森の小さなレストランが大都会バンコクに!タイ旅行ライターがリピートする穴場レストランは究極の癒し空間
「ドングリを辿っても着きません♪」
いい歌詞だ。そしてタイの首都バンコクで見つけてしまった、まるで「森の小さなレストラン」のような空間も、ドングリを辿っても着かないし、そもそもドングリなんて転がっていない。むしろ渋滞を辿ったら着く小さなレストランだ。
バンコク名物渋滞のメッカに突如現れる癒しの空間
バンコクは今や東南アジア屈指の大都市。そしてその経済を担う金融系の企業が集まるサトーンエリアは高層ビルが建ち並ぶ。
サトーン通りとクロスする通りの一つ、ナラティワート通りはバンコク名物渋滞のメッカの一翼を担う通りでもあり、通勤ラッシュは地獄の様相を呈する。写真はナラティワート通り沿いのホテルに泊まった際、深夜に撮影。深夜は渋滞は解消しているが、このホテル滞在中、朝の8時頃、そして夕方18時頃から19時頃は、渋滞のため排気ガスがもの凄いことになっていたのでその時間を避けて歩いていた。
そんな、木が一つも生えないような(嘘をつくな!街路樹は生えているぞ!)エリアに「ええええ?何なのココ?」という異空間が存在する。
その場所の名は「Sara-Jane's」。一軒屋レストランだ。ここを偶然見つけてからというもの、あまりの癒し度と、居心地の良さに、バンコクに滞在する際は必ず立ち寄るようになってしまった。
場所は非常に分かりやすく、BTS Chong Nonsi(チョンノンシー)駅を降り、チョンノンシースカイウォークを歩き、エンパイアータワー方面の歩道に出たら、チョンノンシー駅と反対に7、8分ほど歩くだけ。駅からカウントすると10分ちょいかかるが、バイクタクシーやタクシーだと進行方向反対なので、遠回り。BRT(専用レーンバス)もあるが、待ち時間、戻って歩く距離を考えると素直に徒歩がおすすめだ。
写真の看板が見えたら白い瀟洒な建物の屋内席と、鬱蒼とした屋外席があるので、迷わず「外で食べる」と言ってほしい。
ちなみにランチ時とディナー時はメニューが異なる。ランチ時は麺料理を中心に、ソムタムなどのイサーン料理、そして夜はイタリアンや、オーセンティックなタイ料理を楽しめる。
ここはどこ?私は誰?
「何だこの鬱蒼とした木の多い場所は!」と思って、入り口を見つめていたら、駐車場にいたおじさんが「17時30分オープンだから入って良いぞ」と教えてくれた。雰囲気的にそんなに高そうでもないし、えーい、入ってしまえ!と、一応エントランスなのかな?と思うような場所から入ってみた。
何なんだ、ここは!
呆然と立ち尽くしていると、陽気におしゃべりをしながら準備していたスタッフが「あ、好きな所座って」と、適当に顎をしゃくってくれた。開店時間すぎても準備が間に合わないことは、タイあるあるだ。
それでも一応客だと認識してくれたのか、扇風機を盛大にまわしはじめ、シンボリックツリー的存在の、大きなレインツリーの周囲のライトをつけてくれた。
思わず、わあ、と声が出た。
なんて美しい場所なんだろう。お店の白い頑丈なゲートを開けたら、廃材のような木材を積み重ねただけの仕切りがあり、すぐ歩道。そして、その隣を車がびゅんびゅん走っているというのに、一歩店に入ると完全に異空間だ。
取り合えず落ち着こう。
タイ人は特に屋外でビールを飲むときは氷を入れて飲むことが多い。大勢でバケツの氷とビールをオーダーし、ワイワイやっている光景がおなじみだ。
