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スタートアップから大企業まで、製品テストを目的に出店する「b8ta store」で見つけた製品とは

松村太郎ジャーナリスト/iU 専任教員
b8ta Store San Franciscoの店内(写真は全て筆者撮影)

サンフランシスコ、パロアルト、オースティン、シアトルなど、全米9都市におしゃれな店舗を展開する小売店「b8ta」。このお店が注目される理由は、その名の通り、店頭で製品のベータテストを行うことができる販売店だからです。

b8taでの製品の展示・販売は最低6ヶ月から。以前は製品の売上から手数料を徴収していましたが、現在は月額固定制で販売する仕組みになりました。小売店としては一風変わったビジネスモデルですが、そのワケは製品の販売が主目的ではないからです。

b8ta Storeで商品を販売しながら、メーカーは、店頭でのユーザーの反応や会話、デモの様子、質問、さらにはその製品を買わない理由に至るまで、詳細なフィードバックを得ることができます。これを元に、製品の改良やマーケティング施策の改善を行い、ヒット商品を作り上げていくのです。

b8ta創業者のフィリップ・ロウブ氏(右)、リテールパートナーシップ担当ジェネラルマネージャーのケビン・ウィルソン氏(左)。2人とも、任天堂の米国法人での経験がある。
b8ta創業者のフィリップ・ロウブ氏(右)、リテールパートナーシップ担当ジェネラルマネージャーのケビン・ウィルソン氏(左)。2人とも、任天堂の米国法人での経験がある。

創業者でCMOのフィリップ・ロウブ氏、リテールパートナーシップ担当ジェネラルマネージャーのケビン・ウィルソン氏へのインタビューでは、「b8ta Storeを通じて、ヒット商品が生まれることが喜び」と語っていました。

店頭での仕組み、詳細なフィードバックの手法、その意義については、東洋経済オンラインの記事で詳しく紹介しています。

「製品テストをできる店」は、なぜ人気なのか - 米国のイノベーションを支える小売店の正体

毎月製品が入れ替わるというb8ta Store。ちょうど取材した1月31日は、入れ替え日直前で、翌日2月1日には店舗の中で3製品がお目見えするとのことでした。そんな店頭で気になる製品を5つ、写真を交えてご紹介します。

「これ見たことある!」インスタ広告でおなじみの電動歯ブラシ

Quip
Quip

b8ta Storeで最もたくさんの製品を販売しているのは、テクノロジーとは無縁のおしゃれ電動歯ブラシ「Quip」です。確かに私も、この歯ブラシは見覚えがある、というよりはよく知っているデザイン。

サブスクリプション型で替えのブラシが届く仕組みも、Wi-FiやBluetoothも搭載されていないシンプルな電動歯ブラシという製品も、決して珍しくないのですが、Instagramへの積極的な広告出稿で、インスタユーザーなら何度も目にしたことがある商品です。

こうしたSNSでのキャンペーンを展開している製品は、多くがオンライン販売が中心であるため、実物に出会ったらつい購入してしまうのだそうです。

Quip

取材先でときどき見かける、お化けみたいな16眼カメラ

Light L16 Camera
Light L16 Camera

Light L16 Cameraは、一昔前のコンパクトデジカメのようなサイズですが、表面には1300万画素のカメラが16個埋まっている、カメラのお化けみたいな存在感です。

レンズは28mmと50mmがそれぞれ5個ずつ、そして150mmが6個搭載されており、有効画素数は5200万画素以上。背面にはタッチスクリーンが備わっており、プロセッサにはSnapdragon 820、OSにはAndroidと、カメラがいっぱいついたスマホみたいな存在です。

写真はもちろんズーム可能で、4Kビデオも撮影可能。しかも、写真を撮ってからフォーカスの位置を変えられるライトフィールド撮影にも対応しています。しかも、OSがAndroidですから、16個のカメラを駆使した新しい撮影機能も今後追加されるそうです。

