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石破茂という政治家の危険性

志葉玲フリージャーナリスト(環境、人権、戦争と平和)
(写真:代表撮影/ロイター/アフロ)

 今月、自民党の総裁選、立憲民主党の代表選がそれぞれ行われ、自民党の新総裁に石波茂氏、立憲民主党の代表に野田佳彦氏がそれぞれ選ばれた。自民党の総裁選では、石派氏を含め、9人の候補全員が「憲法改正」を訴えた。石破氏は、安倍元首相の政治を引き継ぐとした高市早苗氏に比べれば、ソフトな印象であるが、過去の言動を見ると、やはりタカ派であり、基本的人権や民主主義に関する理解という点でも大きな問題がある。石破氏のこれまでの発言から、その問題を明らかにしていく。

〇憲法9条2項を削除?

 防衛庁長官や防衛相を歴任した経緯もあり、安全保障に強いこだわりを持つ石破氏の主張は、極めてタカ派だと言える。石破氏の持論は憲法9条第2項(「前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない」)を削除し、新たに「国防軍」を創設するということだ。この種の主張は、自民党の安倍派など、他の国会議員らからも主張されているが、日本弁護士連合会(日弁連)がその問題点を以下のように指摘している。

第1に、「国防軍」の創設は、自衛隊を、他国との軍事協力を可能にして、海外において同盟軍とともに武力行使をできる軍隊とすることを意味する。また、海外での権益を守るなどの名目で武力行使が際限なく拡大することへの歯止めがなくなるおそれがあり、憲法の基本原理である徹底した恒久平和主義を崩壊させて我が国を再び戦争へと導くおそれがある。

第2に、「国防軍」は軍事機密保護法の制定、一般裁判所と区別される軍事裁判所等の設置、緊急事態宣言などの法制を伴っており、これらは統治機構に対する国民の民主的コントロールを後退させて民主主義の基盤を掘り崩し、平和的生存権をはじめとする基本的人権の保障を極めて危うくする。

恒久平和主義、基本的人権の意義を確認し、「国防軍」の創設に反対する決議

 引用した日弁連の決議は2013年のもので、その後、第1に関しては、集団的自衛権の行使を限定的に認める安保法制が成立し、第2に関しては、特定秘密保護法が成立した。武力行使の拡大や国家による基本的人権の侵害は、憲法9条第2項の削除や国防軍の創設により、一層、進んでいくことが懸念される。これは、平和主義と基本的人権の尊重を国是としてきた日本の国家としての在り方を、根本的に変え得るものだ。

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フリージャーナリスト(環境、人権、戦争と平和)

パレスチナやイラク、ウクライナなどの紛争地での現地取材のほか、脱原発・温暖化対策の取材、入管による在日外国人への人権侵害etcも取材、幅広く活動するジャーナリスト。週刊誌や新聞、通信社などに写真や記事、テレビ局に映像を提供。著書に『ウクライナ危機から問う日本と世界の平和 戦場ジャーナリストの提言』(あけび書房)、『難民鎖国ニッポン』、『13歳からの環境問題』(かもがわ出版)、『たたかう!ジャーナリスト宣言』(社会批評社)、共著に共編著に『イラク戦争を知らない君たちへ』(あけび書房)、『原発依存国家』(扶桑社新書)など。

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