慎重さが滲み出ていた、3月19日の日銀金融政策決定会合の主な意見
日銀は3月18、19日に開催された金融政策決定会合の主な意見を公表した。19日の金融政策決定会合では2007年2月以来、17年ぶりの利上げというかたちになったが、やっと金融政策の方向性を中立に戻すことを決定していた。ただし、今回の主な意見をみると慎重な意見も出ていた。
「イールドカーブ・コントロールの枠組みやマイナス金利政策などの大規模な金融緩和は、その役割を果たしたと考えられる。」
「異次元の金融緩和からいわば普通の金融緩和に移行することは、短期的なショックを起こさずに十分可能であり、中長期的にはプラスの効果も期待できる。」
このあたりまでは良いのだが、次に
「今回の金融政策の枠組みの見直しが、金融引き締めへのレジーム転換ではなく、あくまで「物価安定の目標」の実現に向けた取り組みの一環である点を、各種コミュニケーションによって明確に伝えていくことが重要である。」
この発言者には中立という言葉はないのか。金融引き締めへのレジームチェンジというよりも、本来の普通の中立的な金融政策へのレジームチェンジで良いではないか。
「仮にマイナス金利政策を解除しても当面緩和的な金融環境が維持されるという理解が市場に浸透していることなどから、今回の措置によって金融市場で大きな変動が起こる可能性は低い。」
仮にマイナス金利政策を解除しても当面緩和的な金融環境が維持されるという理解ではない。過去のゼロ金利解除の局面でも同様の表現を使っていたので今回も使うであろうとの理解であろう。
「経済・物価情勢に応じて、時間をかけてゆっくりと、しかし着実に金融正常化を進め、異例の大規模金融緩和を上手に手仕舞いしていくためには、これからの金融政策の手綱さばきがきわめて重要である。そのためにも、今回、金融正常化のスタートラインに立つことが適当である。」
たぶん田村委員かと思うが、違和感はない。
「長期国債やCP・社債等の買入れについては、大幅・急激な市場変動を避ける観点から、時間をかけて対応することが適当である。その間、債券市場の参加者拡大を期待する。」
債券市場の参加者拡大を期待するとあるが、債券市場の機能を低下させた上、債券村を過疎化させるようなことをしたのはいったい誰だったのであろうか。
「国債買入れは、現在と概ね同程度の金額で継続するが、その際、実際の買入れは、これまで同様、調節の現場において、市場の状況に応じて柔軟に決めていく必要があり、上下に多少のアローワンス(例えば1~2兆円程度)をもって対応していくことが適当である。」
国債買入れに詳しい委員となれば、高田委員か。どこまで執行部の意見が入っているのであろうか。興味深い発言ではある。
「国債の買入れは、能動的な金融政策手段としては用いず、長期金利の急変動を避けるという観点から行われることになる。その中で、市場の流動性を回復しつつ、できるだけ市場に金利形成を委ねていくことが大切である。」
同意。
「本年の賃上げが象徴的な変化として確認されたことから、これまでの市場機能に副作用を及ぼしてきた政策対応を見直し、市場が自律的に機能する局面への転換が必要である。」
同意。
「将来の金融正常化を見据えて、ある程度は市場の価格形成に任せた政策運営に切り替えるタイミングだと考えられる。」
同意。問題はここから。
「マイナス金利を解除する場合でも、急速な利上げが必要な状況ではないため、慎重な姿勢を強調することが必要である。」
「国債買入れの継続による長期金利の抑制が未だに必要であり、イールドカーブ・コントロールとマイナス金利政策の解除を同時に行うことは、長期金利を含む金融環境に非連続的な変化をもたらすリスクがある。」
そんなリスクなどないが、仮にあったとして、そのリスクを作り上げたのは誰なのかと問いたい。
「今回の政策変更により、経済実態を反映しない形で先々の政策変更期待が高まり、金融環境が急変した場合、好循環のモメンタムに水を差し、物価目標の達成を遅らせるリスクがある。」
そもそも経済実態を反映しない形で異常な金融政策を続けていたのは誰だったのか。どうも経済実態の解釈が異なる人がいるようである。
「今回の政策枠組みの見直しも踏まえつつ、過去四半世紀の金融政策の在り方を幅広く振り返ることが必要であり、現在行われている多角的レビューを将来の政策に活かしていくことも重要である。」
クロだけでなくシロからみたものなど、本当の意味での多角的レビューが必要となろう。