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指揮官も絶賛!MLB公式球で進化したツーシームを操る有原航平は第2の黒田博樹になれるか?

菊地慶剛スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師
レンジャーズ有原航平投手(Kelly Gavin, Texas Rangers)

【投げる度に評価を上げている有原投手】

 念願のMLB移籍を果たしたレンジャーズの有原航平投手が、試合を重ねる度に周囲の評価を上げている。

 すでに日本で報じられているように、現地時間の3月14日に行われたロッキーズとのオープン戦で自身3度目の登板を果たすと、4回を投げ2安打無失点3三振の好投を演じている。

 MLB初実戦となった3月2日のホワイトソックス戦では、3アウトを奪えずにイニング途中で打ち切られるという厳しいスタートとなったが、2度目の登板となった同8日のカブス戦以降、投球内容が着実によくなってきている。

 すでに首脳陣からの信頼も厚く、今やメディアの関心は「開幕ロースター入りできるか」ではなく、「先発何番手を任せられるか」に集まり出しているように思う。

【有原投手「今年の方がしっかり仕上がっている」】

 有原投手自身も、ここまでの調整に手応えを感じているようだ。登板後のオンライン会見でも、次々にポジティブな発言を繰り返している。

 (3度目の登板について聞かれ)「今日は真っ直ぐがよかったので、前回、前々回よりいいピッチングだったと思います」

 (例年と比較した調整具合について聞かれ)「今年の方がしっかり仕上がっていると思うので、いい状況で開幕に向かっていけたらなと思っています」

 (打者と2巡目の対戦を経験してことについて聞かれ)「いろんな球種を使って抑えることができたので、よかったかなと思います」

 その中でも特に印象に残ったのが、MLB公式球の慣れ具合について聞かれた際の答えだった。

 「はい。慣れたといっていい状況に来ているかなと思います」

 これまで多くの日本人投手を悩ませ続けてきたMLB公式球に、早くも対応できていると断言しているのだ。ボールが滑りやすいアリゾナの地で、この言葉を聞けたのは、今シーズンの活躍に期待が高まるばかりだ。

【MLB公式球で進化し始めたツーシーム】

 MLB公式球をしっかり制御できるようになったことで、間違いなく相乗効果が生まれてきている。NPB公式球より変化量が大きいとされるMLB公式球により、ツーシームが進化し始めているようだ。

 有原投手自身も、前回のカブス戦、今回のロッキーズ戦とツーシームが一番良かったと話している。このツーシームについて、クリス・ウッドワード監督も以下のように絶賛している。

 「ツーシームの動きがかなり大きい。たぶん(横の動きは)ホームベースの幅以上だ。正確には分からないが、多分20インチ(約50センチ)はベースを横切っているのではないだろうか。

 (相手打者の)オーイングから空振りを奪った際に(捕手の)トレビノが目を丸くしながら驚きの表情を浮かべてベンチを見てきた。

 右打者にあのツーシームを投げた後に、フォーシームやスライダーを投げられたらなかなか打つのは難しいだろう」

オンライン会見で有原投手を絶賛するクリス・ウッドワード監督(筆者撮影)
オンライン会見で有原投手を絶賛するクリス・ウッドワード監督(筆者撮影)

【指揮官「日本よりも三振数が増えるだろう」】

 ウッドワード監督の賞賛はまだまだ続く。

 「彼は自分の球種を使いながらMLBの打者を打ち取る術を学びつつある。(チームの先発左腕の)ベンジャミンのように、投球を操る才能に長けている。

 ツーシームの動きはよく、フォーシームは伸びがあり、スプリットはよく沈む。さらにバックドア・スライダーや左打者に有効なチェンジアップもある。基本的には彼はベース上で高低、左右を使いながらボールを動かし続けることができる。

 このリーグと打者についてしっかり理解できれば、彼の投球を見るのが楽しみになってくるだろう。彼は冷静さと投球術を兼ね備えているし、今後ともそれを維持していけると思っている。

 またMLBの打者はコンタクト重視の日本の打者とは違うので、さらに彼の投球は効果的に機能するのでは。多分三振数は日本の時より増えることになるだろう」

 指揮官の言葉を聞きながら、MLBに来てからツーシーム習得に成功し、見事な投球術を披露し続けた黒田博樹投手の姿が頭をよぎった。

 有原投手の卓越した投球がMLBの打者たちを席巻する──。そんな姿を想像すると、ますます開幕が待ち遠しくなってきてしまう。

スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師

1993年から米国を拠点にライター活動を開始。95年の野茂投手のドジャース入りで本格的なスポーツ取材を始め、20年以上に渡り米国の4大プロスポーツをはじめ様々な競技のスポーツ取材を経験する。また取材を通じて多くの一流アスリートと交流しながらスポーツが持つ魅力、可能性を認識し、社会におけるスポーツが果たすべき役割を研究テーマにする。2017年から日本に拠点を移し取材活動を続ける傍ら、非常勤講師として近畿大学で教壇に立ち大学アスリートを対象にスポーツについて論じる。在米中は取材や個人旅行で全50州に足を運び、各地事情にも精通している。

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