中国による日本国債の買入急増を過度に心配する必要はない
6日の日経新聞朝に「中国、日本国債買い急増 外貨準備の運用先シフト」とのタイトルの記事が掲載されていた。これはいったい何事かと思った人も多いかもしれない。
中国は大量の外貨準備を抱え、それはつまり主に大量のドルを抱えていることになる。そのドルは現金で持っているわけではない。ドル資産として利用されるのが米国債となる。このため、中国は長らく米国債保有国のトップとなっていた。しかし、2019年7月に中国に代わり、日本がトップとなった。
2019年といえば、米中の貿易戦争が激化した年でもあった。米国側を揺さぶるために米国債を売却したとの見方もなくはなかったが、保有する資産の分散化を計ったとの見方が正解かと思われる。
リスクを分散させるために、ドルベースの米国債投資の比重を落とし、他の国の国債の比重を増加させてきた。そのなかで、ドルを円に換えることで利回りが米国債以上となる日本国債にも白羽の矢が立ったというべきか。
7月の中国による日本国債の買越額は7239億円だったそうだが、確かにこれは国債価格の下支えになったかもしれない。しかし、現在、日本国債を大量に買い入れて下支えしているのは日銀であり、日本の債券市場にとり、今回の中国の買入の影響はそれほど大きいものではない。
これによる株式市場など他市場に与える影響も限定的であろう。ドル円には多少なり影響があったかもしれないが、それ以外の要因のほうがインパクトは強かったように思われる。このため、個人投資家に何らかの影響を与えることも考えづらい。海外投資家の日本国債の保有額がこれで急増するというのも考えづらく、日本国債の格付けへの影響などもなかろう。
今後の日本との対立を念頭に、何かあったら日本国債を暴落させるために中国は買ったのではないかとの穿った見方もあるかもしれない。このような見方はあくまで小説の中だけであり、いくら中国による日本国債の保有額が急増したからといって、買い越しは月に1兆円に満たない。ちなみに日本国債の残存額は1000兆円規模にものぼる(この金額を誇るわけでは決してないが)。
仮に数兆円規模の売りが出ると、一時的に国債価格が急落するかもしれないが、材料なき売りなどは長続きはしない。そもそも自分が保有している日本国債を、価格を急落させるために売るなど、運用という意味では、自分の首を絞めかねない行為となってしまう。