原油価格の下落で米国のシェールオイル開発企業が窮地に追い込まれ、あらたなリスク要因に
OPEC加盟国とロシアなど非加盟産油国からなるOPECプラスは3月6日にウイーンで会合を開いた。会合ではサウジアラビア率いるOPEC側が、原油価格の維持のために減産強化を働きかけたのに対し、これをロシアが拒否したことで原油価格を取り巻く状況が一変した。
サウジアラビアの国営石油会社サウジアラムコのナサール最高経営責任者(CEO)は10日、同国が4月の原油供給を日量1230万バレルに引き上げると発表した。サウジアラビアのここ数か月間の生産量は日量970万バレルであり、協調減産は3月末で終了することになり、4月から目一杯増産する見込みのようである。
ロシアが原油価格を維持させるための協調減産を拒んだのは米国のシェールオイルを意識したものとされる。サウジアラビアもシェアの維持だけでなく、米国のシェールオイルを意識して、供給面から原油価格の引き下げを狙ったような動きとなった。
需要面からも原油価格には売り圧力が掛かった。世界最大の原油の輸入国である中国から新型コロナウイルスの感染が拡がり、世界的なパンデミックが加速してきた。これにより人と物の動きが止まり、世界的な景気の後退懸念が強まった。これを受けて、原油の需要も後退するとの観測が強まり、これも原油価格の引き下げ要因となった。
需要と供給の両面から売り圧力が掛かることとなり、3月20日に米国原油の指標であるWTI(ウェスト・テキサス・インターミディエイト)原油先物は、一時20ドルを割り込んでいた。2月末には50ドル近くであったことで、その半値以下となっている。
この原油価格の下落とサウジアラビアなどの増産を受けて、米国のシェールオイル開発企業が苦境に立たされている。資金繰りが悪化している企業もあり、金融市場への影響を懸念する声もあると25日の日経新聞が報じている。
米国の新規シェール油井の採算ラインは1バレル40~50ドル程度とされ、30ドル以下では既存の油井を含め大半が採算割れになるとされる。
トランプ大統領は19日の記者会見で、原油生産量をめぐるロシアとサウジアラビアの対立について「適切な時に関与していく」と語ったそうだが、価格競争に歯止めが掛けられるのかは不透明。
新型コロナウイルス感染拡大により、世界経済への影響が懸念され、各国政府や中央銀行が積極的な対応策を講じ、これらを受けて金融市場はやや乱高下となっている。原油先物は24日に24ドル台とやや値を戻しているが、この水準では米国のシェール開発企業にとっては採算割れの状態となる。40ドルから50ドル台あたりに原油先物価格が戻されることがないと、米シェール企業があらたなリスク要因ともなりかねないので、念のため注意が必要となる。