注目の金正恩委員長の仕事初めはいつ?経済視察か、軍部隊の視察か
今年も背広姿で現われ、新年辞を読み上げていた金正恩委員長だが、マイクの前に立ったのが必ずしも1月1日の元旦とは限らない。昨年同様に事前収録の可能性も考えられる。
元旦の午前0時に行われている恒例の錦繍山太陽宮殿参拝は報道されなかったところをみると、今年はなかったようだ。金委員長は最高指導者に就任して以来、毎年欠かさずに祖父(金日成主席)と父(金正日総書記)の遺体が安置されている太陽宮殿を参拝していた。
直近の3年間だけをみても、2015年は黄炳誓・軍総政治局長、玄永哲・人民武力相(この年の4月に処刑されている)、李永吉・軍総参謀長(2016年2月解任)ら軍指揮官だけを引き連れ、2016年は党幹部と軍指揮官らを伴い参拝していた。また、昨年の2017年は金永南・最高人民会議常任委員長、黄炳誓・軍総政治局長(11月失脚説が流れる)、朴奉柱・総理、崔龍海・国務副委員長ら4人の政治局常務委員を筆頭に党、軍幹部らがこぞって随行していた。それが今年は、不思議なことに「金委員長が参拝した」との報道がない。
朝鮮中央通信によると元旦は金永南最高人民会議常任委員長を筆頭に朴奉柱総理ら党と政府関係者らだけが参拝していた。その中には金正恩委員長の実妹の金与正・政治局員候補も含まれていた。金与正氏は二列目に整列していた。しかし、これまた不思議なことに昨年10月に開催された労働党第7期第2次全員会議で黄炳誓、朴奉柱両氏を抜き、NO.3に浮上した崔龍海政治局常務委員の姿はなかった。また、軍幹部らの集団参拝もなかった。これまた異例のことである。
軍幹部らの参拝は昨年12月から行われている冬季軍事訓練に追われているため見送られたのかは定かではない。しかし、元旦に軍司令官らの宮殿参拝が行われなかったのは極めて異例のことである。
このことと直接関係はないが、1月7日現在、新年辞の発表以外、金正恩委員長の仕事初めに関する報道がないのもこれまた異例である。
金委員長が最高指導者に就任した2012年から過去6年間の仕事初め(元旦の宮殿参拝を除く)をみると、以下のとおりである。
2012年1月2日 銀河水管弦楽団の新年音楽会の鑑賞
2013年1月1日 牡丹峰楽団の新年慶祝公演を鑑賞
2014年1月7日 人民軍が建設した水産物冷凍施設を視察
2015年1月1日 平壌育児園を視察
2016年1月5日 人民軍大連合部隊の砲射撃を視察
2017年1月5日 平壌カバン工場を視察
年初めの金委員長の活動が一週間経っても伝えられないのは今年が初めだが、順当ならば、一両日中にも何らかの動静発表があってしかるべきだ。
新年辞で経済に力を入れることを強調しているので、昨年同様に経済部門への視察が仕事初めになる可能性が高い。ただ、人民軍による軍事訓練が真っただ中にあることから軍部隊視察の可能性もゼロではない。
昨年末から今年元旦にかけてCNNやCBSなど米国のメディアはICBM「火星-15型」が発射された平安南道平城一帯で北朝鮮による新たなICBMの試験発射があると伝えているが、過去3年間を検証すると;
2015年は1月中のミサイル発射はなく、2月になって6日に日本海に面した江原道・元山から新型艦隊艦ミサイルを、27日に同じく日本海に面した咸鏡南道・新浦で潜水艦弾道ミサイル(SLBM)の水中実験を行っている。
2016年は1月6日に核実験、2月7日に黄海に面した平安北道の東倉里から人工衛星(光明星4号)と称して事実上の長距離弾道ミサイル(テポドン)を発射している。
2017年は2月12日に平安北道・亀城からSLBMを地上型に改良した「北極星2型」発射している。
金委員長が新年辞で「北と南は情勢を激化させることをこれ以上やるべきではない。軍事緊張を緩和し、平和的環境を作り出すため共同で努力しなければならない」と言っている以上、常識に考えれば、近々のミサイルは考えにくいが、それもこれも、9日の南北高官会談での北朝鮮側の対応で見えてくるだろう。