諸外国で新聞はどこまで信頼されているのだろうか
文化の代名詞を自称する新聞だが、インターネットとそれを扱う機器の普及に伴い、大きく利用価値や相対的存在意義の変質の中にある。諸外国ではどれほどの信頼を得ているのだろうか。新聞通信調査会が2017年4月に発表した調査結果「諸外国における対日メディア世論調査(2017年実施)」(※)から確認していく。
次に示すのは、調査対象国では新聞はどれほどの信頼を得ているのだろうかとの問いの回答。設問では単に「新聞」とのみの表記だが、その文脈から全国紙あるいは地方紙など法人が販売する、一定数以上の販売数を持つ新聞を対象とする。信頼なしをゼロ点、普通を50点、全幅の信頼を寄せている認識ならば100点とし、自由採点をしてもらった上でその平均点を算出した結果が次のグラフ。今調査では日本は対象としていないが、2016年9月に実施された類似形式による「メディアに関する全国世論調査」の結果も併記する(調査方法が異なるので参考値以上の意味は無い)。
何をもってして「普通」とすべきかは歴史的背景や価値観に寄るところが大きいが、すべての国で現状では普通以上の信頼は得ていることになる。もっとも欧米ではいくぶん信頼度は低め、アジア、特に日本では高めの値が出ている。新聞など従来型メディアに対する日本の信服感はかねてから知られているところであり、それが裏付けられた形となる。
「そこそこ、普通には信頼できる」との判断が成されている新聞だが、今後インターネットの普及がさらに進むに連れて、役割が縮小化する懸念がある。むしろ実際にはその過程にあると評して良い。そのような状況が今後さらに進行していくのか、それとも今まで通り新聞は報道に大きな役割を果たし続けるのか、新聞の未来について思うところを述べてもらった結果が次のグラフ。「役割は今まで通り大きい」とする意見を合算し、過去の同様調査との比較をしたグラフも併記しておく。
新聞への信頼度が一番低いイギリスでは、役割の縮小を唱える人が一番少ない(参考値の日本は除く)。一方で維持を回答する人も一番少なく、「どちらともいえない」との回答が一番多い割合を示している。さらに「無回答」の値も最大。他国と比べて新聞への想いは複雑なようだ。「もっとしっかりしてくれ」との内面の想いがにじみ出ているようでもある。
役割は縮小化するとの意見はタイや中国で7割超、アメリカ合衆国やフランス、韓国で6割台と続いている。ただしアメリカ合衆国やフランス、韓国では役割の維持を主張する意見も約3割おり、新聞の権威継続を想う人が一定数居ることが分かる。詳細は省略するが、年齢階層別動向を見ると、大よその国で若年層ほど役割の縮小を予見し、高齢層ほど役割は以前大きいままと認識している。価値観の世代間格差が表れているようだ。
日本は役割縮小の回答率はイギリスに近いものの、維持の回答率はフランスや韓国すら超え、今回調査の対象国では(参考値ながら)トップの立ち位置にある。調査手法が異なり一概には比較できないものの、新聞に対する信奉心の強い日本らしい実態には違いない。
まだ3年分しか結果が蓄積されていないが、経年変化の限りでは、アメリカ合衆国と中国以外では「役割は大きい」との認識は縮小しつつある。新聞報道に関して周辺環境が真逆のように見える米中両国で、インターネットが普及を進めても新聞が報道に果たす役割は大きいままだとの認識が同じように増加しているのは、興味深い傾向ではある。
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※諸外国における対日メディア世論調査
直近年分はアメリカ合衆国、イギリス、フランス、中国、韓国、タイに対し、2017年2月から3月に行われたもので、アメリカ合衆国・フランス・韓国は電話調査、イギリス・中国・タイでは面接調査で実施されている。調査地域は中国・タイは都市圏、それ以外は全国。回収サンプル数は各国約1000件。過去の調査もほぼ同様の調査スタイル。