。ティも前に出ていたので、狙える場所が増えた」と笑顔で振り返った。

 単独首位に立った世界ナンバー1のネリー・コルダ(米国)は、この日、9つスコアを伸ばし、通算13アンダーと群を抜いている。だが、コルダと稲見の6打の差は挽回可能な圏内であり、メダル獲得の可能性は十分にある。

 しかし、稲見自身は「メダルはあんまり気にしていなくて、自分のスコアをちょっとでも伸ばせたらいいなというだけ。最終的な結果(論)は、あんまり気にしていない」。

 初日はトップスタートのオナー役を務めたが、「緊張はしなかったです。楽しく回れた」と笑顔を見せた。2日目もマイペースを保ち、「ずっと上位で戦えたらいいな」と、落ち着いた雰囲気で淡々と語った。

【悔しそうだった畑岡】

一方、稲見と同じ通算1アンダー、16位タイから出た畑岡奈紗は、スコアを3つしか伸ばせず、通算4アンダー、11位タイで2日目を終えた。

 通常の大会なら、2日目を終えて10位前後は好位置だが、単独首位のコルダがスコアを9つ伸ばして通算13アンダーへ、2位グループも通算9アンダーへと上昇した中で、「(スコアの伸びが)3つで終わってしまったのは残念。本来より1割ぐらい飛んでないし、思った球筋に打ててない。(ピンに付いても)難しいラインで、なかなか決めきれなかった」と悔しそうだった。

 「緊張した」という初日は1番の第1打を大きく左に曲げボギー発進。5バーディーを奪った一方で、10番ではさらなるボギー、12番ではダブルボギーを叩くなど、スコアの出入りは少々激しかった。2日目は4バーディー、1ボギーで、スコアの波は格段に抑えられたが、逆にスコアの伸びも3打に留まり、首位との差は9打へ広がった。

【追いかければ、、、】

 メダル獲得の可能性ににじり寄った稲見は、そもそも「メダルはあんまり気にしていない」と言い、「メダルを獲りたい気持ちは強い」と語っていた畑岡は逆に「上位との差は開いてますし、なかなか難しいけど、、、、」と唇を噛み締めた対比が印象的だった。

 金銀銅のメダルは、追いかければ追いかけるほど遠のいていく陽炎のような存在という一面は確かにある。メンタルなスポーツであるゴルフでは「陽炎現象」はしばしば起こる。

 しかし、同時にゴルフは、必死に追いかける選手の努力と想いの双方が報われるスポーツでもあり、追いかけ続けたからこそ目標や夢に近づき、報われるという現象も、しばしば見られる。

 「あと2日あると信じて、うまく伸ばしていければいいなと思います」と前を向いた畑岡の努力と想いは、何かの形できっと報われると私も信じたい。

 そして稲見の「メダルは気にしていない」という言葉の奥底に、何か真意が秘められているような気がしている。

 「メダルは気にしていない」は、「今は別のことを気にしていたい」という意味なのかもしれず、それは彼女なりのメンタルコントロールなのかもしれないとも思う。

IGF(国際ゴルフ連盟)の発表によると、明日の金曜日に第3ラウンドを、台風の影響が心配される土曜日に最終ラウンドをできる限り進行させ、終了できなかった場合は日曜日へ持ち越される予定だが、日曜日に72ホールが終了できない場合は、その時点で54ホール大会へ短縮される可能性もある。

 まだまだ何が起こるかわからない。すべての戦いが終わったとき、畑岡と稲見がどこに立っているのかを、しっかりと見守っていきたい。

【この記事は、Yahoo!ニュース個人編集部とオーサーが内容に関して共同で企画し、オーサーが執筆したものです】

ゴルフジャーナリスト/武蔵丘短期大学・客員教授

東京都出身。早稲田大学政経学部卒業。百貨店、広告代理店勤務を経て1989年に独立。1993年渡米後、25年間、在米ゴルフジャーナリストとして米ツアー選手と直に接しながら米国ゴルフの魅力を発信。選手のヒューマンな一面を独特の表現で綴る“舩越節”には根強いファンが多い。2019年からは日本が拠点。ゴルフジャーナリストとして多数の連載を持ち、執筆を続ける一方で、テレビ、ラジオ、講演、武蔵丘短期大学客員教授など活動範囲を広げている。ラジオ番組「舩越園子のゴルフコラム」四国放送、栃木放送、新潟放送、長崎放送などでネット中。GTPA(日本ゴルフトーナメント振興協会)理事。著書訳書多数。

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