流儀に則る主義なので、友達と飲む場合は筆者もそうするが、一人で飲む場ときは、バケツ一杯の氷は巨大すぎるため「コップに少しだけ氷を入れて」と頼む。
チンチョックの声と、タイのルークトゥン(歌謡曲のようだと言われる場合や、演歌みたいだとも例えられる、ちょっと地方色のあるタイ独自のジャンルの曲)が流れる緑いっぱいの小さな森は、バンコクから異空間に入り込んでしまったかのような錯覚に陥る。
ちなみに選曲はアメリカンオールデイズな曲になることもあり、客層?スタッフの好み?で変わるのかもしれない。
地元タイ人カップルに交ざり外国人観光客の姿も
ビールを飲みながらメニューに見入っていると、他の客が入って来た。タイ人カップルだったり、欧米人の外国人観光客だったり...。ただ圧倒的にカップルと家族連れが多く、一人でビールをがぶ飲みしている客は、自分しかいないことが多い。
他店では浮きまくるのだが、こちらのお店では、そういった客がいても特に珍しがられない所が良い。
サトーン通りには、各国の大使館に勤務する方々やタイに進出している世界中の大手企業の駐在員用レジデンスが多く、一人でさくっとやってくる外国人短期在住者、駐在員、出張者も多いのだろう。実はイタリアンメニューやアメリカンなステーキなど肉メニューも豊富。これは間違いなく外国人も意識しているはずだ。
それでいて完全におしゃれ化せず、野暮ったさを残しているあたりが絶妙。
タイ人にはムーガタ(真ん中が盛り上がり、周囲に溝のある鍋で肉や海鮮を焼き、溝にはスープが入れてある。スープの入った溝に野菜や春雨を入れ、肉汁が溝に入ってきたら、肉汁と共に、野菜を食べる料理)が人気のようだ。
タイ旅行ライターの筆者が特にお気に入りのメニュー
何度か通った中で気に入ったメニューがあるので紹介したい。いつもながら自腹レポなので好き放題書かせていただくが、最初に断っておくと、ハズレがない。もう一つ告白する。筆者はこの店に来る時は一人だ。一人で浮かずにゆっくり飲んでいてもせかされる雰囲気がない店は、ひとり旅用にとっておく。そのため、大皿メニューが含まれていない。
本当は『はじめ人間ギャートルズ』のマンモスの肉を食べるシーンでしか見たことがない、巨大な肉の塊の写真を見てオーダーしたい!と心躍ったのだが、それはいつか、誰かと来た時用にとっておきたいと思う。
タイ料理は一皿100バーツから200バーツ台だが、盛りが多いので、一皿2人前だと思う。やはりこういう場所は複数できた方が安上がりだし、色々食べられていいよなあと、しみじみ。
イタリアンや洋食的メニューは、安くても300バーツ超のものが多い。ただこちらもピッツァやドイツの豚肉料理アイスバイン的な巨大な豚足肉など、みんなで食べられるような料理が多いので、グループで食べれば、十分お得だ。
イサーン料理の代表、スップノマーイ
実は筆者、タイのヤム系(英語表記だとヤムやソムタムは「サラダ」になっている場合が多いが、ヤムは日本語だと和え物的な存在)の中で、最も好きな料理がタケノコを使ったスップノマーイ。タイ東北部を示すイサーンの料理で、タケノコを細かく裂き、ハーブ、ニンニク、ナンプラー、マナオ、唐辛子などで染み染みになるまで味付けし、炒った米粉を入れて混ぜたもの。
大好きな穂先部分を使った「やわらぎ系」の口あたりや、根元の部分のコリコリ食感でビールが進んで仕方がない。メンマ好きは食べるべし。日本と異なりミントが手に入りやすいのか「これでもか!」と入っており、辛さの後にさらに口内がスース―する。
真夏にこそ食べたい一品だ。
スップノマーイにはカップに入った生野菜付き!
