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味方良介が市川海老蔵から学んだもの。そして、新型コロナ禍でつかんだ覚悟とは。

中西正男芸能記者
これまでの舞台に加え、映像の世界でも存在感を見せる味方良介さん

 市川海老蔵さんが主演するフジテレビ「十三代目市川團十郎白猿襲名記念ドラマ特別企画 桶狭間〜織田信長 覇王の誕生〜」(3月26日、午後9時)に出演する俳優の味方良介さん(28)。これまで舞台を軸に活動し、映像作品はフジテレビのスペシャルドラマ「教場」に続き2作目ですが、海老蔵さんに自らとの共通点を見出し、成長の糧を抽出してきました。凄まじいスピードで進化を遂げる味方さんの今の思いとは。

「お前たちを信じてるからな」

 海老蔵さんとのドラマは去年の春に撮影があったので、もうすぐ1年が経ちます。本来、去年の夏ごろに放送予定だったのが新型コロナ禍で海老蔵さんの襲名が延期になったこともあり、ドラマも延期になりまして。

 僕自身、時代劇が初めてで、映像作品も「教場」に続き2作目。

 まだまだ映像自体に不慣れな状況ではあったんですけど、監督さんからも「好きにやって大丈夫」と言ってもらい、本当にたくさんのことを学ばせていただきました。

 まず、驚いたのが海老蔵さんの“空気”です。

 織田信長役の海老蔵さんがいらっしゃるだけで場が引き締まるんです。僕らがそうしようとしなくとも、そこに殿、すなわち海老蔵さんがいらっしゃるだけで、空気が完全に出来上がる。

 「オレはお前たちを信じてるからな」。その波動が背中から出てるんです。セリフにそういう文言があるわけではないんですが、空気でそれを伝えてくださる。そうなると、こちらも自ずと「命を懸けてついていきます」という気持ちになる。

 それが織田信長という存在なんでしょうし、そういう感覚を体感することって、すごく貴重だと思いますし、ありがたい機会をいただきました。

切り替えと相互作用

 海老蔵さんには軸として歌舞伎があって、今回のような映像のお芝居もされる。これは僕のイメージではあるんですけど、映像というフィールドであったとしても、海老蔵さんはそこに自分の一番良いものをお入れになるんです。

 海老蔵さんならば、それは歌舞伎から得たものになるかと思うんですけど、その要素を必ず注入される。それが映像における役者・市川海老蔵の強みにもなると思うんです。

 そして、これも僕が感じたことではありますが、さらにすごいのは、そういう歌舞伎から得たエッセンスをあえて削ぐこともやってらっしゃる。

 安い言葉になってしまいますけど、必要以上に“かぶかない”というか。多分、さらけ出せば全てをかっさらえるパワーをお持ちの方だと思うんですけど、そこをあえて、引いて、引いて、という引き算もされる。そこにこそ、奥深い凄みを感じました。

 形こそ違えど、これは僕にも当てはめられることだなと。海老蔵さんは「歌舞伎と映像」。僕なら「舞台と映像」。それぞれのフィールドに合わせた戦い方をする。

 舞台だったらこうだけど、映像だったらこうやった方がいい。逆に、舞台のこのエッセンスを映像に入れるとすごく有効なんじゃないか。

 海老蔵さんとご一緒させてもらったことで、そんな切り替えと相互作用を強く意識するようになりました。そして、この1年はそれと向き合ってきた時間だったと思います。

客観視の強化

 それと、これも多分に感覚的な話になってしまいますけど、この1年間で“舞台での時間の流れ方”が変わってきました。

 舞台は2時間だったら2時間、公演中はノンストップで時間が流れます。そのことで、どこか常に焦りがあるというか、目いっぱいになっていたところがあったんです。

 一方、映像は時間の流れ方が全然違うんです。

 まず自分が演じる。それをスタッフさんが記録して、チェックしてくださる。そこから作品が完成して、実際に放送される。その間に、いくつもの段階がありますし、いくつもの視点も入ります。

 その過程を経験したことで、自分自身へのフォーカスが変わったというか、増えたというか。それを感じるんです。

 その結果、自分を冷静に客観視することが強化された。この感覚はすごく大きかったですね。そこからの作用として、舞台中の時間の流れが緩やかになった気がします。

 舞台は生の反応があるという部分で感覚が研ぎ澄まされますし、一方、僕のことをたくさんの方に知ってもらうという部分でいうと映像の意味はすごく大きい。舞台をベースにしながら、良いバランスで取り組んでいけたらなと思っています。

