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2Aからアマチュアリーグに格下げ 水面下で続いているMLBのマイナーリーグ完全掌握化と激しい生存競争

菊地慶剛スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師
MLBは10月からマイナーリーグの完全な管理・運営化に着手している(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

【MLBがアマチュア選手向け新リーグ設立を表明】

 MLBは現地時間の11月30日、来シーズンからアマチュア選手を対象にしたサマーリーグ立ち上げを発表した。

 新リーグの名称は「MLBドラフト・リーグ」。現時点で発表されているのは、このリーグがドラフト指名候補の若手有望選手のみを対象とし、オハイオ、ペンシルバニア、ウェストバージニア、ニュージャージーの4州を拠点に、各チームが68試合を戦うというものだ。

 来年のドラフトは、オールスター戦期間中の7月に実施されることになっていることからも、MLB関係者やファンが、ドラフト指名候補選手たちを1つのリーグでチェックできるようになるわけだ。

 現時点ですでに5チームの参加が決まっており、さらに6チームと交渉中で近日中に発表になる見通しだ。

 すでに参加が決まっている5チームは、以下の通りだ。

 ●マホニングバレー・スクラッパーズ

 ●ステート・カレッジ・スパイクス

 ●トレントン・サンダー

 ●ウェストバージニア・ブラックベアーズ

 ●ウィリアムスポート・クロスカッターズ

【伝統の2Aチームがアマチュアリーグに転落】

 この5チームに馴染みのある方は少ないだろうが、新リーグ立ち上げに合わせ、新しいチームが増設されたわけではない。これらはすべて2020年まで、MLB30チーム傘下のマイナーリーグ(以下MiLB)に属していたチームなのだ。

 つまり彼らはMLB傘下から外れて、アマチュアリーグに参加することになったというわけだ。

 特にトレントンは、1980年に設立され2020年まで2Aに所属していたチームで、これまでホワイトソックスを皮切りに、タイガース、レッドソックス、ヤンキースの傘下を経験してきた伝統あるチームだ。過去にはレッドソックス時代の大家友和投手やヤンキース時代の井川慶投手も在籍したことがある。

 このトレントンは、11月にヤンキースから一方的に傘下から外されることが発表され、行き場を失っていたチームだった。それが2Aからアマチュアリーグへの転落を受け入れ、今回の新リーグ傘下に至ったわけだ。

【着実に進行しているMLBのMiLB完全掌握化】

 実は今回トレントンを含めMiLBから新リーグに移行した5チームのみならず、MiLB全体が戦々恐々としている状態だというのをご存じだろうか。現在MLBによる完全掌握が着々と進行し、生存競争の中に身を置いているからだ。

 これまでMiLBはフロリダ州に本部を置き、MLBから独立した組織だった。これまでMLBとMiLBは契約の下、友好な関係を築いていたが、契約失効となる9月30日まで新たな契約に合意できないまま、両者の関係は自然解消されてしまったのだ。

 その経緯となったのが、チーム数削減問題だった。MLB側は現行の160チームから120チームの削減を求めMiLBと昨年から協議を続けていたのだが、両者の間で合意点を見出すことができず、契約失効日を迎えてしまった。

 MLBでは現在、機構内にMiLB運営担当責任者を任命し、直接MiLBを管理・運営しようと様々な施策を施している。

【現在も続いているMiLB内の生存競争】

 すでに昨年末から米メディアの間で、MLBが傘下チームの数を減らす方向で検討すると報じられていた。その対象はシーズン実施期間が3ヶ月の、いわゆるショートシーズンと呼ばれる2チームが対象だった。

 現在MLBが進めているのも、各チームに対し3A、2A、1Aハイ(上部)、1Aロー(下部)と4チームの絞り込みを求めている。その措置でヤンキースはすでに傘下4チームを発表し、トレントンが弾き出されてしまったというわけだ。

 現時点で傘下4チームすべてを発表しているのは、ヤンキースの他にメッツとマリナーズしかいない。他チームは現在も選定作業が続いており、これまでの傘下MiLBチームは激しい生き残り競争の中に置かれているわけだ。

【MLBから突き立てられた厳しいクリア条件】

 もちろん傘下チームとして生き残っていくのは、決して簡単なことではない。MLBからは各MiLBチームに対し、かなり厳しいクリア封建が通達されているからだ。

 例えば、クラブハウスの拡充を含めスタジアムを改修すること、遠征及びスケジュール規定の変更に伴う遠征バスを1台から2台に増やすこと、年俸額が少ない選手に対しクラブハウス・スタッフへのチップ支払いを免除すること等々、すべて各チームへの大幅な支出を強いられるものばかりだ。

 関係者に確認したところでは、1998年にチーム誕生以来ジャイアンツを始めアストロズ、ナショナルズ傘下の3Aチームだったフレズノ・グリズリーズは、3Aから1Aへの降格を要求されているという。

 またMLBは3Aも組織再編を検討しており、現在の2リーグ制から1リーグ制へ移行するとの噂も広がっているようだ。

 MLBは最終的に、選定された120チームとライセンス契約を結ぶ予定で、対象チームには12月上旬には通達が届くようだ。

 まだ傘下チームに入れていないチームは、もう少しの間不安の日々を過ごすことになりそうだ。

スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師

1993年から米国を拠点にライター活動を開始。95年の野茂投手のドジャース入りで本格的なスポーツ取材を始め、20年以上に渡り米国の4大プロスポーツをはじめ様々な競技のスポーツ取材を経験する。また取材を通じて多くの一流アスリートと交流しながらスポーツが持つ魅力、可能性を認識し、社会におけるスポーツが果たすべき役割を研究テーマにする。2017年から日本に拠点を移し取材活動を続ける傍ら、非常勤講師として近畿大学で教壇に立ち大学アスリートを対象にスポーツについて論じる。在米中は取材や個人旅行で全50州に足を運び、各地事情にも精通している。

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