石油・石炭・天然ガス、日本の主要エネルギー源の輸入元を確認してみる
社会生活を支えるエネルギー源の中でも、昔から多用されてきたのが石炭、石油、ガスのような化石燃料。日本ではその多くを輸入に頼っている。その現状を電気事業連合会が公開している「原子力・エネルギー図面集」(一次データは「石油連盟統計資料」や「財務省貿易統計」)から確認していく。
まずは石油。かつては中近東における政治的不安定感が積み増しされ、それに伴う原油価格の高騰化が続いていた。またガザ地区の騒乱やIS問題など、新たな火種が生じており、不安定感はさらに高まるばかり。一方で昨今ではアメリカ合衆国におけるシェールガス・オイルの採掘量増加や、中国の景況感の問題などを受けて需給バランスが崩れ、いくぶん値は落ち着いているものの、安定感の観点ではむしろ不安定要素を積み増ししている。
一方で日本は石油(原油)に関して、その中東に大いに頼っている。直近データでは輸入石油の83.5%を中東地域から得ていることになる。
赤系統で着色したのが中東地域。リスク回避の観点とオイルショックなどの影響から、1987年度には日本の石油における中東依存度は68%程度にまで減少している。しかしその後再び増加に転じてしまう。これはいくつかの産油国が経済発展と共に自国内での石油消費量を増やし、石油輸入国に転じたことが要因。
続いて石炭。日本においてもエネルギー源として、石炭は再び注目を集めるようになっている。
6割強をオーストラリア、2割近くをインドネシア、1割未満をロシアから輸入している。なお中国は年々輸出量の減退・輸入量の増加傾向を見せている。今後採掘量に余裕がある、オーストラリア、インドネシア、ロシアの比重はさらに高まるだろう。実際、昨年度2012年度分と比較しても、中国からの輸入比率は1.4%から1.2%に減少している(例えば2008年度は7.9%だった)。
最後にLNG。Liquefied Natural Gas、つまり液化天然ガスの略で、天然ガスを運びやすく・貯蔵しやすくするため、凝縮して液化させたもの。
石炭や石油と比べ、バランスの取れた輸入国区分である。これは天然ガスそのものが環境負荷の少ないエネルギーであること、産出地域的な偏在が少ないことが原因。日本は世界最大のLNG輸入国となっており、2013年度実績では8687万トンもの輸入量が確認されている。今後も石油や石炭と比して「地球にやさしい」「地域リスクの小さい」エネルギーとして注目を集めることには間違いない。
日本は石油・石炭・LNGに限っても、多くの国に頼ってエネルギーを確保している。これらは実際に素材を運ぶ輸送手段の担当会社はもちろん、売り買いをまかなう商社や輸入元の開発業者、そして国レベルで多種多彩な交渉・駆け引きを行う人たちの、これまでの努力が蓄積されて得られた成果に他ならない。
電力やガソリンに「●×産」のような産地名が描かれているわけではない。それゆえに、自分達が普段何気なく利用しているエネルギーの取得元など、考えたこともない人が多い。しかしそれらはすべてこれまでの、そして今現在懸命に働いてきた・いる人たちの存在あってこそのものだと認識する必要がある。気まぐれや薄っぺらな虚栄心、独りよがりな主義主張で投げ捨ててはならない、日本全体の「蓄財」に他ならないのだから。
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