新型コロナ禍での覚悟

 ただ、新型コロナ禍で、舞台は特に大きな影響を受けています。去年も、いろいろな感情が湧きあがってきました。

 当たり前にあるものが当たり前じゃない。

 初日も千秋楽も当たり前のように来るものだと思っていたのが、そうではない。

 そうなると、もっと、もっと、一日一日と真剣に向き合うべき。本番だけではなく、稽古も含めて。心底、そう思うようになりました。

 もし仮に、突然そこで終わったとしても「悔いがない」と思える。それくらいの出力でやりきる。

 稽古の段階から「今日はこれくらいでいいや」じゃなくて、その時できる最大限までやりきる。稽古で突っ走りすぎると、正解が何なのか、迷いのループに入ることもあるんですけど、それでもいいからやりきる。その覚悟が去年で定まった気がします。

 あと、舞台をやる中でいろいろなご縁もいただきました。ここ5~6年でご縁ができたのが「NON STYLE」の石田明さんです。

 仲間内でも、二人だけでも飲みに行きますし、家に遊びに行かせてもらったりもしています。今では仕事もプライベートも含めて、一番仲の良い先輩だと思います。僕の中では、先輩というか、もう友達という感覚になってるんですけど(笑)。

 石田さんは芝居もお好きだし、何より、台本の読み方がすごいんです。読解力がすごい。役者さんでも到底追いつかないところまで読み込んで理解する。

 「M-1」王者というタイトルも持っている。その上で、芝居では面白くないことも、泥臭いことも、カッコいいこともできる。ズルいと思うほど、素晴らしい。

 時間を共にさせてもらう中で、例えば、石田さんがボケた時にこっちはどう対処したらいいのか。そんなことを言葉ではなく、ぶつかりげいこみたいに実戦の中で教えてもらう。瞬発力みたいなところをすごく鍛えてもらっていますし、逆に、僕は演劇的な体力だと発声なんかをお伝えしたりもしています。

 そういうことを二人で、主に飲み屋さんで話す(笑)。そんな関係です。石田さんにもお話をしてるんですけど、そうやって、二人が話すラジオなんかができたら、本当に最高だなと思っています。

 ラジオなので聞いてくださっている皆さんにも楽しんでいただきたいんですけど、少なくとも、僕たち二人はすごく楽しいだろうなと(笑)。

 あとね、楽しみであり、今、凝っているものがありまして…。それが、ラーメン作りなんです。

 あまり言う場所もなかったので、これまでは言ってなかったんですけど、実は、ものすごくラーメンが好きでして。あちこち食べに行ってるんです。

 自分が好きなラーメンを追い求める中、コロナ禍で時間もできて「じゃ、自分で作っちゃえばいいんだ」となりまして。

 スープは煮干しベースで、麺も粉から打って作っています。家で一人でやっていることなので、こればっかりは石田さんにも食べてもらったことはないです。

 ただ、前日から仕込んで、作るのも、食べるのも、全部一人ですからね…。

 そのラーメンをすすっていて「オレ、いったい、何をやってんだろう…」と思う気持ちはきちんとあります(笑)。そこも冷静に客観視はできているつもりです。

(撮影・中西正男)

■味方良介(みかた・りょうすけ)

1992年10月25日生まれ。東京都出身。ジャパン・ミュージックエンターテインメント所属。2011年、ミュージカルコンサート「恋するブロードウェイ♪」でデビュー。ミュージカル「テニスの王子様」柳生比呂士役で注目される。17年にはつかこうへい氏作の舞台「熱海殺人事件」の木村伝兵衛を史上最年少で演じる。20年、フジテレビのスペシャルドラマ「教場」でドラマ初出演。3月26日放送のフジテレビ「桶狭間~織田信長 覇王の誕生~」に服部小平太役で出演する。

芸能記者

立命館大学卒業後、デイリースポーツに入社。芸能担当となり、お笑い、宝塚歌劇団などを取材。上方漫才大賞など数々の賞レースで審査員も担当。12年に同社を退社し、KOZOクリエイターズに所属する。読売テレビ・中京テレビ「上沼・高田のクギズケ!」、中京テレビ「キャッチ!」、MBSラジオ「松井愛のすこ~し愛して♡」、ABCラジオ「ウラのウラまで浦川です」などに出演中。「Yahoo!オーサーアワード2019」で特別賞を受賞。また「チャートビート」が発表した「2019年で注目を集めた記事100」で世界8位となる。著書に「なぜ、この芸人は売れ続けるのか?」。

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1999年にデイリースポーツ入社以来、芸能取材一筋。2019年にはYahoo!などの連載で約120組にインタビューし“直接話を聞くこと”にこだわってきた筆者が「この目で見た」「この耳で聞いた」話だけを綴るコラムです。最新ニュースの裏側から、どこを探しても絶対に読むことができない芸人さん直送の“楽屋ニュース”まで。友達に耳打ちするように「ここだけの話やで…」とお伝えします。粉骨砕身、300円以上の値打ちをお届けします。

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