Light L16 Camera

家のテレビを巨大スマホに変えてしまうデバイス

TouchJet Wave
TouchJet Wave

TouchJet Waveは、薄型テレビの上に取り付けるだけで、テレビの画面をタッチ操作できるようにするデバイスです。

スマホやタブレットに触れているこどもの行動を見ると、タッチ操作できなくても、薄型テレビにボタンのようなモノが現れたら指で触れて操作しようとしますよね。彼らは画面はタッチ操作できてしかるべき、と考えているようです。それを実現してしまおうというのが、TouchJet Waveのアイディア。

こちらも、簡単に言えば、画面を持たないAndroidスマホのようなもの。ディスプレイはテレビ、インターフェイスはコンピュータビジョンを駆使し、テレビの上にセンサーユニットを載せるだけでセットアップできてしまう簡単さがウリです。あとは普段使い慣れたAndroidアプリをインストールすればよいだけです。

対応する解像度がフルHDまでというのは、4Kテレビが手頃になった昨今からすると力不足だし、Android 4.4 Kitcutで動作するというのもちょっと将来性の面で不安ですね。(という私のフィードバックは、b8taのスタッフを通じて記録されているはずです)

TouchJet Wave

サングラスをかければ音楽が聞こえる

Zungle Panther
Zungle Panther

Zungle Pantherは2016年にKickstarterキャンペーンを成功させて製品化した、骨伝導スピーカー&マイクを内蔵したサングラスです。すでに製品化しても、やはりb8ta Storeでのテストを通じて、次の製品に向けての準備を行う、というわけですね。

この製品は、メガネやサングラスとヘッドフォンを同時に使ったことがある人なら、その価値がすぐに分かるはずです。メガネとヘッドフォンって、やはりどうしても干渉してしまいます。

もっと言うと、ケーブル付きのイヤホンすら邪魔なので、やはりAirPodsのような独立型ワイヤレスヘッドフォンは、メガネをかけている人にとって、より大きな購入理由をもたらしてくれていると思います。

Zungle Pantherは、サングラスに骨伝導スピーカーを内蔵しているので、かけるだけで音楽が聞こえる仕組み。なんとなく、Appleが将来ARグラスを出すとき、この方法を活用したいんじゃないか、と思わせるやり方ですね。

Zungle Panther

荷物をオーガナイズしやすい手荷物対応スーツケース

Genius Pack Aerial Hardside Carry On Spinner(左の製品)
Genius Pack Aerial Hardside Carry On Spinner(左の製品)

Genius Pack Aerial Hardside Carry On Spinnerは、機内に持ち込むことができるスーツケースですが、あらかじめ旅や出張に必要なモノを分類して収納するスペースが用意されているため、カバンがすでに旅行チェックリストになっている、というもの。

ちょうど、機内持ち込みサイズのスーツケースがラスベガスで壊れてしまったので、どうしようかな、と思っていたところでした。

Genius Pack Aerial Hardside Carry On Spinner

気になる製品はありましたか?現在b8ta Storeに展示・販売されている商品は、b8ta.comでも見ることができます。

ジャーナリスト/iU 専任教員

1980年東京生まれ。モバイル・ソーシャルを中心とした新しいメディアとライフスタイル・ワークスタイルの関係をテーマに取材・執筆を行う他、企業のアドバイザリーや企画を手がける。2020年よりiU 情報経営イノベーション専門職大学で、デザイン思考、ビジネスフレームワーク、ケーススタディ、クリエイティブの教鞭を執る。

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米国カリフォルニア州バークレー在住の松村太郎が、東京・米国西海岸の2つの視点から、テクノロジーやカルチャーの今とこれからを分かりやすく読み解きます。毎回のテーマは、モバイル、ソーシャルなどのテクノロジービジネス、日本と米国西海岸が関係するカルチャー、これらが多面的に関連するライフスタイルなど、双方の生活者の視点でご紹介します。テーマのリクエストも受け付けています。

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