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日銀によるイールドカーブコントロールの修正観測が強まり、急速な円安修正(円高)と債券安に

久保田博幸金融アナリスト
(写真:ロイター/アフロ)

 7月7日、私が配信している「牛さん熊さんの本日の債券(朝)」で、下記の書き込みをしていた。

熊「内田日銀副総裁の発言などを受け、ドル円は一時143円60銭近辺に」

熊「内田日銀副総裁は、当面はYCCを続けていくと強調していたようだが」

 これを書いたあとに、あれ、これは矛盾していないかと思ったのだが、外為市場ではどうやら「内田日銀副総裁の発言」を受けての円買いドル売りが入ったとの観測があった。

 これに対し日本経済新聞の記事をさらっと読んだ私は「内田日銀副総裁は、当面はYCCを続けていくと強調していた」ことに、やはりそうかとむしろ落胆していた。私が日本経済新聞の内田日銀副総裁のインタビュー記事を読んだ感想は、7月も現状維持かというものであった。

 ただし、それでは円高になっていたことと矛盾する。日銀が7月も何もしないのであれば、6日の米長期金利は大きく上昇していたこともあり、日米金利差拡大により、「円安ドル高」となるはずであった。

 7日の債券先物は下落し、円高もさらに進行しており、マーケットは何かに気が付いたかのような動きとなっていた。これにはどうやら一部のエコノミストなどのレポートも影響していたとも聞いた。

 日銀の内田副総裁のインタビュー記事は7月7日の0時ちょうどに報じられた。今回は共同通信も同様のインタビュー記事を出している。

 7月10日には日銀支店長会議を控え、現在の日銀の金融政策の方向性を決めるキーマンである内田副総裁が何かしらの意図のもとにこの記事を出したことは間違いない。

 日銀のトップは植田総裁だが、現在の妙な異次元の金融政策に大きく関わってきたのが内田氏であり、日銀プロパーでもある。このため現在の日本銀行の行内での影響力は大きいとみざるを得ない。

 内田副総裁はインタビュー記事で「YCCはうまく金融緩和を継続するという観点から続けていく」と発言していた。ただし、ここで注意すべきは「続けていく」とはしたが、修正については否定したものではなかった点である。

 もし修正の可能性を念頭に置いて今回のインタビュー記事を再確認すると違った印象となる。

 「イールドカーブがスムーズになっているのは事実。ただ、コントロールしている以上、市場機能に影響を与えていることは強く認識している」

 あたりまえのことを言っただけともみられるものの、あれだけイールドカーブコントロールに固執し続け、毎営業日連続の無制限の指値オペまで繰り出してきた当事者の発言であることを考えると「強く認識している」という言葉に違和感がある。

 「いかにうまく金融緩和を継続するかという観点からバランスをとって判断していきたい」

 いまの物価情勢を見る限り、普通の金融緩和に戻してから「いかにうまく金融緩和を継続するか」というべきであり、異次元緩和を継続させる必要性は全くない。

ただし、この発言は内田氏が「利上げ」としている「マイナス金利政策の解除」とは区別して、何かしらのバランスをとることを意識した発言とも受けとれるのである。

 今回の内田副総裁のインタビューは現状維持を示唆するものというよりも、イールドカーブコントロールの「修正」を意識させるものであった可能性がある。イールドカーブコントロールの修正・撤廃はどうしてもサプライズとならざるを得ない。このため、そのサプライズの度合いを多少なり緩和しておきたいということでもあったのかもしれない。

 個人的な見立てとしては、残念ながらイールドカーブコントロールの「撤廃」ではないが、長期金利のレンジをこれまでの±0.5%から、±0.75%もしくは±1.00%へ拡大させる可能性がある。小刻みに拡大するよりも、±1.00%に拡大してくる可能性のほうか高いかもしれない。ただし、これはあくまで私自身の見立てであり、必ず7月28日にイールドカーブコントロールの修正が入ると結論付けるものではない。

 一応、日銀の金融政策決定会合は委員会制度をとっており、多数決で決定される。もし決定されるとしても今回も全員一致となるのか(これはこれで妙ではあるが)。できればひとりぐらいはイールドカーブコントロールの撤廃を主張してくれても良いように思うのだが(期待を込めて)。

金融アナリスト

フリーの金融アナリスト。1996年に債券市場のホームページの草分けとなった「債券ディーリングルーム」を開設。幸田真音さんのベストセラー小説『日本国債』の登場人物のモデルともなった。日本国債や日銀の金融政策の動向分析などが専門。主な著書として「日本国債先物入門」パンローリング 、「債券の基本とカラクリがよーくわかる本」秀和システム、「債券と国債のしくみがわかる本」技術評論社など多数。

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