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北朝鮮「成人モノ映像」制作で公開裁判…韓国教会が動画入手

高英起デイリーNKジャパン編集長/ジャーナリスト
金正恩氏(朝鮮中央通信)

北朝鮮で、アダルトビデオを制作・販売した容疑で逮捕された人々が公開裁判にかけられ、その様子を収めた動画を韓国の教会が入手した。米政府系のボイス・オブ・アメリカ(VOA)が報じた。

北朝鮮の刑法は183条で「退廃的、色情的、醜雑な内容を反映した絵、写真、図書、録画物、電子媒体などを許可なく他国より輸入、制作、流布、保管した者は1年以下の労働鍛錬刑(懲役)に処する」と定めている。また、場合によっては銃殺されてしまうこともある。

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動画を入手したのは韓国のキリスト教団体・カレブ宣教会のキム・ソンウン牧師。同教会は2008年から、北朝鮮国内で密かに撮影された映像を買い取り、公開してきた。平壌や新義州(シニジュ)の内部映像などのスクープも少なくない。

VOAは、同教会が入手した動画の内容の一部を公開した。それによると、北朝鮮の司法関係者と思しき人物が、広場に集まった子どもを含む数十人の市民に向かって「性関係を持った後、数回に渡り撮影を行いました」などと被告の罪状を説明している。

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北朝鮮では、過去にも同様の出来事が起きている。

たとえば2008年6月、朝鮮人民軍(北朝鮮軍)459軍部隊で麻薬販売を担当し、金正日氏の秘密資金を管理する「中央党39号室」に外貨を上納していた幹部が、アダルトビデオを販売していた容疑で処刑されている。

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ここで気になるのは、いったい何を根拠に、「アダルトビデオ犯」が死刑にされているかだ。

北朝鮮の刑法で法定最高刑が「死刑」となっている罪は、「国家転覆陰謀罪」「テロ罪」「祖国反逆罪」「破壊・暗害罪」「民族反逆罪」「不法アヘン栽培・麻薬製造罪」「麻薬密輸・取引罪」「故意的重殺人罪」の8種類だ。

このほか、「国家財産の略取」「貨幣偽造」「貴金属・有色金属の密輸・密売」「食堂や旅館を運営しながら性奉仕を組織した場合」「故意の重傷害」「誘拐」「強姦」「個人財産の強盗」についても、犯行の悪質さにより「刑法付則」なる独特の規定で死刑が適用されることもある。

しかしこの中に、アダルトビデオの制作・頒布と関連するものは見当たらない。つまりは、こうした行為に対する死刑の執行はきわめて場当たり的に行われている可能性が高い。

これは、明らかな人権侵害である。

そして、北朝鮮当局がアダルトビデオの取り締まりを厳しく行っている一方で、取り締まりを行う側の権力者の性は乱れきっているのが実態なのだ。

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デイリーNKジャパン編集長/ジャーナリスト

北朝鮮情報専門サイト「デイリーNKジャパン」編集長。関西大学経済学部卒業。98年から99年まで中国吉林省延辺大学に留学し、北朝鮮難民「脱北者」の現状や、北朝鮮内部情報を発信するが、北朝鮮当局の逆鱗に触れ、二度の指名手配を受ける。雑誌、週刊誌への執筆、テレビやラジオのコメンテーターも務める。主な著作に『コチェビよ、脱北の河を渡れ―中朝国境滞在記―』(新潮社)『金正恩核を持つお坊ちゃまくん、その素顔』(宝島社)『北朝鮮ポップスの世界』(共著)(花伝社)など。YouTube「高英起チャンネル」でも独自情報を発信中。

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