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田中史朗は、日本代表・初のワールドカップ8強入りの瞬間に何を思ったか。【ラグビーあの日の一問一答】

向風見也ラグビーライター
大会を通じ背番号21をつけ、試合終盤に登場。(写真:青木紘二/アフロスポーツ)

 あの試合が再放送される。ラグビーワールドカップ日本大会で日本代表が初の8強入りを決めた10月13日の対スコットランド代表戦(神奈川・横浜国際総合競技場)が、4月11日の20時からラグビーワールドカップの公式 Facebook、YouTubeで放送される。

「台風がどうであれしっかりした準備をしようと話してきました。僕自身も準備をしてきた」

 試合直後のミックスゾーンでこう話したのは、スクラムハーフの田中史朗。この日は台風19号の影響で試合開催が危ぶまれていたが、「試合があってもなくても、常に試合ができるような準備はしてきました」という。

 試合は日本代表が前半からトライラッシュを披露し、後半2分までに28-7と大きくリード。田中が投入されたのは、28―14と追い上げられて迎えた後半10分。終盤は相手の大きな揺さぶりに防御をちぎられるなどしてさらに点差を詰められたが、試合終了間際の反撃を耐え抜く。

 攻守逆転後、じっくりとラックを連取。公式で67666人が叫ぶ。「5! 4! 3! 2! 1!」。ノーサイドのホーンが鳴る。

 田中は接点の後方に立つフルバック山中亮平へパス。山中がタッチの外に球を出し、28―21で予選プール4連勝を決めた。

「時計を見ながら、ゲームを締める。そう意識しました」

 身長166センチ、体重72キロの田中は当時34歳。2008年に日本代表デビューし、ワールドカップは今回が3度目。2013年には日本人で初のスーパーラグビー(南半球主体の国際リーグ)プレーヤーとなるなど、この国の楕円球界のパイオニアとして駆け抜けてきた。

 試合直後のミックスゾーンでは、試合中の心境や初の8強入りへの感慨を語っている。

 以下、共同取材時の一問一答の一部(編集箇所あり)。

――後半の苦しい時間帯に登場しました。

「前半にいい点差をつけ、リードしたんですけど、相手も底力があって盛り返してきた。ボールをキープすることは、意識しました。

(自身の役割は)試合をしっかり締めるということ。後半、危ないところもあったんですけど、最後の最後はチームでまとまってゲームを締められたのでよかったです。

 全員が努力して、踏ん張ったので、ああいう結果になった。本当に誇らしい。1人ひとりがラグビーを、自分の仕事を理解してやっている。しんどい練習中にやったことを試合で出せた。それが強さだと思います」

――後半、攻め込まれている時のチームはどんな状態でしたか。

「ちょっと疲れている感じはあったんですけど、(田村)優、(中村)亮土がしっかり声を出してチームとして努力をしようと。『半端ない努力』とは、ずっと(チーム内で)言ってきたので、踏ん張ろうと」

――2008年に日本代表デビューし、ワールドカップ出場3大会目で初の8強入りです。

「本当に嬉しいです。(スタンドに)入った瞬間は赤白のジャージィがスタンドを埋め尽くしていた。自分が思い描いていた絵が広がっていた。その皆さんの前で勝てたと言うことは、自分も、チームも、全てを誇りに思います」

――とはいっても、ノーサイドの瞬間は大喜びをする前に相手を讃えていたような。

「スコットランド代表も常にベストエイトに行くチームだったのに、敗退という形。まずは彼らに敬意を払いたいと思っていました。次の試合は彼らの気持ちも考えながらやらないといけない」

 かくして20日、優勝する南アフリカ代表との準々決勝(東京スタジアム)に挑むのだった。スコットランド代表戦時は、こう意気込んでいた。

「ワールドカップ前(に組まれた代表戦)には負けてしまっていますが、いい場面(チャンス)はあった。そこを獲りきれるようにすればいい試合ができる。しっかり相手を研究して、勝てるように全力でやりたいと思います」

ラグビーライター

1982年、富山県生まれ。成城大学文芸学部芸術学科卒。2006年に独立し、おもにラグビーのリポートやコラムを「ラグビーマガジン」「ラグビーリパブリック」「FRIDAY DIGITAL」などに寄稿。ラグビー技術本の構成やトークイベントの企画・司会もおこなう。著書に『ジャパンのために 日本ラグビー9人の肖像』(論創社)『サンウルブズの挑戦 スーパーラグビー――闘う狼たちの記録』(双葉社)。共著に『ラグビー・エクスプレス イングランド経由日本行き』(双葉社)など。

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