イランによる米軍基地へのミサイル攻撃の状況把握はツイッターによるという、SNSの金融市場への影響度
1月8日の東京市場はイランと米国との対立緊張によって波乱の展開となったが、その市場の反応がいまの時代を映すようなものであったことも興味深い。
株式市場、債券市場、外為市場、さらには金や原油などの商品市場は需給バランスや景気・物価動向だけでなく、戦争などの大きな出来事に対しても敏感に反応する。
その反応の仕方は状況によって異なるが、8日の東京市場はいまの金融市場の反応がまさに試されたような動きとなっていた。
8日の東京市場の開始前にイランがイラクの駐留米軍基地に十数発以上の弾道ミサイルを発射したとの情報が飛び込んできた。イランがソレイマニ司令官の復讐を行うことは予想はされていたが、米軍基地へのミサイルによる直接攻撃はさすがに市場を動揺させた。
これを受けて東京市場ではいわゆるリスク回避の動きを強め、株式市場は大幅安となり、国債は買い進まれた。外為市場では円高が進行し、中東ということから原油先物も跳ね上がった。
しかし、このあとの情勢をみると、どうも様相がおかしいというか、米国側からの反応がいまひとつ乏しかった。これは米国側が被害等を見極めていたとみられる。UAEからF35が飛び立ったとか、トランプ大統領が執務室で演説をするとの観測も流れてはいた。
しかし、米軍に動きが出た様子はなく、これはどうも戦争という状態に追い込まれているようにはみえない。どこかおかしいとの認識も出てきた。実は私も今回の状況はもう少し冷静にみる必要があると感じた。
いろいろと憶測含めたニュースも出ていたが、結果として市場が最も注目し、それによってある程度の状況を掴めたといえるのが、ニュースそのものではなく、当事者のツイートであった。
イランのザリフ外相はツイッターで、「我々は事態のエスカレートや戦争を求めてはいない。ただ侵略から自分たちを守るつもりだ」と投稿した。
さらにトランプ大統領も得意のツイッターで、イラク内の米軍基地内にミサイルが着弾したが、いまのところ特に大きなダメージはなく、問題はないとツイートしたのである。
イラン国営テレビは8日、同国がイラク国内の米関連施設に15発のミサイルを発射し、少なくとも80人の「米国のテロリスト」が死亡したと報じた。
仮にそれが本当であったとすれば、このようなツイートをトランプ大統領がするわけはない。このイラン国営テレビのニュースはいわゆる大本営発表ということになるのではなかろうか。
市場でもトランプ大統領とザリフ外相のツイートの内容から、今回の米軍基地へのミサイル攻撃については人的被害はなく、それぞれが自制していた状況が窺えたとの認識を強めたのではなかろうか。
そのため、8日の東京市場はリスク回避の動きから一転し、リスク回避の反動の動きとなった。それには上記のツイッターが大きな影響を与えていたことは確かではなかろうか。
メディアを通じずに当事者が直接、SNSで表明することには大きなリスクも伴うものではあるものの、今回のように何が起きているのか明らかでない場合には、この当事者の書き込みをみて、それに反応するようなことが今回だけでなく今後も起きてくることは十分にありうる。
しかし、その発言内容をどのように見極めるかというあらたな問題も生じる。メディアを通せば、たとえばフェイクニュースなどはある程度は排除できようが、そのようなフィルターがないと我々が直接その判断を下さなければいけなくなる。情報をどのように選択するのか。情報機器が発達すれば、情報は身近になるものの、選択をどうするのかが難しくなってくることも確かであろう。