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原油価格を巡る三國志(米・ロシア・サウジ)に新たな動き、トランプ大統領がロシアとサウジの仲介役に?

久保田博幸金融アナリスト
(写真:ロイター/アフロ)

 石油輸出国機構(OPEC)とロシアなど非加盟産油国による価格を支える取り決めが3月末で期限を迎えた。原油価格の維持のために減産強化を働きかけたのに対し、これをロシアが拒否したことで、4月1日よりサウジアラビアなどは原油の供給量を大幅に引き上げた。

 ロシアが原油価格を維持させるための協調減産を拒んだのは、米国のシェールオイルを意識したものとされる。サウジアラビアもシェアの維持だけでなく、米国のシェールオイルを意識して、供給面から原油価格の引き下げを狙ったような動きとなった。

 供給面での圧力が強まるなか、新型コロナウイルスの世界的な拡大により、世界経済の停滞が危惧され、最も原油輸入量の多い中国などを中心に石油需要の後退も意識された。

 供給面と需要面の双方から原油価格には低下圧力が掛かり、原油価格のベンチマークともいえるWTI先物は20ドルを割り込んだ。2月末には50ドル近くであったことで、その半値以下となってしまった。

 この原油価格の下落とサウジアラビアなどの増産を受けて、米国のシェールオイル開発企業が苦境に立たされた。米国の新規シェール油井の採算ラインは1バレル40~50ドル程度とされ、30ドル以下では既存の油井を含め大半が採算割れになる。現実にシェールオイルの開発や生産を手がける米国の企業、ホワイティング・ペトロリアムが破綻した。

 中堅クラスとされるホワイティング・ペトロリアムの経営破綻で、これがさらに大手などにも波及する恐れがある。そこで動いたのが米国のトランプ大統領であった。大統領選挙を睨んだ動きとの見方もある。

 米国のトランプ大統領はロシアのプーチン大統領、サウジアラビアのムハンマド皇太子と個別に電話会談をしたとされる。トランプ大統領は原油の協調減産を巡り、サウジアラビアとロシアの間を仲介したとコメントした。

 ただし、今回の原油価格を巡る騒動はどちらかといえば、結果としてサウジアラビアとロシアが手を結んで、米国のシェール潰しを狙った動きのはずであった。

 中国の三國志で例えると、赤壁の戦いののち曹操が、孫権と劉備連合軍と和議を結びにきたような格好ともみえなくもない。ただし、ロシアとサウジアラビアとしては身を削ってまでもシェール潰しを目論んだともいえることで、簡単に和議が成立するのかという疑問は残る。

 それでも今回は新型コロナウイルスという大嵐が吹いている。このため、想定以上に下落してしまった原油価格を多少なり元に戻す事は必要との3者のコンセンサスが働いた可能性もある。

金融アナリスト

フリーの金融アナリスト。1996年に債券市場のホームページの草分けとなった「債券ディーリングルーム」を開設。幸田真音さんのベストセラー小説『日本国債』の登場人物のモデルともなった。日本国債や日銀の金融政策の動向分析などが専門。主な著書として「日本国債先物入門」パンローリング 、「債券の基本とカラクリがよーくわかる本」秀和システム、「債券と国債のしくみがわかる本」技術評論社など多数。

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