この店の嬉しいポイントとして、スップノマーイのような、辛いヤム系を注文すると。コップに入った生野菜が付いてくる。これはイサーン料理屋で生野菜が籠にドンと盛られ、サービスでボリボリ食べられる太っ腹なサービスの名残りだろう。
スップノマーイが辛いので、葉に包んで食べたり、スップノマーイの汁につけて食べると、完全に酒のつまみ(こら!)。普段生野菜を食べない筆者が、タイに来ると生野菜がもりもりと食べられてしまうのは、やはりタイの香辛料を使ったディップやタレが好きで仕方がないからかもしれない。ドレッシングとはまた違う、辛さの中にある深いコクや爽やかさがたまらない。
ゲーンマッサマン
米国の放送局CNNが運営する「CNN Travel」が「世界の美食トップ50」の1位に選んだこともあるタイのカレー「ゲーンマッサマン」。まろやかで辛くなく、誰にでも食べられるタイカレーだ。このお店の場合、どんぶりサイズの器に巨大な鶏肉の塊が2つ、大きなジャガイモが2つ入っていたので、どう見ても2人前。
鶏肉はほろほろになるまで煮込まれており、ジャガイモは煮崩れしていない所を見ると、具材一つひとつをきちんと別調理して、合わせた丁寧な仕事をしているという事だ。
ルーを使うわけではないので味もスパイスも異なるが、日本のカレーをふと思い出す、胃がほっとする味だった。
ナムプリックオン
チェンマイ好きの筆者にとっては嬉しい、タイ北部料理「ナムプリックオン」も!こちらのお店はイサーン料理によく使われる、ほぐしたナマズを身を使っているようだ。どの店で食べてもナマズは川魚とわかるエグみが多少残っている。豚肉の「ナムプリックオン」に慣れている人はびっくりするかもしれないが、筆者はナマズも大丈夫!唐辛子やトマトで味付けしたディップを茹でた野菜に乗せてぱくり。
「はい、チャーンビールもう1本!」の刺激的な味わいだ。左側の丸い野菜は、タイの丸茄子。
コームーヤーン
コームーヤーンは、豚肉の首回りの肉の炭火焼きの事。日本では「トントロ」と呼ばれ、希少部位扱いだが、タイの屋台ではとにかく安く買える庶民の味だ。
タイは肉料理も多い。大部分がイサーン料理で、炭火であぶっただけのシンプルさが、外国人観光客も入りやすい。コームーヤーンはシンプルなだけに、包丁の入れ方で口あたりが変わり、添えられたナムチム(ソースの事)の味で店の特徴が出る。
屋台のコームーヤーンが肉質よりゼラチン質を感じる中、この店はきちんと肉質部位がバランスよく入れてある。
ホッケンミ―
この日は腹ペコで主食的なメニューも頼みたかった。イサーン料理が多いと思っていた店に、ホッケンミ―の焼きそば的メニューが置いてあり、ついオーダー。
ホッケンミ―はプーケットでよく見かける中華由来の麺。
これまでいただいた炒めたホッケンミ―の味つけが、割とガツンとしており、見た目もソース焼きそばのような濃い色合いだったのに対し、この店の写真付きメニューを見ると、まるで塩焼きそばのような風貌なので、頼んでみたところ大正解!
ええ?こういうアプローチもできるんだ?とタイ料理の懐深さに感涙。タイ人は何でも好みの味に仕上げるため、麺料理には毎回4つの調味料(唐辛子入りの酢、砂糖、ナンプラー、粉の唐辛子)が添えられてくるものの、連日3食タイ料理を食べていた筆者は、このままのシンプルな味付けで貪り食べていた。
この記事を読みながらバンコクをさまよい「そろそろ酸っぱくなく、辛くなく、甘くないあっさりした味のものが食べたい」と思っていた方にはシンデレラフィットな味わい。ぜひお試しあれ。
時間がある限りまったりと過ごしたい大都会の森
バンコクで大都会の木々の集まるヒーリングスポットというとルンピニー公園や、ベンチャキティ森林公園を思い出す方もいると思う。しかしまさかオフィス街サトーンエリアのこんな幹線道路の脇に、シンボリックツリーをメインに、木々が癒しのオーラを放つ、田舎風レストランが存在するとは。これだから、ガイドブックもスマホも頼らないバンコクグルメ散策はやめられない。
どんどんお洒落になってしまうバンコク。しかしバンコクの魅力って、最先端と、古き良きアジアが共存するする風景と魅力的な料理、極採食の寺院、人の面白さだと思っている。
バンコクにはいつまでもこんな側面も残しておいていただきたい。そう心から願ってしまうレストランだ。
DATA
Sara-Jane's
所在地:55, 21 Naradhiwas Rajanagarindra Rd, Khwaeng Yan Nawa, Yan Nawa, Bangkok 10120
営業時間
平日10時30分~14時/17時30分~22時
土・日:10時30分~15時/17時30分~22時
定休日:無休
アクセス:Chong Nonsi(チョンノンシー)駅下車徒歩約10分
公式サイト:Sara-Jane's