100万人手前で頭打ち、歯止めかかるか…高齢フリーターの推移と現状
世間一般に言われる「フリーター」と同じような職業的立場にありながら、年齢がより上のために「フリーター」と呼ばれない人達のことを「高齢フリーター(壮齢フリーター)」と定義する場合がある。その推移現状を総務省統計局による労働力調査の公開値から確認していく。
「フリーター」とは、
・年齢が15歳から34歳まで
・男性は卒業者、女性は卒業で未婚の者
・(1)雇用者のうち”パート・アルバイト”の者
(2)完全失業者のうち探している仕事の形態が”パート・アルバイト”の者
(3)非労働力人口で、家事も通学もしていない”その他”の者のうち、就業内定しておらず、希望する仕事の形態が”パート・アルバイト”の者
のいずれか
・配偶者と死別、別離した女性は該当しない
の条件にあてはまる者を指す。
労働力調査では2010年版で他の条件に合致するものの、年齢が35歳から54歳までの者に対し、はじめて「高齢フリーター」との表現を使い、「フリーター」より年上の人達に対する定義づけを行った。2011年版以降は解説、数値の算出は行われなくなったが、算出方法は2010年版で公開されており、その方法で状況の変化をたどることはできる。ちなみに55歳以上をカウントしないのは、通常雇用されていた人の退職者も多数混じってしまうため。
従来の意味での「フリーター」は2002年以降しばらく数を減らし、2008年を底値としてやや上昇、2010年以降は横ばい、さらには微減の傾向にある。ところが「高齢フリーター」はほぼ一貫して増加している。35歳にまで歳を重ねた時点で突如フリーターを脱し、雇用上の安定感を得ているわけはなく、35歳以降も引き続き不安定な雇用情勢に置かれている人がいて、それが年々増加している状況と解釈できる。フリーター数が漸減しているにも関わらず高齢フリーターが増加しているのは、フリーターから脱する事ができない人が増加しているのが一因と考えられる。無論、自分からそのライフスタイルを望んで維持している人も、多数いることには留意が必要になる。
年齢階層別で見ると2011年までは「45~54歳層」はほとんど横ばいだったのに対し、「35~44歳」の増加が著しい。このことから、本来のフリーター枠で定義された「25~34歳」の人たちが逐次歳をとり、この層に加わって「高齢フリーター」の数を押し上げていることが想像できる。特に2011年は35~44歳層の増加幅が大きく、計測・データがある期間内では最大の増加数(前年比8万人プラス)なのが確認できる。
一方2012年以降はより高齢となる45~54歳層の増加も始まっている。万単位のカウントなので多少の誤差はあるが、2012年以降35~44歳層よりも45~54歳層の増加幅が大きくなっている。通常のフリーター層から高齢フリーター前半期の増加への移行による高齢フリーターの増加だけでなく、前半期から後半期への移行増加も始まったものと考えられる。ややこしい話になるが「高齢フリーターの高齢化」現象と表現できる。
直近の2015年に限れば、35~44歳層が大きく減り、45~54歳が大きく増え、差し引きでプラスマイナスゼロ。景況感の回復などによる従来のフリーターの減少が、ようやく高齢フリーターにも影響を及ぼし始めた感はある。
年齢層人口に対する構成比率の変移は、今回年は絶対数の減少幅の大きさを受け、35~44歳層は下落。逆に45~54歳層は大きく増え、ついに2.5%に達してしまった。45~54歳全体の40人に1人が「高齢フリーター」との計算となる。
景況感は回復に向かい、失業率は低下し、フリーターそのものは減少しているものの、高齢フリーターは増加の勢いの中にある。今回年はようやくその増加に歯止めがかかった形。該当者の内訳では、多くが完全失業者では無くパート・アルバイトの雇用状況にある現状から(例えば男性35~44歳における31万人のうち、パート・アルバイトの者は28万人に達している)、長年フリーターを続けた中堅層世代のパート・アルバイト以外として雇用されることが難しい状況が、高齢フリーターの増加を後押ししていたものと考えられる。
このような状況に対し、企業、行政、そして周囲の人たちはどうすべきか。該当者一人ひとりはもちろん、関係各部局の意識改革が求められ、必要な人に対しては状況改善のための行動を願いたいところだ。
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