日本在住の外国人に求められている会話能力や読み書き能力をさぐる(2020年公開版)
外国人が日本に住み生活すると、多かれ少なかれ日本語を主要言語とする日本人とのやり取りは必要となり、その際に日本語ができないとその外国人当人もやり取りをする相手も難儀することになる。日本人は日本に在住する外国人に対し、どの程度の日本語による会話や読み書きができるといいと思っているのだろうか。文化庁が2020年9月に発表した令和元年度版の「国語に関する世論調査」(※)の結果概要から確認する。
日本に在住する外国人に対し、どの程度の日本語による会話や読み書きができるといいと思うかについて尋ねた結果が次以降のグラフ。まずは会話、つまり口頭での対面のやり取りについて。
もっとも多い意見は「日常生活に困らない程度」で68.3%。日常生活がどの程度を指すのかは回答者の思惑次第なので判断が難しいが、ご近所さんとの挨拶やお店でのやり取り、職場での意思疎通といった感じだろうか。次いで「簡単な挨拶ができる程度」で13.1%。これは「日常生活に困らない程度」よりは覚える日本語は少なくて済むが、それこそ日常生活では困ることが起きるかもしれない。
一方「仕事や学校生活が円滑に行える程度」は何らかの仕事についていたり就学しているのなら欠かせないレベルだが、「日常生活に困らない程度」よりは多くの日本語を学ぶ必要がある。中には「日本語で会話ができなくてもよい」とする意見もあるが、あくまでも少数派。
他方、口頭での対面のやり取りではなく、読み書きについてはどうだろうか。
もっとも多い意見はこちらも「日常生活に困らない程度」で54.8%。「日常生活」の解釈は人それぞれなので、回答者が自分の都合のよいように大きくとらえてしまっているのかもしれない。読み方によっては第3位の「仕事や学校生活が円滑に行える程度」も含まれるからだ。
次いで「平仮名・片仮名の読み書きができる程度」が20.9%、「仕事や学校生活が円滑に行える程度」が10.4%で続く。一方少数派だが「日本語で読み書きができなくてもよい」とする意見も7.5%いる。鉛筆やボールペンなどで紙に直書きするのならともかく、インターネットを使って入力するのなら、翻訳機能などが充実しているので問題はないということだろうか。
会話にしても読み書きにしても、日本在住の外国人に求める日本語の能力は「日常生活に困らない程度」とする意見がもっとも多かった。この結果は、それができていない外国人とやり取りした経験がある人が多数いると見ることもできる。観光ならともかく在住となれば、本人はもちろん、周囲の人のためにも、意思疎通ができる程度の日本語は習得して欲しいものだが。
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※国語に関する世論調査
令和元年度版は16歳以上の男女に対して個別面接調査方式で行われたもので、調査の有効回答数は1994人。有効回答の属性別構成比は非公開。
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